おはようございます
昨夜、後輩とその子供たちを引率して虫取りに行ってきました。カブトムシやクワガタがかなりとれたので、子供たちは満足してくれました。
他に欲しいと言っていた方々に配る予定で(一部は配布済み)、今も小分けをしておいております。
子供のころは生物学(昆虫などの生態学)を学びたかったので、半分は僕の趣味ですが。
今日は少し気になる記事がありましたので、紹介します。
<東京女子医大病院>薬16倍投与、女性死亡…14年
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160724-00000006-mai-soci
毎日新聞 7月24日(日)7時30分配信
東京女子医科大病院(東京都新宿区)で2014年、脳腫瘍の女性が添付文書に書かれた量の16倍の抗てんかん薬を投与され、その後に重い副作用を起こし死亡していたことが分かった。病院の依頼で調査した第三者機関は、薬の投与を「標準的な医療と言えない」と指摘したが、病院側は「患者側の希望を考慮して決めた」と過失を否定。遺族は「副作用の説明は全くなかった」と反論している。
◇病院側は過失を否定
同病院では、この約半年前にも原則禁止の鎮静剤投与で幼児が死亡する事故が起き、特定機能病院の承認取り消しにつながった。院内で医薬品の不適正使用が問題化していた中で、用法・用量を逸脱した処方が行われていたことになる。
亡くなったのは、川崎市の長浜裕美さん(当時43歳)。14年7月に同病院で脳腫瘍の再発の疑いと診断され、手術のための入院前の8月、けいれん発作を起こして錠剤の抗てんかん薬「ラミクタール」(一般名ラモトリギン)を処方された。その結果、全身の皮膚に障害が起こる中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)を発症し、投与開始約3週間後に肺出血などを併発して死亡した。
ラミクタールの添付文書では、別の薬も飲んでいた今回のようなケースの投与量を「2週目まで25ミリグラムを1日おき」(1日当たり12.5ミリグラム)と定め、用法・用量を超えた投与は皮膚障害が出やすくなると注意している。しかし、医療関連死の調査モデル事業としてこの件を調べた「日本医療安全調査機構」の報告書によると、担当医は16倍に当たる1日200ミリグラムを連日投与。院外薬局から量が正しいのか照会があったが、見直さなかった。
報告書はラミクタールによるTEN発症が死因とした上で、今回の処方を「最良の選択肢とは言い難く、あえて選択するなら必要性やリスクを本人や家族に十分に説明して同意を得るのが望ましい」と指摘した。
病院側は「患者が手術前に趣味のサンバ大会への参加を望んだため、確実な効果を期待した。リスクは話している」と主張し、代理人を通して遺族に「法的非難を受ける理由はない」との見解を伝えた。
これに対し、遺族側代理人の安東宏三弁護士は「副作用の説明はなく、あれば処方を受けなかった」と訴える。報告書はこの点の結論を出していない。同大広報室は毎日新聞の取材に「弁護士で折衝中の事案で、コメントは控える」と回答した。【桐野耕一、伊藤直孝】
◇禁止鎮静剤投与事故
2014年2月、東京女子医大病院で人工呼吸中の小児には投与してはいけない「禁忌」とされている鎮静剤「プロポフォール」を大量に投与された2歳男児が、副作用とみられる症状で死亡した。安全管理体制の不備を重く見た厚生労働省は15年6月、高度医療の提供により診療報酬が優遇される特定機能病院の承認を取り消した。
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ラミクタール添付文書http://www.jshp.or.jp/cont/15/0115-2-2.pdf
まず、亡くなられた患者さんに対してお悔やみを申し上げます。
この記事の内容だけで判断するのであれば、おそらくバルプロ酸か何かに加えてラミクタールを投与した。病院側は皮膚障害の可能性も話しているが、きちんと患者さんサイドに伝わっていなかったというものだと思われます。
勝手な推測ですが、サンバの大会が近かったために「確実な効果を」と言われて、最初から「高容量」で開始したということなのでしょうか?
重症薬疹であるTENなどは起こりやすい薬剤が知られていますので、それぞれの分野ではそういった薬剤は注意して使用していると思います(僕は薬疹がある場合、口腔内や眼の粘膜は必ず見ます)。血液内科分野ではモガムリズマブ(ポテリジオ)など。
ただ、すべての薬剤で起こりえます。ちなみに、世界で一件しか報告がなかったのに当院ではある抗癌剤でTENがありました。1コース目で(汗
もちろん、何とかなりましたが、Key drugが使えなくなったので、その後もすったもんだしていたような気がします。
僕も過去にいろいろ言われたことが一度だけありますが、その際はすべてカルテに記載が残っていたことと、他の家族が聞いていて納得してくださっていたことが幸いし、何もありませんでした。僕が「精神的な苦痛」を感じただけでおわりました(これだけ時間をかけて説明して、医者がベストだと思う方法(緩和的な医療)を患者本人と他の家族が納得しているのに長男がはじめてやってきてその方針を否定される。治療方針を何が何でも治療するという方向に変えられた上(俺が本人を説得すると言って、出ていきました)に、それがうまくいかなかったら(ちなみにその時に治療をしたらこうなりますと説明して、すべてその通りになった:カルテに記載済み)長男にカルテ保存+αされるという)
ですので、こういう普通とは異なることを行う場合には、本当に時間をかけて説明して、きちんとご理解していただいたうえで、きちんとそれもカルテに記載しておく必要があると思います。
今回16倍の投与を行ったことすべてが間違っているとは思いません(基本的には間違いでしょうが)。もし、きちんと説明をして、その理解を患者本人や説明を聞いた人が受け入れたのであれば。例えばTENの発症率はラミクタールは0.5%(添付文書より)だが、容量を増やすとリスクが10%くらいまで上がること(ちなみに0.5%は高いです)を説明したうえで、添付文書通りにやっていたら維持量まで行くのに1か月以上かかるので、サンバの大会に間に合わないかもしれない。
→何とかしてほしい
リスクはありますが初期から投与量を増やして対応していきましょうか?
となれば、女子医大が説明している通りなのだろうと思います。しかし、そのカルテ記載がなければ根拠がないため「結果がすべて」になってしまいます。
通常と違うことを説明する、もしくは診断内容の説明など「じっくり」時間をかけて行う場合、今の医師数で足りるのだろうか・・・と思います。
僕は今週、時間がかかりそうな方を外来日以外に説明をしました。だいたい1人につき1時間かかっています。この説明があるので、僕の患者さんはだいたい入院したり何かをする前に、納得していただいています(後輩からは僕の説明内容は教科書を読むみたいでわかりやすいと言われます。ちなみに患者さんがよんでも、看護師さんがよんでもわかるようにというのが基本的なスタンスです。最近忙しすぎて箇条書きになっていますが)。
外来日には新規の患者さんが6名来ました。うち2名には1時間ずつ時間を使っています(そうするとかなり遅れる)。2名に30分くらいでしょうか。そんな感じで最終的にはカルテ記載もしゃべっている内容に比較して薄くなってしまいます。
(外来が終わり、ブースから出たのは6時半・・・汗)
ですので、いったか言っていないかという話だと、同じ医師としては「言ったのかもしれないけど、忙しくて記録に残してないとかあるのだろうな」と思ったりします。ただ、家族としては印象に残っていなければ「言われた記憶はない」になりますし、そうすると最終的には記録がなければ医療従事者側が負けです。
特に今回は他の医師が診ても「通常ではないこと」をしている以上、必ずそれがわかるように記載しておく必要がありますので、そのカルテ記載がなければ女子医大の主張は通らないのではないかと思います。
その一方で、一生懸命医療をして「通常ではないこと」を分かって、患者さんのためにベストを尽くしたいと医療をやっている様な医師であれば(わかっていなくて適当にやっている医師ならば、むしろここら辺で前線からは引く方がよいかもしれません)、精神的なダメージは大きく「立ち去りがたサボタージュ」を作る要因になると思います。
僕はそういう理由から「しばらくは医師不足は続く」と思っています。充足している感じないですもの(笑
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。