03.05.24 紫 陽 花 NO.3029
紫陽花の花になんの罪もないけれど、大嫌いだった。
蒸し暑い梅雨の時期、夜中に首筋に虫が這っていると気付いて目をさますと、それは
虫ではなくて流れ出る汗でした。 限りなく紫陽花の花に音を立てて降り注ぐ雨、
そうなるとまた眠れない。 悶々として寝返りをうち、やっと明け方になってまど
ろむ頃に、決まって夢に出てくるのは、父親が出征した日の光景だった。
石炭箱の上に乗っかって「お国のために尽くします」みたいなことを言ってた。
その時オレ6歳。 近所の女たちが、手に手に日の丸の旗を持って見送った。
オイ女 お前らだ! お前らが俺の父を殺したんだ!
あの時なんで戦争反対!と言わなかったんだ。 徴兵反対のスクラムを組んで、国民
を無益な戦争に狩りださなかったら、俺だって、こんなに貧乏にならなくてよかった
んだ! あの時に戻れるものならば、大声を出してそう叫びたい。
梅雨の時期、紫陽花が咲くと苦い思いがやってくる。