未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




R・アドラー氏死去 テレビ・リモコン共同開発者
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/life/CO2007021701000242.html

 ロバート・アドラー氏(テレビのリモコンの共同開発者)AP通信によると、15日、米アイダホ州の医療施設で心不全のため死去、93歳。41年、米家電メーカー、ゼニス・エレクトロニクスの研究部門に入り、56年に開発された超音波を使うリモコン「ゼニス・スペース・コマンド」で中心的な役割を果たした。リモコンは人間を怠惰にすると指摘され、「罪の意識を感じないのか」と質問されることもあった。

「リモコンは人間を怠惰にするか?」

SF小説のタイトルのようだ。

答えは、もちろんノーだ。

人類が食料の調達を、ジャングルを彷徨って果実を捜したり、狩を行ったりなどの不安定な手段に頼っていた時代に、もっと安定した生活を求めて、農耕や牧畜を発明したことにより、文明が誕生し、人類の繁栄が始まったと言えよう。

過去にも『水道』『蒸気機関』『電気』など、我々の生活を楽にする数々の発明がなされ、その恩恵は『リモコン』の比ではない。基本的には、人類が楽をしようと創意工夫すること=文明の発達とも言えるのではないであろうか。

正直に言って、アドラー氏がいなかったとしても、他の誰かが必ず、リモコンを開発していたはずだ。
それだけ、リモコンは人類の文明に取って、もはや必要不可欠のものであるとも言えよう。

「リモコンは人類を怠惰にしてきたか?」

いや、むしろ技術の発達に伴って、人類の営みはより一層、複雑で繁忙なものとなっている気がする。


「それでは私に、56年に制定された『リモコンによる怠惰化防止条例』の撤廃に協力しろと言うのかね?」
「ええ。これだけ技術の発展した世の中にあって、リモコンのみが禁止されている現状をどうお考えですか?」
「おかげて、人々が真っ当な生活を送れていると思っているよ。」
「しかし、実際には『機器本体、または機器より2m以内の壁面に固定して使用しない場合には、法律により罰せられます。』などの警告が書かれているだけのコントローラを、リモコンとして使用していない人などいないのが、現状ではないでしょうか?」
「法律というタガがあるからこそ、その程度で済んでいるのさ。君の会社はたしか、携帯電話の開発を計画していると聞いているのだがね。」
「ええ。本日お願いに上がったのは、そこなんです。撤廃とまでは申しません。携帯電話を遠隔地から機器を操作する機能を禁止し、通話機能に限定することによって、条例の対象外とする修正法案に、ご賛同頂きたいのです。」
「君は、道を歩いている時や電車の中などで、電話をしたいと思うかね?」
「医療関係者など、緊急の連絡を必要とする人々にとって、とても重要なアイテムになるとは、思いませんか?」
「そういった技術は、すぐに民間に広がり、一般人民が日常的に使用するようになるものなのだよ。」
「それはそれで、結構なことだと思いますが。」
「君には、想像力と言うものがないのかね?そんなことになれば、私が重要な法案を検討している時でも、仲間と一杯やっている時でも、やれ『牛乳がなくなったから買ってきてくれ』だの『今日も遅いの?』『晩御飯は食べるの?』『だったら、帰りにクリーニングを取ってきてくれない?』だの、それこそ『リモコン』代わりに使用され、心が休まる時がなくなるだろう。」
「なんだかすごく、個人的な理由で、法案に反対されていませんか?」
「そんなことはないよ。車の運転や飛行機の操縦をリモコンで行えるようになれば、戦争ですら、リモコンで行われるようになるとは思わないのかね?」
「人命が失われる危険が減るので、良いことではないのですか?」
「それはあくまで、攻撃する側の言い分だろう。人命という多大なリスクが減る分、安易に戦争を開始するようになる。悲惨な思いをするのは、いつも弱い立場の者なんだよ。」
「そういったことを回避するためには、『リモコンに反対』などの消極的な手段ではなく、未来を担う子供達に健全な『心』を与えることこそを、真剣に考慮するべきではないでしょうか?」
「だからこそだよ。あげくの果てには、子供たちでさえ、野球をしたり、ボーリングをしたりする代わりに、『テレビに向かってリモコンで遊ぶ』ような世の中になってしまいかねないだろう。」
「それは、いくらなんでも、考えすぎですよ。」


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