◆韓国のトワイニングのかご
2004年1月10日発行のART&CRAFT FORUM 31号に掲載した記事を改めて下記します。
「韓国の藁細工」 高宮紀子
昔は当たり前のように使っていたものが、気がついたら無くなっていた、藁で作られた民具もそんな物の一つです。私自身、藁の民具を使っていたわけではないのですが、かごや袋、履物や蓑、被り物など様々な生活必需品が作られ、使われてきた時代がかつてありました。今は新しい素材にとって代わられ、気がついてみると作る人も少なくなってしまっている、そんな現状があります。若い時に編んだという人も少なくなり、なんとなく子供の頃、そばで見ていた人たちが記憶や古い物を頼りに民具を復元しようとしている。そんな時代になっています。藁細工についての書籍も出ていますが、いざ作ってみると、どうしても分からない所がでてきます。ずいぶん前から気になっていたのですがようやく2年前から柳田利中さんという人に藁細工を習い始めた、ということはこのシリーズの9号にも書きました。
柳田さんから初めて藁細工を習ったのは亀の形をした飾り物でしたが、それから、藁打ち、縄ないなどの基本的な技術、そしてゾウリ、サンダワラ、カザグルマ、カゴ、タワラ、エビ、サケ、雪グツ、サンダル式の履物、ホウキ、ミノ、ワラジなど、最初は簡単な物から徐々に複雑な物へと挑戦し、今も続いています。最初から終わりまで下手でも自分でやってみたいと思っているので、しばしば予定していた形とは違うものになってしまうこともありますが、少しは藁の扱いに慣れてきたように思います。でも量産するわけではないので、まだまだです。
いろいろな物を藁で作っていると、日本以外のアジア近隣の国との技術的なつながりというものに関心を持つようになりました。柳行李も韓国や中国の柳行李とつながりがあったのですが、藁についてもつながりがありそうで興味がありました。藁を使った編み組みというのは世界中のあちこちにあり、技法は同じものが多いのですがそれぞれの特色があります。お隣りの国、韓国の藁の民具は日本の物とも似ていますが、とても特徴があり気になる存在でした。
ちょうど今年の10月、韓国で行われた『韓・日 バスケタリー交流展』に参加する機会があり、ソウルに行ってきました。日本からは16人の作家が、韓国からは弘 大学の繊維美術専攻のOBらが中心になり15人が参加しました。会場は、日本広報文化院のシルクギャラリーで近くにはギャラリーや工芸品を売る店が多いインサドンという文化的な街にありました。
今回の展覧会は、日本と韓国のバスケタリー作品の展覧会ということなのですが、実際、韓国ではバスケタリーという繊維造形分野で作品を作る作家はいないらしく、染織作家のソンさんという人が自分の出身大学の後輩を集めて実現した企画でした。だから、日頃は繊維を使った平面的な、あるいは絵画のような作品を作る作家が、この展覧会に合った立体造形作品を作った人もいたようで、バスケタリー作品のように構造を意識した作品ではなかったのですが、その代わり、韓国の作家らしいテキスチャーや色彩の作品や現代アート的な作品が新鮮でした。展覧会の運営に関しては韓国の作家が中心になってくれて、作品の展示や、車での送迎、通訳など、ずいぶんとお世話になりました。交流ということで、いろいろな人と話したかったのですが、日本語ができるソンさん以外は数人のみ英語しか通じず、同じアジア人でありながら、言葉が違うというのはもどかしいことと思いました。
現地に到着した日の夕方、藁と草の生活史博物館(ジップル ミュージアム)に連れて行ってもらいました。ここは藁や草類による編み組み品だけの、ほんとうに夢のような博物館です。建物は小さいのですが、展示ケースの中に珍しい物がたくさんありました。日本の事情と同じように、韓国でも藁細工などの技術保持者は少なくなっています。展示している蒐集品は個人のものだそうで、初心者や子供達向けの藁細工による講習も行っていて、本も出版しています。個人の蒐集品を元にした博物館ですが、文化事業ということで政府から経済援助を受けられるのはうらやましいかぎりでした。
日本と韓国の藁による民具は形こそ違いますが、素材が同じなのでたいていの技術は同じです。草類はチョマやカヤツリグサ科の茎などを使うのですが、茎が細いので編み目の細かい物になります。中でもワングルというカヤツリグサ科の草でできた蓋付きのかごは、模様が編み出された二重のかごですが、素晴らしい物があります。写真は一緒に韓国に行ったSさんが南大門で買ったかごです。太めのワングルですが、蓋も本体も二重になっていてきれいな模様があります。(写真:韓国のトワイニングのかご) ワングルに比べて藁はさすがに太いので、かごもずんぐりしていますが、やはり二重に編んだかごが多い。底から編んで縁まで編み、また底に向かって編んで二重のかごの中には、縁で折り返しをした後、しばらく編んで縁を厚くしているかごがあり、外側には簡単ですが、模様が編まれています。前号にも書きましたが、夏にアメリカ北西部のネイティブのかごをたくさん見る機会があり、ずいぶんとトワイニングの編み方のバリエーションを見たのですが、韓国でもトワイニングが多いことに驚きました。しかも簡単な模様、文字などが、編み出されています。日本の民具では編み方の違いや素材の違いなどで模様を出すことありますが、パターンになっていることは少ない。この点では、アメリカの北西部のかごに近いわけです。
交流展の参加者の一人、ジョンさんという人に藁の頭上運搬具を作る講習をやってもらいました。他の素材も使うのですが、土台と縄を藁でないます。用意してくれた韓国の藁に初めて触れました。実際に触ってみると、韓国の藁というのは、日本のいつも触っているものと比べてしっかりしています。稈も太めです。その時に使った藁が叩いていないものだったせいもあるとは思いますが、日本の藁とは違うように思えました。稲の種類が違うでしょうから考えてみれば当然なことかもしれません。
以前、新潟の藁を藁細工用に手刈りしてもらい、取りに行ったのですが、その時もち米とコシヒカリの藁をもらってきました。もち米の藁はひじょうに柔らかく柔軟性がありますが短い。コシヒカリの藁は長いのですが、固くてあまり編みには不向きなようでした。お米の味が違うように、毎年藁の品質も違います。乾燥の方法やその時の天候によっても違ってくると思います。その時にもらった藁は雨に一回あたってしまったとかで、前回もらった時のほどのきれいな藁ではありませんでしたが、そのかわりミゴ(稈の中心の部分)の色が美しく、それだけを使うと、見事な金色になります。イネというのは、品種改良を重ねていますから、昔の藁細工の素材とは少し違ってきているだろうし、毎年同じ品質の素材を確保する、ということはむつかしいと思いました。
韓国の民具といえば、ずいぶん昔、はきもの博物館にあった履物を見たのが最初でした。確か素材はヘンプだったと思うのですが、足の甲に当たる部分が何本かの繊細な縄でできていてサンダルのようなものでした。中国にも似た履物があるのですが日本ではみかけない形です。ソウルに行った時にこの履物と構造がそっくりな藁製の物をみつけ購入しました。帰ってから履いて歩いてみると、案外歩きやすかったです。
韓国から帰ってきて、柳田さんの所でわらじを習いました。韓国のものと同じように、タテ縄を張り、編み材を入れて底を作る形になっています。韓国には、別の方法で作る底もあるようですが、日本のわらじやぞうりのようにタテ縄を張って底を編む方法は共通しています。韓国の博物館では同じ履物を作るための型も展示されていましたが、同じ長さの細い縄をたくさん出して、それらの縄の頭に別の縄を後で通してまとめます。日本のように足の指の間に挟んで歩くのではなく、足の甲をくるむような形です。二つともそのままでは安定は悪いのですが、紐で閉めるようになっています。私が買った韓国の藁製の履物は1本で、日本のわらじは2本の縄で結んで固定するのです。ただし、日本のわらじは足の指が完全に履物から前に出て、土につきそうなのですが、韓国のはつくことはなさそうです。
柳田さんに藁細工を習い始めてからずっとお約束してきたことがあります。それは、記録です。今までも柳田さんの作業をしている場面をテレビや雑誌などが撮影してきたのですが、撮る角度が違ったり、一部だけだったりして作る人が参考にするような物はなかった、ということで、藁細工を教えるのに当たっては、是非記録をつけてほしいと柳田さんから頼まれました。そんなわけで家庭用のデジタルビデオで収録してきました。このビデオの編集にはとても長い時間と手間がかかるのですが、どうしてもこの場面が足らないとか、ビデオだけだと作り方がわからない箇所が出てきます。そのためビデオから絵を起こしトレースをしたり、図を新たに書いてテキストによるガイドを作っていきました。文章や図と違い、結果にいたるプロセスを見ることができるから映像には多くの情報があります。しかし、実際には同じやり方で編んでもずいぶんと技量の幅が出てしまうようです。藁を束で使うことが多いのと、技術とはいえない、手の力の入れ具合を調節することが美しい物ができるかどうかの重要なポイントになっているからだと思います。例えば、わらじやぞうりを作ってみるとよくわかります。片方を作ってみると、もう片方が作る時に必ず違うサイズになってします。ということはビデオやテキストの資料で参考文献を作っておいても、実際に作ることを繰り返して熟練する、というのはまた別のことだということです。ましてや子供の時から藁細工の物を使ったり、身に付けたことが無い私にとっては、作り続けることで確かめるしか手はありません。
民具は使われることによって、その技術が洗練され、改良されてきました。使うことで技術の改良なり、個人的な工夫が加わっていったと思うのですが、使うということは現代では難しいのも事実です。昔の人の生活を体験しようということで、わらじを履いて道を実際に歩いてみよう、といった催しが行われているようです。それを実際自分で作ったわらじで試すという人は少ないでしょうが。雪国で、深クツを履き、雨ミノを着けてニゾを被って(雪除けの被り物)吹雪にさからって歩く、なんてことができればいいのですが、現実的には自分で作ったわらじを履いて、どこかの道を歩いてみようと思っています。韓国の藁の履物も試すのが楽しみです。
2004年1月10日発行のART&CRAFT FORUM 31号に掲載した記事を改めて下記します。
「韓国の藁細工」 高宮紀子
昔は当たり前のように使っていたものが、気がついたら無くなっていた、藁で作られた民具もそんな物の一つです。私自身、藁の民具を使っていたわけではないのですが、かごや袋、履物や蓑、被り物など様々な生活必需品が作られ、使われてきた時代がかつてありました。今は新しい素材にとって代わられ、気がついてみると作る人も少なくなってしまっている、そんな現状があります。若い時に編んだという人も少なくなり、なんとなく子供の頃、そばで見ていた人たちが記憶や古い物を頼りに民具を復元しようとしている。そんな時代になっています。藁細工についての書籍も出ていますが、いざ作ってみると、どうしても分からない所がでてきます。ずいぶん前から気になっていたのですがようやく2年前から柳田利中さんという人に藁細工を習い始めた、ということはこのシリーズの9号にも書きました。
柳田さんから初めて藁細工を習ったのは亀の形をした飾り物でしたが、それから、藁打ち、縄ないなどの基本的な技術、そしてゾウリ、サンダワラ、カザグルマ、カゴ、タワラ、エビ、サケ、雪グツ、サンダル式の履物、ホウキ、ミノ、ワラジなど、最初は簡単な物から徐々に複雑な物へと挑戦し、今も続いています。最初から終わりまで下手でも自分でやってみたいと思っているので、しばしば予定していた形とは違うものになってしまうこともありますが、少しは藁の扱いに慣れてきたように思います。でも量産するわけではないので、まだまだです。
いろいろな物を藁で作っていると、日本以外のアジア近隣の国との技術的なつながりというものに関心を持つようになりました。柳行李も韓国や中国の柳行李とつながりがあったのですが、藁についてもつながりがありそうで興味がありました。藁を使った編み組みというのは世界中のあちこちにあり、技法は同じものが多いのですがそれぞれの特色があります。お隣りの国、韓国の藁の民具は日本の物とも似ていますが、とても特徴があり気になる存在でした。
ちょうど今年の10月、韓国で行われた『韓・日 バスケタリー交流展』に参加する機会があり、ソウルに行ってきました。日本からは16人の作家が、韓国からは弘 大学の繊維美術専攻のOBらが中心になり15人が参加しました。会場は、日本広報文化院のシルクギャラリーで近くにはギャラリーや工芸品を売る店が多いインサドンという文化的な街にありました。
今回の展覧会は、日本と韓国のバスケタリー作品の展覧会ということなのですが、実際、韓国ではバスケタリーという繊維造形分野で作品を作る作家はいないらしく、染織作家のソンさんという人が自分の出身大学の後輩を集めて実現した企画でした。だから、日頃は繊維を使った平面的な、あるいは絵画のような作品を作る作家が、この展覧会に合った立体造形作品を作った人もいたようで、バスケタリー作品のように構造を意識した作品ではなかったのですが、その代わり、韓国の作家らしいテキスチャーや色彩の作品や現代アート的な作品が新鮮でした。展覧会の運営に関しては韓国の作家が中心になってくれて、作品の展示や、車での送迎、通訳など、ずいぶんとお世話になりました。交流ということで、いろいろな人と話したかったのですが、日本語ができるソンさん以外は数人のみ英語しか通じず、同じアジア人でありながら、言葉が違うというのはもどかしいことと思いました。
現地に到着した日の夕方、藁と草の生活史博物館(ジップル ミュージアム)に連れて行ってもらいました。ここは藁や草類による編み組み品だけの、ほんとうに夢のような博物館です。建物は小さいのですが、展示ケースの中に珍しい物がたくさんありました。日本の事情と同じように、韓国でも藁細工などの技術保持者は少なくなっています。展示している蒐集品は個人のものだそうで、初心者や子供達向けの藁細工による講習も行っていて、本も出版しています。個人の蒐集品を元にした博物館ですが、文化事業ということで政府から経済援助を受けられるのはうらやましいかぎりでした。
日本と韓国の藁による民具は形こそ違いますが、素材が同じなのでたいていの技術は同じです。草類はチョマやカヤツリグサ科の茎などを使うのですが、茎が細いので編み目の細かい物になります。中でもワングルというカヤツリグサ科の草でできた蓋付きのかごは、模様が編み出された二重のかごですが、素晴らしい物があります。写真は一緒に韓国に行ったSさんが南大門で買ったかごです。太めのワングルですが、蓋も本体も二重になっていてきれいな模様があります。(写真:韓国のトワイニングのかご) ワングルに比べて藁はさすがに太いので、かごもずんぐりしていますが、やはり二重に編んだかごが多い。底から編んで縁まで編み、また底に向かって編んで二重のかごの中には、縁で折り返しをした後、しばらく編んで縁を厚くしているかごがあり、外側には簡単ですが、模様が編まれています。前号にも書きましたが、夏にアメリカ北西部のネイティブのかごをたくさん見る機会があり、ずいぶんとトワイニングの編み方のバリエーションを見たのですが、韓国でもトワイニングが多いことに驚きました。しかも簡単な模様、文字などが、編み出されています。日本の民具では編み方の違いや素材の違いなどで模様を出すことありますが、パターンになっていることは少ない。この点では、アメリカの北西部のかごに近いわけです。
交流展の参加者の一人、ジョンさんという人に藁の頭上運搬具を作る講習をやってもらいました。他の素材も使うのですが、土台と縄を藁でないます。用意してくれた韓国の藁に初めて触れました。実際に触ってみると、韓国の藁というのは、日本のいつも触っているものと比べてしっかりしています。稈も太めです。その時に使った藁が叩いていないものだったせいもあるとは思いますが、日本の藁とは違うように思えました。稲の種類が違うでしょうから考えてみれば当然なことかもしれません。
以前、新潟の藁を藁細工用に手刈りしてもらい、取りに行ったのですが、その時もち米とコシヒカリの藁をもらってきました。もち米の藁はひじょうに柔らかく柔軟性がありますが短い。コシヒカリの藁は長いのですが、固くてあまり編みには不向きなようでした。お米の味が違うように、毎年藁の品質も違います。乾燥の方法やその時の天候によっても違ってくると思います。その時にもらった藁は雨に一回あたってしまったとかで、前回もらった時のほどのきれいな藁ではありませんでしたが、そのかわりミゴ(稈の中心の部分)の色が美しく、それだけを使うと、見事な金色になります。イネというのは、品種改良を重ねていますから、昔の藁細工の素材とは少し違ってきているだろうし、毎年同じ品質の素材を確保する、ということはむつかしいと思いました。
韓国の民具といえば、ずいぶん昔、はきもの博物館にあった履物を見たのが最初でした。確か素材はヘンプだったと思うのですが、足の甲に当たる部分が何本かの繊細な縄でできていてサンダルのようなものでした。中国にも似た履物があるのですが日本ではみかけない形です。ソウルに行った時にこの履物と構造がそっくりな藁製の物をみつけ購入しました。帰ってから履いて歩いてみると、案外歩きやすかったです。
韓国から帰ってきて、柳田さんの所でわらじを習いました。韓国のものと同じように、タテ縄を張り、編み材を入れて底を作る形になっています。韓国には、別の方法で作る底もあるようですが、日本のわらじやぞうりのようにタテ縄を張って底を編む方法は共通しています。韓国の博物館では同じ履物を作るための型も展示されていましたが、同じ長さの細い縄をたくさん出して、それらの縄の頭に別の縄を後で通してまとめます。日本のように足の指の間に挟んで歩くのではなく、足の甲をくるむような形です。二つともそのままでは安定は悪いのですが、紐で閉めるようになっています。私が買った韓国の藁製の履物は1本で、日本のわらじは2本の縄で結んで固定するのです。ただし、日本のわらじは足の指が完全に履物から前に出て、土につきそうなのですが、韓国のはつくことはなさそうです。
柳田さんに藁細工を習い始めてからずっとお約束してきたことがあります。それは、記録です。今までも柳田さんの作業をしている場面をテレビや雑誌などが撮影してきたのですが、撮る角度が違ったり、一部だけだったりして作る人が参考にするような物はなかった、ということで、藁細工を教えるのに当たっては、是非記録をつけてほしいと柳田さんから頼まれました。そんなわけで家庭用のデジタルビデオで収録してきました。このビデオの編集にはとても長い時間と手間がかかるのですが、どうしてもこの場面が足らないとか、ビデオだけだと作り方がわからない箇所が出てきます。そのためビデオから絵を起こしトレースをしたり、図を新たに書いてテキストによるガイドを作っていきました。文章や図と違い、結果にいたるプロセスを見ることができるから映像には多くの情報があります。しかし、実際には同じやり方で編んでもずいぶんと技量の幅が出てしまうようです。藁を束で使うことが多いのと、技術とはいえない、手の力の入れ具合を調節することが美しい物ができるかどうかの重要なポイントになっているからだと思います。例えば、わらじやぞうりを作ってみるとよくわかります。片方を作ってみると、もう片方が作る時に必ず違うサイズになってします。ということはビデオやテキストの資料で参考文献を作っておいても、実際に作ることを繰り返して熟練する、というのはまた別のことだということです。ましてや子供の時から藁細工の物を使ったり、身に付けたことが無い私にとっては、作り続けることで確かめるしか手はありません。
民具は使われることによって、その技術が洗練され、改良されてきました。使うことで技術の改良なり、個人的な工夫が加わっていったと思うのですが、使うということは現代では難しいのも事実です。昔の人の生活を体験しようということで、わらじを履いて道を実際に歩いてみよう、といった催しが行われているようです。それを実際自分で作ったわらじで試すという人は少ないでしょうが。雪国で、深クツを履き、雨ミノを着けてニゾを被って(雪除けの被り物)吹雪にさからって歩く、なんてことができればいいのですが、現実的には自分で作ったわらじを履いて、どこかの道を歩いてみようと思っています。韓国の藁の履物も試すのが楽しみです。