エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

新鮮な意識

2014-09-10 10:13:56 | アイデンティティの根源

 

 経験をまとめる≪私≫は、意識の中心ではなく、意識の端っこにある。

 p344の第2パラグラフ。

 

 

 

 

 

 しかし、私どもはここで、非常に重要な課題に直面することになります。それはフロイトのもともとの概念を理解するのに非常に大事なんですね。フロイト自身が理論をこしらえ始めた初期に、Ich≪私≫という言葉を使ったのでしたが、それは、意識の表層的な現象でありつつ、大部分は経験を無意識裡に秩序付けるものでした。それがそうならば、この文脈から言えば、エゴと言うよりも≪私≫と言ったほうが良い、と示唆していることに関して、その決定責任を取るのを拒否する翻訳者たちを非難できるものなど、1人もおりません。しかし、フロイト自身が、意識的な「≪私≫が生きている実感」の重要性を狭めるどんな権利が自分にはあるのか?という疑問を声に出してあげています。「初めは、意識している基準の価値をひどく引き下げがちです。意識は当てにならないからです」と。フロイトは主張し、認めます。「でもね、意識を不当に扱うべきではありません。私どもの人生について言えることかもしれませんが、意識は価値があまり高いとは言えないけれども、意識は,私どもが持つすべてなのです。意識が光を当てなければ、深層心理の闇の中で迷子になることでしょう。私どもがしなくちゃならないのは、自分の状況認識を新鮮にすることです」と。

 

 

 

 

 意識は、無意識の「発見」以来、当てにならないものとされることが多い。しかし、私がハッキリと自覚的に手にしているのは、「意識」だけ。この「意識」を何時でも新鮮にしていくことが、状況や権力によって振り回されないためには、どうしても必要なことなんですね。

      ≪私≫が生きている実感がありますと,必ず,驚きと感激を日々体感しながら,生きることになりますから。

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関根正雄先生

2014-09-10 06:01:35 | エリクソンの発達臨床心理

                    真理を知っている者は、常に上を仰ぎ見る。

 

 関根正雄。そう言って、分かる人はどれくらいいるのでしょうか?

 クリスチャンでも、神学に関心のない人には、もしかしたら、あまり知られていないのかもしれませんね。それでも、岩波書店から、文庫版で、『創世記』、『出エジプト記』、『サムエル記』、『詩編』などが出ていますから、いずれかを「読みました」と言う方もおられるやも分かりませんね。

 私も最初はそんな書籍で、関根正雄先生を知るばかりでした。野村實先生同様、内村鑑三最後の弟子のお一人。時々、今井館聖書講堂での講演会などで、客席に座る関根先生をお見かけしたことはあったのですが。その業績からすると、どんな巨人かと思うのですが、実際は、とても背が低い方ですね。

 その関根正雄先生も今からちょうど十二年前、2002年9月9日、亡くなられました。東京女子大学のチャペルで9月12日13日に、前夜式と告別式がそれぞれ執り行われました。昨晩(9月9日)本棚を整理していたら、その会葬礼状が出てきました。偶然じゃぁ、ない感じがしたので、このブログを書くことにしたんですね。

 私は、「無教会新宿集会」の会員ではなかったのですが、この集会の会員でした依田直哉さんとは、夏の山中湖聖書講習会で、5~6年ご一緒でしたから、「無教会新宿集会」の「神学研究会」に依田さんの紹介で入会を許されました。この「神学研究会」は開会のお祈りの後、レポーターが報告し、それを受けて、参加者が話し合いの場をもち、最後に関根先生がコメントする、という形でした。そして、関根先生がお祈りして閉会。関根先生は、日本を代表する旧約学者です。しかし、真理に忠実だからでしょう。偉そうなそぶりは微塵もない、と言うのが印象でしたね。私のような若造(30代)の意見にも、熱心に耳を傾けてくださるのが、ハッキリわかりました。本物のクリスチャン、すなわち、真理に対してあくまでも謙遜な人に接するときだけに感じることができる、あの爽やかさ、あの大らかさを、そして、何よりも謙遜な態度を、関根正雄先生にも、私は強く感じたものですね。

 最近関係のある、日本の大学の教員には、1人の例外を除いて、それを全く感じないものですから、ここに一筆したためました。

            そして、空と一体になる。白い雲が出ても良し、黒い雲が出ても良し。

 

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