まあどうにかなるさ

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人間昆虫記

2019-02-18 23:19:44 | 書評

手塚治虫といえば、『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』に代表される少年向けのマンガで有名だが、青年向けのマンガでも、クオリティの高い作品が多く発表されている。
中でも特に傑作だと思うのが『人間昆虫記』。女性版ピカレスクの異色作品である。「プレイコミック」に1970年から翌年にかけて連載された長編マンガだ。
主人公の十村十枝子が処女作『人間昆虫記』で芥川賞を受賞するところから物語は始まる。きらびやかな授賞式が行われている同じ時間、別の場所で臼場かげりという女性の首つり姿が発見される。実は『人間昆虫記』は臼場かげりの作品で、十村十枝子がそれを盗作したものだったのだ。臼場かげりは自殺ではなく、十村十枝子が人を使い自殺に見せかけて殺害していたのである。
十村十枝子は女優、デザイナー、そして作家と、次々と姿を変える。あたかも昆虫が脱皮を繰り返すかのように。だが、それは自分のものは一つもなく、全てが盗んだものだったのだ。
やがて、屈辱を受けた大企業の重役夫人になり、巧妙に復讐を遂げ、夫を自殺に追い込むのである。
全てを手に入れた十村十枝子にも、たった一つ、手に入れられないものがあった…

 



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