こんばんは
今日は土曜日の仕事の代休です。朝から教科書を書いたり、走ったりしております。
今書いているのは医学生向けなのですが、1ページに1項目を基本として作成しています。過去に書いたものを見直したらこんなことものが出てきました。
さて、MDSの治療の基本ですが、第一に知っておくべきことがあります。それは完治させる方法が「同種移植」しか現在は存在しないことです。薬で簡単に治る、副作用はほとんどなく延命可能であれば治療はあまり困りません。完治させるには「致死率」が高い危険を伴う治療しかないこと。それがMDS治療の難しさでもあり、やりがいでもあります。
高リスクMDSであり、同種移植が可能であれば、移植を検討するはずですから治療選択肢は困りません。同種移植(完治)ができない高齢者に多い疾患ということもそういう意味では難しいところです。
完治できないのであれば治療を開始するかどうか・・・ということも検討材料になります。症状がなく、本人が困っていないのに副作用の強い治療を行えば、病気を見て患者さんを診ていないということになります。高リスクMDSであれば普通は血球減少がある(症状もある)はずですが、低リスクMDSと診断したものの好中球は1000/µl以上あり、貧血の症状もなく、血小板も8万/µlくらいあるので出血リスクも低い。ここで何らかの治療を開始して、患者さんに副作用が出たら信頼関係を失うことになるかもしれません。患者さんの症状はどうか、予後はどうか、それを含めて標準治療はどうなるのかを示しながら、患者さんと治療をどう行なっていくか決定すること(個々の患者さんに合わせる)が重要です。
このページは概念的なもので、国家試験には出ません(おそらく)。ただ、臨床医としての考え方の基本的なものだと思っています。
自分で言うのも何ですが、こう言う話を学生のころは聞いたことはなかったです。経過観察も選択肢に入ることは教科書にも書いていますが、軽症のうちに治療したらリスクが少なく治る病気であれば治療しますものね。
考えてみたら当たり前だけど、さっさと治療をしないのか・・・。他のがんであれば症状が出る前に治療するのが当たり前ですから(もう少しすると前立腺癌とかは変わるかもしれませんが)、こういうことを教えるのは血液内科でなくてはと思います。
医者をしていて「患者さんを診ている」と思うのは、全ての知識を動員して統計学的なことだけではなく、患者さんに合わせた治療を行うために、患者さんや家族と協議している時だと思います。あとは患者さんが困っている時に話を聞く、何か予測と違う変化があれば対応する(予測通りならば、予定通り実行する)と言うレベルです。大きな方針を決定する場所でいかにきちんと話し合うかは医師としてのやりがいでもあり、患者さんや家族との信頼関係を構築するためにも重要です。
僕はやはり医師が全てを決めるのではなく、患者さんや家族と治療方針を決める場が重要だと思っています。医師は今の時点で最も良いと思う治療、多くは標準治療を提示します。その理由も説明しますし、他の選択肢も簡単には言いますが、ある程度はベストと思われる選択肢を選べるようにします。
しかし、きちんと話をしていたら「患者さん、もしくは家族が難色を示している」ことがわかる時もあります。受診頻度のこともありますし、お金のこともあります。治療の副作用に対する不安であることもあります。話せばそれを解決することができる時もありますし、標準治療以外の方法、もしくは近くの病院への紹介などという方法もあるかもしれません。
話し合いましょうという姿勢は患者さんや家族にもわかると思います。そうすれば色々なことを患者さんや家族が話をしてくれます。それがなくては実は患者さんに対する対応が医者もできません。知識があっても、その知識を役立たせる情報を引き出すためには患者さんと話さないといけないからです(他の診療科でも診ている患者さんがそちらの主治医が怖くて相談できず、僕に相談することもよくありました・・・。で、僕が処方(対応)して、向こうの治療に関連する症状であれば僕からそちらの医師にさりげなく連絡など)。
そういうことを学生さんに少しでも知ってほしい・・・という1ページになっております。伝わるかはわかりませんが(笑
医学生が手に取ってくれるほんになれば良いなぁと思います。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。