こんばんは
少し昔に書いて記事を蒸し返します。
という記事を書きました。
「脳梗塞と疑い適切な処置をしたか…、専門外であっても重要な病気を見逃してはいけないということになるのでしょうか。
少し気になるのは恐らく「脳梗塞かもしれない」という触れ込みできた患者さんに、その時点では発作ではないと考えたのであれば一過性脳虚血発作(TIA)のような一過性のものだったのかもしれません。診察時に所見がない。画像検査でも疑えないなど。
たぶん、15日という期間を考えるとTIA→脳梗塞の方が理解しやすいのですけどね。
患者さんの家族が半身まひになった状態で半月放っておいたのであれば、「確かにこの時点で脳梗塞だったのだろう」と思いますが、そうでなかったのならこの病院もかわいそうですよね。逆に訴えが「TIAの可能性を考慮し、専門機関への受診を指示しなかった」というのであれば、訴えに関しては納得。僕が担当医だったら、すいませんとしか言いようがない。
しかし、15日という期間を考えると、「おかしい。あの時点では麻痺はなかった」としか言えないのですよね。
個人的にはTIAが少しでも疑われた患者さんは、翌日専門家に紹介してますけどね。訴えられたくはないですし、万一の可能性を排除するには翌日に再診するのが症状もわかりやすくなっているかもしれないし(当日呼ぶこともありますよ。可能性が高いという判断なら)」
こんなことを書いていたのですが、たまたま本日自宅に届いた「日経メディカル Cadetto」の中にこの病院の先生が書かれていた記事がありました。
僕が必要だと思ったことはすべてやっているみたいなんですよね。
記事の内容は直接読んでいただくしかないのですが、おおむね以下のようなもの。
1、「慰謝料400万円と弁護士費用40万円に対して控訴するか否か」→納得は行かなかったが和解金と判決の金額がほぼ同額であったので控訴しなかった。
2、診断や治療に問題があったとは考えていないし、脳梗塞との因果関係も考えていなかった(地元医師会による第3者委員会、保険会社も同様の見解)。
3、民事訴訟によって担当医も病院全体も強いストレス(これが1の選択につながった)
4、「これで有責とされると当直できない」「過失を問われないようにするには徹底的に検査せざるを得なくなる」という医療サイトの反響、医療への影響を考えると控訴してもよかったかも
5、判決文では顔の片側が垂れ下がっていて、脱力があったとされている→しかし、救急搬送記録にも、患者や家族からの申告もなかった
6、救急外来当日、および翌日の診療では異常が認められなかったが、2週間後に脳梗塞を発症した。
7、原告側は心源性のTIAによるもので、それを見逃さなければ脳梗塞とならなかった→救急外来で診療した当直医はTIAを鑑別するための問診を行っている。さらに翌日循環器内科医が頭部MRI、MRA(血管の走行をMRIで検査すると思ってください)、拡散強調画像など様々な検査を行ったが、脳梗塞はもちろん不整脈・心房細動を疑わせる所見もなかった。
8、手のしびれだけでTIAと診断するのは難しい(その通りだと思います)。しかも患者さんに頸椎症の既往がある。
9、非専門医にとって日進月歩の昨今の医学に十分対応できるわけではない。
10、一部有責とした判決を「敗訴」として報道したことは「委縮医療」を助長する
11、裁判を通して担当医は話し合いなどで時間を取られたこともこたえたようですが、それ以上に「正当な診療をしたけれども結果が付いてこなかった」ことがうまく伝わらなかったことがつらかったようである
こんな内容でした。
僕もこの内容を知ると必要なことをしていると思いますし、これで訴訟になってしまったこと。そして一部有責とはいえ、そのような結論になったこと。また、報道が敗訴として報道したことは今後の医療を委縮させる可能性がある思います。
そういう意味で今後はもっと報道の仕方を考えてほしいと思いますし、センセーショナルなことを書くのではなく、正確なことを書いてほしい。また、適当な記載が未来に与える影響を考えてほしいものです
今後に向けてより良いシステムを作り出せればよいと思っています。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。