
写真:ノーベル文学賞を受賞した韓江(ハン・ガン)氏
「韓国の作家がノーベル文学賞とったみたいだよ」
妻から聞いたとき、
(まさかあのセクハラ・ハラボジが…)
と思いましたが、ネットのニュースを見てみると、韓江(ハン・ガン)という女流作家でした。しかも、1970年生まれと、若い。
私は読んだことがありません。
(今まで、候補に挙がったことがあったっけ)
韓国のノーベル文学賞候補は長らく高銀(コ・ウン)一人であり、その高銀も、数年前にセクハラ告発があって以来、「ノーベル賞は無理」というのが定説でした。
韓国がノーベル文学賞をとれないわけ
韓国のMe too
韓江について調べてみると、
1970年生まれ。
1994年『ソウル新聞』新春文芸で短編が当選。
2005年、『蒙古斑』で李箱文学賞。
2010年、東里文学賞。
2016年、『菜食主義者』でブッカー国際賞。
2017年、『少年が来る』でマラパルテ文学賞(イタリア)。
2023年、『別れを告げない』でメディシス賞外国小説部門(フランス)。
2024年、『別れを告げない』でエミール・ギメ・アジア文学賞(フランス)。
2024年、湖巌賞芸術部門。
国内の文学賞だけでなく、海外の賞もとっていたんですね。
翌日、韓国のメンバーとオンライン会議がありました。
「初めてのノーベル文学賞受賞、おめでとう!」
「私たちもびっくりしました」
「若いよね」
「はい、私と同甲(ドンガプ、同い年)です」
「読んでみようと思うんだけど、何が面白いかな」
「実は私も読んだことなくて…」
土曜日、最寄りの駅の駅ビルに入っている大きめに本屋に行ったところ、『別れを告げない』という単行本が一冊残っていたので、早速購入。

斎藤真理子訳、2024年4月、白水社刊。原著は2021年刊だそうです。
韓江は、『少年が来る』で、1980年に起こった「光州事件」(全斗煥による民主化運動弾圧事件)を取り上げ、本作で1948年の済州島四・三事件を取り上げました。
両事件は、韓国では長らくタブーとされていましたが、光州事件については、韓国に文民政権ができて以降、『砂時計(モレシゲ)』というドラマが放映されるなどして解禁。済州島四・三事件については、在日コリアン作家、金石範が精力的に取り上げていましたが、韓国本国では目立った作品がありませんでした。
こうした「反体制」的な傾向が、スウェーデン・アカデミーの好みに合ったのだと思われます。
受賞後、韓国は大騒ぎ。特に左派系のメディアが熱心に報じています。
ハン・ガン氏のノーベル文学賞にソウル市民「全身に鳥肌…これこそハンガンの奇跡」
「ハンガン(漢江)の奇跡」とは、朴正熙大統領が世論の反対を押し切って、1965年の日韓基本条約を結び、日本の請求権資金と技術援助によって、1990年までの約25年間、経済発展を遂げたことを指します。
今回ノーベル文学賞をとった韓江さんは、「漢江」と同音異義語。
韓江さんが、「漢江の奇跡」の立役者の一人であった全斗煥を批判した小説(『少年が来る』)で名を挙げたというのは、皮肉です。
左派メディアは、朴正熙の娘である朴槿恵大統領が、韓江氏を「ブラックリスト」に載せていたなどといって、保守政権を批判しています。
『別れを告げない』を読み終わったら、また感想を書こうと思います。
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