マルタのやさしい刺繍(スイス映画)から、地域社会と老人問題のよき解決を教わる
BSジャパンで、5月11日にスイス映画、「マルタのやさしい刺繍」というのが放映をされ、たまたま情報に気がついて録画しておきました。主人公マルタは70を越す老女です。それに日本では有名なひとでもない。だから、どうして、BSジャパンがこの映画を今、放映するのかが疑問でしたが、終わってみると、映画そのものは大変な秀作で、教えられることが多くて、なるほど、と、疑問が解けました。
この文章はそれを知らないまま、書きましたが、実は、日本映画『おくりびと』と同じく、アカデミー外国部語門賞を2006年度にとって、スイスでは、その年度第一位の観客動員数だった映画だそうです。
老人問題、現代の恋愛やら、不倫の問題。伝統と、近代化の問題。二世代、または、三世代同居の問題。老人ホームのあり方。等々について、テーマ設定をして、だんだんと解決策を示していく映画です。
人間は年をとると、病気になったり死ぬということ。地域社会の連帯と、その忌まわしい側面。映画の中には、次から次へと、課題が提示され、それらが、終盤に向かって、好ましい(と、思われる)終焉へ向かって解決をしていきます。
その最終場面で、ドラマチックな展開を見せるのが、合唱祭です。スイス沿面タール地方が舞台ですが、合唱祭が、なんと、野原で開かれるのです。高原で、なだらかな山というか、丘に囲まれた、美しい野原で、合唱祭が開かれ、聞いている人たちは、設置されたテーブルで、一種のピクニックをかねた飲食をしながら、発表を聞いていきます。
合唱コンクールとか、合唱祭(文化祭)は、日本でも活発に行われているはずです。横須賀市とか、藤沢市は市の人口や広さが適宜なのか、大変活発です。鎌倉は比較すると静かで、コンクールはなくて(?)発表会だけだと思いますが、長谷コーラスという団体は、全国制覇したこともあるほどレベルが高いと、聞いています。
スイスでも日本でも、これが、地域住民間の親睦を高めるよい習慣と、なっていることを知りました。ただ、大きな違いは、ひとつの団の人数(規模)の違いです。日本では、ほとんどの団体が、30人以上で運営され、必ず市の文化会館を使って発表が行われます。いわゆる箱物です。日本全国、どこの町にも、収容人数、1000人以上という、文化会館があって、そこで、この主の催しが行われます。葉山はまだ、市制を敷いていないと思いますが、それでも、立派な文化会館があるのは、知っています。
日本のほうが、スイスの伝統をまねしたのかどうかは知りませんが、スイスでは、箱物ではなくて、野原でそれが、開かれるのは、自然破壊とかを、起こさず、したがって過剰な税金も取られず、それゆえに、そこにたかって(?)お金をもうける人もおらず、規模として、大変人情味がある運営をされていることを知りました。
日本だと、合唱団の団員はバスや電車を使って練習場へと集合すると思いますが、この映画ないでは歩いて、集まれる(ひとつの村単位)の規模である模様です。
この間、カンブリア宮殿という、番組にグリーの社長さんが登場して、今の若者が、ゲームをインターネット上で未知の人同士でもやり、それと、同時進行的にチャットというのをやり、それで、コミュニケーションをとっていて、その際のツールとしてのゲーム等をコンテンツということを私はしりました。が、合唱(団)も有力なコミュニケーションツールなのです。ただし、老人が参加している割合が多い模様です。現役の若い人はよほどの音楽好きでないと参加していません。特に若い男性の参加は少ないです。
この映画内で登場する町(または、村)は、スイスの首都ベルンへ、バスで、三十分から一時間のところにあるという設定でしょう。美しい自然(低い山)に囲まれた谷間にあり、300人から、500人程度の住人がいるという設定です。
だけど、老人ホームが存在するので、近代化もそこから入ってきていて、インターネットで商品を売ることが、大きなモチーフともなっています。主人公マルタは夫を亡くしたばかりで、生きがいをなくしています。でも、ちょっとした瞬間に昔とった裁縫という杵柄を思い出し、下着ショップを開くことを思いつきます。その下着(ランジェリー)というのが忌まわしいものと見なされ、周囲から、なかなかの反発を、招き、ちっとも商品が売れません。
そこへ、老人ホームへ入居している社長夫人(同じく未亡人だが、教会を通じて、主人公と知り合っている)という都会人が、老人ホーム内のパソコン教室で、先生と協力して、インターネットの知識を得て、マルタを助けます。
ところで、こんなしみじみとした文芸映画なのに、ちゃんと、悪役も設定されており、そちら関係のエピソードも充実していて、思いがけずもはらはらします。展開が単純ではないのです。もし、レンタルDVDが手に入ったら、ご覧になるのをお勧めします。特に、60歳以上の人には共感やら、指針を仰げるはずの映画です。
たとえば、子供世代から、施設(特別養護・老人ホームとか、病院)へ入ることを願われたときにどう対応するのがよいのか? とか、子供世代との価値観の違いから、自分の生きがい(たとえば、マルタの下着ショップ)を奪われたときにどうしたら、よいのか、などが、含まれています。
日本とスイスの状況がだいぶ違うから、すべてが移入できるわけでもないが、考え方の上で、なるほど、そうなのか? と、教えられる点は多かったです。普遍的な問題に触れたよい映画でした。
さて、この文章を書いた後で、偶然、であった未知の人二人から「その映画は銀座のシネスイッチで、公開時に見ている」といわれました。おどろきました。では。2010年6月23日 これを書く
送るのは、28日、 雨宮舜
BSジャパンで、5月11日にスイス映画、「マルタのやさしい刺繍」というのが放映をされ、たまたま情報に気がついて録画しておきました。主人公マルタは70を越す老女です。それに日本では有名なひとでもない。だから、どうして、BSジャパンがこの映画を今、放映するのかが疑問でしたが、終わってみると、映画そのものは大変な秀作で、教えられることが多くて、なるほど、と、疑問が解けました。
この文章はそれを知らないまま、書きましたが、実は、日本映画『おくりびと』と同じく、アカデミー外国部語門賞を2006年度にとって、スイスでは、その年度第一位の観客動員数だった映画だそうです。
老人問題、現代の恋愛やら、不倫の問題。伝統と、近代化の問題。二世代、または、三世代同居の問題。老人ホームのあり方。等々について、テーマ設定をして、だんだんと解決策を示していく映画です。
人間は年をとると、病気になったり死ぬということ。地域社会の連帯と、その忌まわしい側面。映画の中には、次から次へと、課題が提示され、それらが、終盤に向かって、好ましい(と、思われる)終焉へ向かって解決をしていきます。
その最終場面で、ドラマチックな展開を見せるのが、合唱祭です。スイス沿面タール地方が舞台ですが、合唱祭が、なんと、野原で開かれるのです。高原で、なだらかな山というか、丘に囲まれた、美しい野原で、合唱祭が開かれ、聞いている人たちは、設置されたテーブルで、一種のピクニックをかねた飲食をしながら、発表を聞いていきます。
合唱コンクールとか、合唱祭(文化祭)は、日本でも活発に行われているはずです。横須賀市とか、藤沢市は市の人口や広さが適宜なのか、大変活発です。鎌倉は比較すると静かで、コンクールはなくて(?)発表会だけだと思いますが、長谷コーラスという団体は、全国制覇したこともあるほどレベルが高いと、聞いています。
スイスでも日本でも、これが、地域住民間の親睦を高めるよい習慣と、なっていることを知りました。ただ、大きな違いは、ひとつの団の人数(規模)の違いです。日本では、ほとんどの団体が、30人以上で運営され、必ず市の文化会館を使って発表が行われます。いわゆる箱物です。日本全国、どこの町にも、収容人数、1000人以上という、文化会館があって、そこで、この主の催しが行われます。葉山はまだ、市制を敷いていないと思いますが、それでも、立派な文化会館があるのは、知っています。
日本のほうが、スイスの伝統をまねしたのかどうかは知りませんが、スイスでは、箱物ではなくて、野原でそれが、開かれるのは、自然破壊とかを、起こさず、したがって過剰な税金も取られず、それゆえに、そこにたかって(?)お金をもうける人もおらず、規模として、大変人情味がある運営をされていることを知りました。
日本だと、合唱団の団員はバスや電車を使って練習場へと集合すると思いますが、この映画ないでは歩いて、集まれる(ひとつの村単位)の規模である模様です。
この間、カンブリア宮殿という、番組にグリーの社長さんが登場して、今の若者が、ゲームをインターネット上で未知の人同士でもやり、それと、同時進行的にチャットというのをやり、それで、コミュニケーションをとっていて、その際のツールとしてのゲーム等をコンテンツということを私はしりました。が、合唱(団)も有力なコミュニケーションツールなのです。ただし、老人が参加している割合が多い模様です。現役の若い人はよほどの音楽好きでないと参加していません。特に若い男性の参加は少ないです。
この映画内で登場する町(または、村)は、スイスの首都ベルンへ、バスで、三十分から一時間のところにあるという設定でしょう。美しい自然(低い山)に囲まれた谷間にあり、300人から、500人程度の住人がいるという設定です。
だけど、老人ホームが存在するので、近代化もそこから入ってきていて、インターネットで商品を売ることが、大きなモチーフともなっています。主人公マルタは夫を亡くしたばかりで、生きがいをなくしています。でも、ちょっとした瞬間に昔とった裁縫という杵柄を思い出し、下着ショップを開くことを思いつきます。その下着(ランジェリー)というのが忌まわしいものと見なされ、周囲から、なかなかの反発を、招き、ちっとも商品が売れません。
そこへ、老人ホームへ入居している社長夫人(同じく未亡人だが、教会を通じて、主人公と知り合っている)という都会人が、老人ホーム内のパソコン教室で、先生と協力して、インターネットの知識を得て、マルタを助けます。
ところで、こんなしみじみとした文芸映画なのに、ちゃんと、悪役も設定されており、そちら関係のエピソードも充実していて、思いがけずもはらはらします。展開が単純ではないのです。もし、レンタルDVDが手に入ったら、ご覧になるのをお勧めします。特に、60歳以上の人には共感やら、指針を仰げるはずの映画です。
たとえば、子供世代から、施設(特別養護・老人ホームとか、病院)へ入ることを願われたときにどう対応するのがよいのか? とか、子供世代との価値観の違いから、自分の生きがい(たとえば、マルタの下着ショップ)を奪われたときにどうしたら、よいのか、などが、含まれています。
日本とスイスの状況がだいぶ違うから、すべてが移入できるわけでもないが、考え方の上で、なるほど、そうなのか? と、教えられる点は多かったです。普遍的な問題に触れたよい映画でした。
さて、この文章を書いた後で、偶然、であった未知の人二人から「その映画は銀座のシネスイッチで、公開時に見ている」といわれました。おどろきました。では。2010年6月23日 これを書く
送るのは、28日、 雨宮舜