◆「WHITE WIND」 1992年
750×300cm
ポリエステル・ラメ糸
写真:横田 潔
1997年10月25日発行のART&CRAFT FORUM 9号に掲載した記事を改めて下記します。
布
布
織物を始めてから、ずーっと“布”にこだわって仕事をして来ています。
“布”は私の作品で大切な要素となっております。“布”はイメージを表現するための言葉であり“織”はイメージを表現する為の手段と(布) 捉えています。
風・音・空気それから感じる“気”の緊張感。体中から沸き上がるような感情。ふと心をよぎるような一瞬の感覚を“布”に表現してもらっています。
“今、自分がここに在る”から始まる
閉じ込められた空間(ギャラリー等)に在って“布”は作者である“私”の意志に従って横たわり、壁を這い上がり、影と化したり……。
自然の中においては風を孕み、美しい踊りを踊って見せてくれます。
風という偶然の力を借りることで期待した以上の緊張感を作り出してくれました。この場合、“布”に求める事は“布”と“風”との会話。“布”に自由に話をさせてあげる事。それをキャッチしてあげるのが作者の仕事と認識しています。
これからも“布”と、語り合いながら新たな空間を表現して行きたいと思っています。1998年4月に、写真と布の二人展を、予定しています。その中で“映像”と“布”そして “舞踏”というエネルギーを、一つの空間に置いてみる。お互いの経験と感覚が重なり合い、新しく一つの作品を造り上げていく、という実験的な試みを考えております。どのようなものが生まれるのか、楽しみです。
◆「ONE DAY」 1992年
230×300cm
麻/石
写真:横田 潔
◆「-布-」 1991年
200×240cm
木綿
気紛れな布達
この数年“気まぐれな布達”と題して布を織っています。
この作業はとっても楽しい。大らかな気分で、思いつくことをいろいろと試してみる。経糸と緯糸の関係も、諸々の関係も、無視。太い糸や細い糸、布も、ウールも、麻や絹。思いつくものいろいろ交ぜ込みます。
取り澄ました布よりも、凸凹していたり厚い所や薄い所がある布。ねじれたり、大きな穴が空いている布の方が、可愛いくて、楽しくておもしろい。そんな布を色々イメージします。スケッチに添って糸や素材に多少、手を加えてあげる事で、取り澄ました布が、見事に豊かな表情を見せてくれます。強撚糸、フェルト、絞り、等々。これらの作業は時間と労力が必要ですが出来上がる布を考えると、欠かせない事なので、ガマン。
この大らかな気持ちと、多少のガマンで出来上がった布は間々、最初のイメージから掛け離れた物体となることがあります。
“気紛れな布達”なので仕方がない。と、これまた大らかな気持ちで、次の作品に取り掛かります。
この“気紛れな布達”は、私の大切なスケッチブックです。
◆「気紛れな布達」 1996年
70×230cm
絹
写真:塩野谷 みちる