ART&CRAFT forum

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国際フェルト会議’94に参加して  /田中美沙子・櫻本洋子・塚田久美

2013-11-04 16:36:55 | TEXTILE FORUM
1994年5月16日発行のTEXTILE FORUM NO.25に掲載した記事を改めて下記します。

 1994年4月8~10日にイギリスのグロスターで、国際フェルト協会(IFA)主催の会議が創立10周年を記念して開かれました。フェルト作家の交流が盛んになっている今日、ハンドフェルトの技術表現の理解とその発展が目的で設立されたこの協会は、世界で200人の会員を持ち機関紙を発行し、紙面を通じて材料と技法の情報を提供しています。
 日本からは昨年まで、フェルトコースで学んでいた、桜本さん、塚田さんと私の学生時代からの友人4人が参加しました。あまり会議の情報もなく参加した私たちでしたが驚いたことに、当日会場で京都の礒辺さんと北海道の石田さんとお会いすることができました。
 会場のある、ハートプリーカレッジはロンドン・バディントン駅からインターシティーで2時間半のグロスターから、さらに車で約30分の丘陵地帯にありました。ここはイングランドの中央部に位置するコッツウォルドの一部にあたります。コッツは羊の囲い、ウォルドは高原という意味を持ちコッツウォルド種(イギリスの純血種:非常に古い長毛種でロムニーと似ている)という良質の羊の産地です。
 6日の早朝、私たちは目的地に向かって出発しました。列車で途中の街スインドンで下車してレンタカーによる楽しい旅の始まりです。 ドライバーは塚田さん、ナビゲーターは地図を片手の桜本さんでバイブリーのコートホテルヘ向かいました。途中のサイレンセスターは教会を中心に創られた石造りの落ち着いた街です。ここで昼食、買い物、サイレンセスターパリッシュ教会の見学をしました。
ここは羊の取引が盛んだった街とのことですが、現在はその当時の古い家屋がショップとして使われていました。
 私たちはどこまでも続く羊の丘と青い空を満喫しながら日没前、バイブリーのコートホテルに着きました。ここは1633年の領主の館で外見は苔むし古びていますがビクトリア時代様式でまとめられ、暖かく重厚な室内は旅の疲れを癒してくれました。館の中を流れる川に群がる鳥や、館を取り巻く村の石造りの家々の煙突から立ちのぼる煙りの情景は、まさにおとぎの国そのものでした。はちみつ色の家並と表現していた旅行雑誌に納得していました。
 8日の朝コッツウオルド地帯を北上してグロスターのハートプリーカレッジに到着しました。会場と宿泊に使われたハートプリーカレッジは、AD760年以前に建てられた荘園領主の館でした。 しかし、この広大な土地に建てられた館は18世紀の終りまで一般には公開されなかったのですが、現在は農科大学となっています。
 レセプションは夜8時から参加者約100人で始まりました。参加者の年齢の幅は広く多くの女性に交じり男性の姿も見ることができました。私がことさらに興味を引いたのは、フェルトで作られたベストや帽子やアクセサリーなどをさりげなく身に付けている参加者の姿でした。この様子は風土から生まれた素材への愛着と歴史そのものではないでしょうか。我々日本人が持つ木綿や絹へのこだわりの感覚と同じなのだと思いました。食堂は交流の場でもありました。名刺の交換や作品の写真を見せたり、衣類の説明などで大変にぎやかで、特に年配者のフェルトのお洒落が上手でした。この会議とは直接関係はないのですが、年配の参加者の生き生きした姿は、後日のロンドンのビクトリア アルバート美術館での年配者達が、受付やショツプで働いている姿と重なり合い感慨深いものがありました。開会宣言のあとワインを片手に展示されている15名の作家の作品を鑑賞しました。作品の多くはウォールハンギングの形態で厚いものと薄いものに分けられ、繊細で色彩豊かな表現がされていました。形態は様々でした。素材はメリノを中心に絹布や他の繊維、そして木の葉など自然素材が効果的に使われミシンによるステッチが施されていました。展示会場は意外に狭いため立体の作品がみられなかったことが多少残念でした。ワークショップの講師は、イングランド、アイルランド、スコットランド、アメリカ、デンマーク、ドイツ、オーストリアから構成され、中止のコースもありましたが6コースで始まりました。
 また同時に講義として、ジャネット・レッドシャムの「ASPECT OF MY WORK」、ステファンブーンの「MONGOLIA」、レニー・ゴールドスミスの「ALTERD FORMS AND SURFACES 」、ジャネット・アプレトンの「INSPIRATION IN GERMANY」、エリザベス・ウエスタイナーの「MYTHOLOGICAL INPLICATIONS OF FIBER AND TEXTILES」などがありましたがワークショップと同時に行なわれたためすべてを受講できなかったことは残念でした。

ワークショップ 
フラットな作品の多い中で、イングランドのジャネット・アプレトン(JEANETTE APPRETON)の半立体の作品は面の積層と画面の切断による空間の作り方が魅力的でした。ブルーでまとめられた画面は薄手の布がコンバインされテクスチャー、色彩の対比を強調した美しい作品でした。
 彼女のワークショップは「フェルトデザインのための水彩絵の具:WATERCOLOR FOR DESIGN」で次の日、私はこのワークショップを受講することにしました。彼女のスケッチブックは沢山の水彩やコラージュなどのドローイングで一杯でした。内容は抽象、具象を問わない自由な表現で溢れるようでした。ワトソン紙に描かれたドローイングと、それをフェルトで表現した作品が対称的に隣り合わせで展示されています。紙のなかの絵もフェルトの作品もそれぞれが完璧に自立した作品なのです。
 私は次のような質問をしてみました。「絵として十分完成されているのに何故フェルトに置き換えるのですか?」彼女は次のように答えてくれました。「もちろん紙の上での表現は大好きです。でも素材も大好きですし、もっと積極的に触覚感を作品の中に入れていきたいのです。だから羊毛を軸に布をコンバインさせたり多重の効果で表現しているのです。」語学に大いに不安はあったのですが、彼女の表現に対しての実直さと素材に対する深い興味を知ることができました。
 ドイツのカタリーナ・トーマス(KATHERINA THOMAS)の『キルギス・ラグの作り方:KIRGHIZ RUG 』のワークショップはスライドによる講義と実物による説明でした。ラグの制作は残念なことに中止になっていました。キルギス・ラグはカザフ地方で作られているフェルトの敷物です。カラーフェルトを模様にして作ります。その作り方はネガ、ポジの関係で模様をカットして、それを羊やラクダの毛を強撚糸にして縫い合わせます。そしてさらにステッチでベースのフェルトと縫い合わせるのです。模様は単純で力強くどこか日本のアイヌの模様と似ているように思えました。
 アメリカのレーニー・ゴールドスミス(LAYNE GOLDSUMITH)は『変化させた形態と表面の変質:ALTERD SURFACES 』のテーマでした。羊毛、紙などを使い表面の変質と変容を日常私達がよく使う道具や材料で表現する方法を見せてくれました。例えば電気コテで焦がす、穴を開ける、樹脂や糊で固める、しわを作るなどでした。
 デンマークのレニー・ニールセン(LENE NIELSEN)の「動物の毛:FUR FROM ANIMALS」はフェルトのベースにウエンズリーディール(WENSLEYDALE)種の毛を接合させて、ボリュウム感や毛の方向の作り方、巻き込んでローリング出来ないときなどのサンダーによる振動での縮絨や薄いフェルト同志の接合の方法など興味を引きました。
 以上がワークショップの紹介ですが10日にはマーケットで作品や書籍、材料などの売買も行なわれ楽しい交流ができました。今回の会議とワークショップは2日間という短い期間でしたが内容は充実していていました。特に講師達と直接触れ合いながらのワークショップ、スライドレクチャー、作品鑑賞など意義深いものでした。
(田中 美沙子)

今回の渡英に誘っていただいた時、よく考えもせずにお返事をしてしまい、後になって学生の頃から英語が大の苦手であったことを思い出し、どうやってフェルト会議を乗りきるか、とても心配でした。
 会場では、やはり日本人は目立つようで、沢山の人達に話しかけられたのですが、何分辞書を片手にほとんど感をたよりの会話なので、どこまで通じていたことかという具合でした。 しかし皆さんが、とても明るく陽気な方々でしたので疎外感を感じることもなく、とても暖かく受け入れていただきました。
 会場での展覧会やレクチャーでとても意外だったのは、ラフな作品やダイナミックなものがなくて全体的に、とても繊細であったこと、材料は英国羊毛を使用せずに、ほとんどのものが染色されたメリノタイプを用いていることでした。これは作品の傾向と深く結びついているのですが、立体作品がなくて絵の具のかわりに羊毛を使っているような絵画的でシンプルなものが主流であるからです。この点が日本でフェルトをやっている私達との大きな違いの一つでした。この事を含めて今後について考える課題を数多く与えられた旅行でした。特に、もう少し英語が話せるようにならなくては、と痛感致しました。
(櫻本 洋子)

コッツウォルズ丘陵地帯は、イギリスの田舎で最も美しい場所と言われ、車でB道路を走ると、これでもかという程の広大な牧草地の至る所で羊たちに出会うことができた。そして、ライムストーン(石灰岩)を積み上げたハニーカラーの家並みにとても心が安らいだ。そのコッツウォールズの東に位置するグロスター市外に、フェルト会議の行なわれたカレッジ・ハートプリーハウスがある。
100名程の各国のフェルトワーカー達が一同に会し、レクチャー、作品展が行なわれた。この会議はどちらかと言えばクラフト指向のフェルトワークが多く、それは作品展からもうかがえた。私自身の作品を何人かに見てもらったが、あまりいい評価が得られず残念だった。造形的な作品との違いはあったにせよ、フラットな面に抽象画を描くような感じの画面の構成は、とても繊細で丁寧で技術も高いと感じた。羊を多く産した国々のフェルト文化に歴史と伝統を感じざるを得なかったし、クラフトの分野でのフェルトの位置付けと質の高さは現在の日本には考えられないものがあったと思う。
 私の貧しい英語力では一方通行の解釈しかできず、聴きたいこと伝えたいことが不十分に終ってしまった不甲斐なさも大きかった。
(塚田 久美)


不思議の色糸ワークショップ作品展

2012-12-01 08:32:20 | TEXTILE FORUM

Kiharaworkshop3img ◆'98 ワークショップ作品展


19931025日発行のTEXTILE FORUM NO.23に掲載した記事を改めて下記します。


93 木原よしみ不思議の色糸ワークショップ   参加者募集


 イギリス在住の木原よしみさんが晩秋の日本で多色編み込みの技法を公開すると共に発想や創作についての情報提供と指導をする“不思畿の色糸”も本年で四回目を迎えることになりました。


 この間、大変多くの意欲的な受講生が集い、パート(1)、パート(2)そしてパート(3)へと年を重ねるごとに個性的な作品を制作する人々が育ってまいりました。本年度は初心者を対象にしたパート(1)と昨年迄にパート(1)を受講した方を対象に上級コース「WORKSHOPEXHIBIT10N」を開催いたします。会場の関係上、限られた人数しか参加できませんが是非ご参加ください。


ワーシショップ-コース案内-

★パート(1)一初級コース-

☆期日: 19931214日(火)午前10時~午後4時(5時間)

☆定員: 20名    

☆受講料:¥17,000.

☆会場:当研究所

☆受講内容:自分で考え 自分自身の作品造りを目指す事を主旨とします。

100枚のスライドを写しながら 私の作品造りを通して得た経験と過程を具体的に解説/デザイン習作/私の作品に使用している多色編み込み技法についてその考え方を説明/実習

☆持ち物:色鉛筆、筆記用具、メモ用紙、グラフ用紙、残り糸数色(並太程度)、棒針、鈎針、お気に入りの小物一点。


★『ワークショプ+作品展』 -上級コース-

☆期日:ワークショップ……19931213日(月)  午前10時~午後4

        作品展……19931215日(水)~19日(日)

☆定員:12名(現在若干名募集中)

☆受講料:20,000.(ワークショップ受講料及び作品展費用)

☆会場:当研究所ギャラリー

☆参加資格:※昨年迄パート(I)を受講した人。

      ※編み技法による創作作品を出品可能でワークショップを受講する人。

☆その他:※展示日:1212日(日)出品者自身による展示

     ※出品作品点数は1~2点に限定します。

     ※作品展費用はDM葉書代程度で会場使用料は負担していただきません。

     ※ワークショップは展示会場で講評、指導いたします。

★申込方法

先着順に決定させていただきますので、申込用紙に必要事項をご記人の上、下記宛先までお申し込みください。

★申込先

 東京テキスタイル研究所

 〒156東京都世田谷区松原2-18-1   TEL 03-33232001


不思議の色糸 ワークショップ作品展 


★第四回作品展:

☆会期:19931215日(水)~19日(日)

☆会場:東京テキスタイル・フォーラム

☆参加者:

桜林紀佳子、石橋みな美、斉藤和子、三森晶子、山科圭子、松岡るみ、塚田久美、手塚のぶ子、早川桂子、他


★第五回作品展:


 「主体的に編み物に取り組みたい、、」こんな意識をベースにした交流の場所作りを目指して“ワークショップ不思議の色糸”は始まりました。
 1994年、第2回『ワークショップ十作品展』は 5年目を迎えたワークショップ不思議の色糸”に相応しく色味の濃い充実した共通体験を得ることが出来たと思います。
ついに! 念願の“関東と関西の交流”が実現しましたし、『作品展』という形をとる事で具体性が高まり 私達に 幅広く 考える機会 を与えてくれました。
 今回は 東京と京都に会場を設けた結果、「解説書付きで作品を送らなければ、」、
 「人の作品を展示しなければ、」個々の責任内に留まらない全体的な作品展の任務まで課されて責任重大! それにしても『展示』は実に難しく、実に面白いですね。 同感?
 更に! 作品展とそれに関する運営へのメンバー達の積極的な参加は 特に印象深いものでした。 まず、関西のメンバーによる自主的な行動で始まり、波紋は次第に広がっています。
この作品集も 勉強と経験の為に出来る限り自分でやってみたいという皆様からの要望と積極的な協力体制による“合作”に落ち着いたのは 予想外の嬉しい出来事でした。
 「作品を通してその人を知るような気がするのですが、、」こんな声を聞きます。それならば この作品集は第2回『ワークショップ十作品展』における自己紹介の記録と言えそうですね。
 ファイバー・アート、工芸、手芸、、様々な創作目的を持った経験者と初心者が共存して “編み物”を共通語に集まったこのグループはユニークな存在であり、交流の輪が広がっていくよう願っています。

 実現に向けて 惜しみ無い暖かさで見守り御支援を頂いた 東京テキスタイル研究所、ギャラリー無有、そして世話役を務めて頂いた石橋みな美さん、中村恵美さん、中村千鶴さん、山村紀久子さん始め御助力を頂いた皆様に 心からお礼を申し上げます。

Jan.1995 木原よしみ

☆東京展会期:1994128日(木)~11日(日)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム


☆京都展会期:19941216日(金)~18日(日)(関西出品者作品展)

       19941220日(火)~22日(木)(関東出品者作品展)

☆京都展会場:ギャラリー 無有

☆参加者:

桜林紀佳子、斉藤和子、山科圭子、麻田美恵子、木村玲子、手塚のぶ子、船山 薫、柴田雅子、長谷川敬子、卜部房江、松岡るみ、石橋みな美、沖井喜美枝、中村千鶴、中村恵美、金原保子、村松道子、山川道子、佐伯和美、山村紀久子、中村志保、中井好美、熊谷紀代子、上野美子、田川眞理子、伊東徹子、他



 

★第六回作品展:


☆東京展会期:1995127日(木)~9日(土)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム


☆京都展会期:19951214日(木)~16日(土)

☆京都展会場:堺町画廊

☆参加者:

桜林紀佳子、木村玲子、手塚のぶ子、卜部房江、高松紀子、石橋みな美、中村千鶴、中村恵美、佐伯和美、山村紀久子、中村志保、中井好美、上野美子、田川眞理子、伊東徹子、竹中美智代、他


 

★第七回作品展:



☆東京展会期:19961112日(火)~16日(土)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム


☆京都展会期:19961122日(金)~24日(日)

       19961129日(金)~121日(日)

☆京都展会場:ギャラリー 無有

☆参加者:

麻田美恵子、伊東徹子、佐伯和美、桜林紀佳子、高松紀子、田川眞理子、手塚のぶ子、中井好美、長谷川敬子、村松道子、奄美、上野美子、卜部房江、沖井喜美枝、木原香織、木村玲子、中村恵美、中村千鶴、林利子、三宅晶子、八尾静香





★第八回作品展:

☆京都展会期:1997117日(金)~9日(日)

☆京都展会場:堺町画廊


☆東京展会期:19971119日(水)~22日(土)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム

☆参加者:

麻田美恵子、奄美、卜部房江、沖井喜美枝、小松原麻子、木村玲子、桜林紀佳子、榊 恭子、高松紀子、手塚のぶ子、長谷川敬子、三木博美、緑川純恵、八尾静香、山科圭子、上野美子、伊東徹子、川本正子、佐伯和美、田川眞理子、中井好美、中村恵美、中村千鶴、村松道子、南田千鶴子、松岡容子


★第九回作品展:

 

☆京都展会期:19981112日(木)~14日(土)

☆京都展会場:堺町画廊


☆東京展会期:19981122日(日)~25日(水)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム

☆参加者:

麻田美恵子、奄美、卜部房江、沖井喜美枝、木村玲子、桜林紀佳子、高橋比登美、高松紀子、手塚のぶ子、長谷川敬子、三木博美、緑川純恵、三宅晶子、八尾静香、吉川陽子、上野美子、伊東徹子、菊池理子、佐伯和美、田川眞理子、中村恵美、中村千鶴、南田千鶴子、





★第十回作品展:

☆東京展会期:1999119日(火)~12日(金)

☆東京展会場:東京テキスタイル・フォーラム


☆京都展会期:19991116日(火)~21日(日)

☆京都展会場:堺町画廊

☆参加者:

麻田美恵子、奄美、伊東徹子、卜部房江、沖井喜美枝、菊池理子、木村玲子、佐伯和美、桜林紀佳子、高松紀子、田川眞理子、中村恵美、中村千鶴、長谷川敬子、三木博美、村松道子、吉川陽子、


移動する遊体 -ゲルとフェルトを中心に-

2012-11-01 10:02:49 | TEXTILE FORUM

Img ◆デザイン:久谷政樹

1991920日発行のTEXTILE FORUM NO.17に掲載した記事を改めて下記します。


【趣旨】

 世界の構図を大きく書き換えるきっかけとなった湾岸戦争は、アングロ・サクソン対アラブの闘いとも、あるいは遊牧民対定住民の闘いとも言われました。いずれにしても、遊牧の長い歴史を歩んできた人々が今、世界の桧舞台に踊り出ようとしていることは確かです。それとともに「遊牧」という文化概念が普遍性を得て、定住型文化の領域に進出してくるという推測も、あながち否定しさることができない予感もあります、事実、高度に管理された日本的都市生活を送る私たちのなかで、遊牧の民へ向けてのある種の幻想と憧が生れつつあるようです。このような雰囲気の中で、文化としての「遊牧」を日本の都市において体験し、考えてみようというのがこのプロジェクトの目的です。

 

 遊牧文化を象徴するものに、移動式住居である「ゲル」(中国語では「パオ」)と、羊毛があります。まず、ゲル(パオ)について。今、私たちがゲルをつくることの意味は、その実作体験を通して遊牧民野住習慣の在り方を知ろうと試みることであり、またそれを「定住型」住習慣と交錯させることによって、「住む」という営みをグローバルな視点から捉え直すことにもつながっていくでしょう。


 そもそもゲルの空間形態は円形を基本としています。ゲルの中に入ると、私たちが馴染んでいる四角い空間とは違って、視線は向かいの壁にぶつかるのではなく壁に沿って移動していきます。ここに潜在的な動態の空間構造が感取され、渦巻きやマンダラの始源的空間であることが理解されます。


 次に、羊毛について。羊毛と言えばセーターやウール製の洋服がすぐに連想されますが、フェルト加工されたものの利用範囲の広さについては必ずしも充分に認識されているとはいえません。歴史的には、中央アジアで発明され、遊牧民の間では紀元前から、衣料や敷物などに使われてきました。ゲルを覆う幕がフェルト製であることは言うまでもありません。日本では、遣唐使によってもたらされた正倉院御物の花氈が現存する最古のものです。以後、茶道や華道で用いられる緋毛氈などは私たちに馴染み深いものです。現代では、帽子や上履き、筆記用具など生活必需品に使われる他、楽器、電気機器、精密機械、ハイテク部品、土木建築などの分野で幅広く活用されています。

 

 更にまた、近年テキスタイルの表現方法の一つとして、自然な羊毛の特質を活かしたフェルト造形に情熱を注ぐ作家が内外に数多く見られるようになり、単純な技法ながら驚くべき多様な表現が出てくるようになりました。フェルト造形の一般的な特徴としては、その不定形性にあると言えるでしょう。不定形な造形性を、ここでは視線の移動に沿った精神の遊びの造形という意味で、「移動する遊体」と名付けておきます。

 

 映像を主体としたパフォーマンスは、遊牧民の文化と都市のメディア文化を交接させることによって、「遊牧」対「定住」の対立を超えたコスミックな精神世界を描き出していく試みです。映像やパフォーマンスを、時間と空間を交錯させていくメディアと考えると、これもまたひとつの「移動する遊体」と言えるでしょう。


 渦巻きやマンダラを内包するゲルもまた「移動する遊体」と捉えることができます。これら「移動する遊体」たちは、時間と空間、歴史と地理、民俗と神話、国家と伝統、都市と辺境、祝祭と生活、技術と表現の間を移動したり飛び交ったりするのです。それは人々の交流の中でおこなわれるのですが、交流の中心に「ゲルをつくる」ということが設定されるのです。


2img

◆上野正夫によるバンブー・シェルター 「太平洋に近い椎の木林から」



◆「遊体」との語らい

-ワークショップ安房鴨川-

★日時:19911019日(土〉午後1時より20日(日)午後4時

★会場:千葉県鴨川市林浄院他

★指導:上野正夫 他

★募集定員:10

★参加費:¥20,000.(宿泊、食事は別途)

★内容:※椎の木ばやしの木の下に山を作る    

                ※椎の木ばやしの採集計画    

                ※「塩の音楽」装置群のマルチメディア・コラボレーション                          (アルゴン・レーザー使用) 

★その他:※BAMB00 SHELTER他は東京でのフェルトワーク展に展示る。

          ※詳細はワークショップ要項参照


Img_3 

◆伊豆・熱海市山中での天幕設営のワークショップ








-ワークショップ伊豆-

★日時:19911021日(月)~27日(日)

★会場:伊豆、熱海・賀泉窯

★内容:本間一恵・手塚のぶ子の指導によりフェルトを編んで天幕を張る。

★協力:アタミ・アート・アソシエイツ  河西力 他

★募集定員:50

★参加費:¥10,000.(宿泊、食事は別途)

★その他:

 ※自然空間との対話を制作趣旨とし、伝統的なゲルの形状にこだわらない。東京でのフェルトワーク展に展示する。

 ※「塩の音楽」をキーコンセプトにした「パオの唄」ライブ(シンセサイザー:吉川ハヂメ他)

 ※詳細はワークショップ要項参照


Img_0019  

◆大石義一研究室によるゲルの復元(岩手県・八幡平)





-ワークショップ京都-

★日時:19911115日(金)~17日(日)(予定.

★会場:川島テキスタイル・スクール

★指導:ジョリー・ジョンソン、野田涼美

    中村彦之‥‥‥‥フェルト制作指導

    京田誠 ……ベルト制作指導

★募集定員:フェルト制作……25

      ベルト制作…… 25

★参加費:¥20,000. (宿泊、食事は別途)

★内容:※ゲルを包むフェルト制作

    ※フェルトを固定するベルト制作

★その他:※制作したゲルは京都芸術短期大学でのフェルトワーク展と同会期に短大キャンパスに展示



スライドレクチャーとシンポジウム

ゲルからはじまるディスクール

-スライドレクチャー-


★テーマ:「ゲルをつくる」

★講師:ジョリー・ジョンソン

★日時・会場:

    ☆東京/118日(金)   午後3時~午後5

          青山・小原流会館2F第一教室

    ☆京都/1122日(金)  午後1時~午後230

         京都芸術短期大学講堂


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不思議の色糸 ワークショップ

2012-10-01 08:33:30 | TEXTILE FORUM

Kiharayoshimiwork2

1990920日発行のTEXTILE FORUM NO.14に掲載した記事を改めて下記します。

 イギリスに十年在住し、独自のニット活動を展開している木原よしみさんが、このほど下記の要領でワークショップと日本で初めての個展を開催します。

 「気取りのないカジュアルな空間にしたい」という木原さん。美しい中間色の“バラン     ス”と“ブレイク”の妙を、この機会にご堪能ください、

【木原よしみ略歴】

 ★1973: 京都府立大学女子短期大学部 被服学科卒業

 ★1976: 市田和子編物学園修了

 ★1976: 川島テキスタイル・スクール修了

 ★1980~イギリス・ロンドン等で個展を開く他、グルーア展に出品

     1986年には東京、大阪で開催された「Masquerade」展に出品

     イギリス在住

《メッセージ》

 二十代の後半から突然イギリスで生活を始める事によって、それまで囲まれていた多くのものは、さらに遠くに放たれていってしまったようである。「自分のルーツはどこにあるのだろう」……十二年めに入ったイギリスでの生活を通して、くり返し、自分に問いかけてきた。こんな私にとって、今回の一連のExhibition/Eventsは久しく接していない暖かい「巣の中に帰る」ような気持ちです。

 七年半住んだ京都の古い街の一角にあるギャラリー無有、貴重な時間をすごした川島テキスタイルスクール、その時代を通して出会った三宅さんの率いる東京テキスタイル研究所、そして新たに加わったクラフトの家セタ・クラフトハウス。それぞれ幅広くテキスタイルを率いて、おしみない努力を続けてきた人々に囲まれています。

 内容はカジュアルでリラックスしたもの………私なりに作ってきたいくつかの作品に加えて今回は私の作品の特長である「多くの色を編み込み」その過程、考え方等の紹介をeventという形で組み入れています。

 一人で制作を続けてきた、私のKnitは一定の小さな分野に限られています、そんな中からのほんの小さな提示かもしれませんが、これを通して「何らかの接点が始まれば」と秘かに期待をしています。是非参加して下さい。            木原よしみ

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◆木原よしみ個展

【展示&ワークショップー東京-】

◆展示 11月3(日)~11日()

    東京テキスタイル・フォーラム 10:0019:00(会期中無休)

◆ワークショップ(ー日講習)

★講習内容:『多色編み込み』

★日時:119日(金)・10()11日(日)

           午前10時~午後/4時(5時間)

★会場:東京テキスタイル研究所

★定員:一日 20名(全60名)★受講科:¥12,000.

★申し込み方法:抽選にて決定させていただきますので、葉書に住所、氏名、電話番号、受講希望目をご記入の上、11月2日(金)必着で下記に申し込み下さい。追って、ご案内いたします。

★申し込み先:156 東京都世田谷区松原2-18-1

            ㈱東京テキスタイル研究所

            TEL 03-323-2001

★持参品:並太程度の毛糸数色(残り糸でよい)、棒針(68号程度)、かぎ針(67号)、メモ用紙、グラフ用紙、筆記用具、色鉛筆等、又、お気に入りのスカーフ、小物、ブラウス、スカート等1点持参

【個展一東京-】

11月23日(金)~30(金)    II:0019:00(会期中無休)

SETA CRAFT HOUSE

  銀座ギャラリー Cepo

104 東京都中央区銀座3-7-20(日本料理会館1F)

     TEL 03-563-4730

【ワークショップ-京都-】

◆ワークショツプ(一日講習)

★講習内容:『多色編み込み』

★日時:12月7日()・8日(土)・9日(日)

           午前10時~午後4時(5時間)

★会場:川島テキスタイル・スクール

★定員:一日 20名(全60名) ★受講科:¥12,000.

★昼食代:¥520. ★ドミトリー宿泊費:¥3,600. (一泊三食付)

★申し込み方法:抽選にて決定させていただきますので、葉書に住所、氏名、電話番号受講希望日、昼食及び宿泊の有無をご記入の上1120日(火)必着で下記に申し込み下さい.追って、ご案内いたします。

★申し込み先:601-11  京都府京都市左京区静市市原町418

           川島テキスタイル・スクール   TEL 075-741-3151

★ 持参品:並太程度の毛糸数色(残り糸でよい)、棒針(68号・程度)かぎ針(67号)、メモ用紙、グラフ用紙、筆記用具、色鉛筆等、又、お気に入りのスカーフ、小物、ブラウス、スカート等1点持参

【個展-京都-】

12月5日(水)~16日(日)    11:0018:00(月曜休廊〉

ギャラリー無有

 〒600京都府京都市下京区西洞院通綾小路下ル綾西公園内

   TEL 075-343-6658

1991620日発行のTEXTILE FORUM NO.16に掲載した記事を改めて下記します。

第二回 不思議の色糸 ワークシヨップ

 昨年l1月初旬から12月中旬にかけ東京と京都で開催された木原よしみ「不思議の色糸」の個展には延2000余名、ワークショップには一都二府二十三県より230名のご来場、ご参加をいただきました。

 この企画は一回限りでなく継続開催を念頭に置いておりますので、ワークショップに参加された方々の生のご意見を頂戴し次回からの企画運営に反映させたいという考えで5月にアンケートを配布し現在、集計中です。

 お寄せいただいた感想の多くは好評で90%以上の方が今秋開催予定のワークショップ・パートⅡへの参加希望を表明されました。私共、主催者としては皆様の要望に答えるべく現在スケジュール等の調整をいたしておりますので、近日中に詳細を発表いたします。 又、地方からの参加者のアンケートに多く記載されておりましたが、東京・京都だけでなく全国的な開催を検討してほしいという声に答え、10月末から12月末迄で、12名以上のグループを組む事が出来、ワークショップを開く為のテーブル及スライド放映の設備を有することが可能なグループを募ります。詳細は当研究所(三宅哲雄)迄ご連絡下さい。

★個展

  東京/12月2日~7日     千疋屋ギャラリー

  京都/10月15日~20日   ギャラー無有

★ワークショップ

  東京/日時未定


集中講座「一本の線から」と「ドローイング」

2012-09-01 08:17:44 | TEXTILE FORUM

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1987914日発行のTEXTILE FORUM NO.8に掲載した記事を改めて下記します。

集中講座『一本の線から』

◆日時:1987629日(月)~71日(水)-3日間-

          午後1時~午後4時

◆講師:堀内紀子

◆日程:第一日:629日(月)

     スライドレクチャー 「布について」

     第二日:630日(火)

     ワークショップ 「線状のものが面になるには」

     第三日:71日(水)

     ワークショップ 「サンプルづくり」

 

広辞苑によると「ぬの」は以下の意味を持っています。

『ぬの』(ぬの) 

① 麻、葛(かずら)などの繊維で織った織物、古くは絹に対していい、近世以後、もめん含む

② 織物の総称、布地(ぬのじ)

③ 名詞に冠して、平ら、水平、横、平行などの意をあらわす語

 

今日、『ぬの』という言葉の多くは②の意味で用いられているが、技法的に編んだり、組んだり、あるいは結んだり、又、もじったりして出来た『もの』は何と言うのでしょうか。一つの答えとして『きれ』(裂)という言葉がみつかりますが、十分に理解して使われてはいないと思います。

 数年前、私の子供が夏休みの自由研究で織物を作ったとき、先生の寸評は『よく編めましたね』でした。一般的に誰でもあまりにも身近にある物については、知らない事が多いし、又、それらの物に目を向けることも少ないのが実情だと思います。しかしながら、テキスタイルに係わる方には理解してほしいことです。

 

人類の歴史は食の歴史であると共に、布の歴史でもあります。世界には多くの民族がそれぞれの歴史の中で布との係わりを持ち、多様な布の文化をつくりあげてきました。今日の生活はこれらの文化によって支えられているのです。

 『線状のものが、織ったり、編んだりして、面になる』このことは人類の歴史の中で、一貫した原則ともなっています。人々はこの原則を踏まえながら多様な展開を試みたのです。

 堀内先生はこの原則を整理・分類し、昨年、『一本の線から』にまとめあげました。この仕事は人類の歴史の中で、おそらく初めての試みでありましょう。素材や用途、道具そしてスケール等を除外して線が絡んで多様な“め”をつくりだす。その可能性を図式したものですが、この仕事はテキスタイルに係わる人々だけでなく、空間造形を志す人々に今後とも多くの示唆を与えることでしょう。(三宅哲雄)

堀内紀子先生の作品を見て   羽鳥創子

樹林の内包する空気を見た時

私の身体は作品に溶け込んでいった

………それは永遠のサナギであり

   あなたは永遠のチョウである………

大好きなブバーの詩が浮んだ

スライドレクチャーであることも忘れて

樹林の内へと吸い込まれてしまった

「これはあの季の私の日記です」

先生の声にふと我に還った

「えっーこれが美しヶ原の遊具の作者と同じ人なの」

細繊な神経と

巨い なるものを 許容する

静と動のバランス

先生のあのまなざしは

深く永遠の相を見つめる

『布とは皮膚の代用であり生きものです 人が生まれて死ぬように生きて生まれて朽ちて生く』

私は全身でメモをとる

ふと

眼を上げると

窓の外に    `

金ぱっの坊やが微んで在る

風に髪が細かく揺れて動いた瞬間

私の心も動いていく

樹林の内包する空気の内へと

細い細い金糸の漣の内へと

私の心の琴線に

一本一本のあの糸の響きが

泌みていく

宇宙の皮膚に細腕に

こもごもの生に満ちていく

あなたの愛と作品の内に

私は浸って在る

未来の声に耳を傾けながら。

私の感じたこと      トミヤ マキコ

 空気の流れ、その人がいることによって空気の流れを感じる。パワー、情熱なのかもしれない。一瞬目が光っちゃうんですよね、きっと。目が大きくなってしまう。大声を出しているわけでもないし、ハデな服を着ているわけでもない。見ていて、その目線が感じられるが、声を聞いているとその部屋の空気がもっと激しく動いて、外部との隔たりがいっそう増す感じがする。部屋が狭いなあ、大きな草原の真中でって希望をしてしまいそうだった。私、その空気の中に居られてよかったと思う。その空気の中で団結を生み出したような。そんな一員になれてうれしかった。

 チョット私の話をきいてくれますか?

目を大きく開けて、上に少しかた向けて、チョット早めに歩いてみると目に風を感じる。私ね、思わず唇に力がはいってしまうんですよね。

目つき、目線って一番その人をわかり易く私に教えてくれるような。目があるとその人の空気の流れを感じる。

Photo

『中野恵美子先生ドローイング授業内容』    羽鳥創子

★第一日(午前)『素材との対話』

※使用素材

☆じゃがいも☆菜葉☆発泡スチロール☆新聞紙☆うす紙☆木片☆おはじき☆レンガ☆石☆プラスチックホルダー☆輪ゴム☆くぎ☆まめ☆布(織・タオル・レース他)☆生成毛糸☆砂☆貝がら☆木の枝☆原毛

視覚・触覚・聴覚・臭覚・味覚の身体全体を働かせて、自分の身体を受信機にして感じた素材を(目をつぶって素材から聴いて手で得る)ドローインクする     

一枚目-

さらに探く素材と対話して たとえばたたいてみたり・砕いてみたり・たたんだり’折ったり・ひっぱったり・割ったり・切ったり・臭をかいだりして、色々試みてみる。

素材の内部、自分自身の内部をも動員して(幼児体験の記憶までよみがえらせて)子供に還って素材と一緒に遊んでみる。どんなだろうといじってみる。何ができるんだろうと想ってみる。自分を解放してドローイングする。

-二枚目-

★第一日(午後)『スペース』

 柱・壁・床をコーナーにしてとれだけ空間(スペース)がとれるかテープを貼る。特に自分の一番いやな場所で空気の中にどう自分が存在するか空気との関係をドローイングする                                 -三枚目-

場所をかえて(誰かの人の場所を選んで)それぞれのスペースをどう感じるか、肌が何を感じて素直に居場所を自分自身に聴いてドローイングする