何度か延期された末に打ち上げられた韓国の人工衛星,羅老号は,打ち上げには成功したものの,衛星の軌道進入には失敗し,墜落した模様です。
報道によれば,第一段ロケットはロシア製,第二段ロケットが国産だったようですね。こうしたことは,衛星打ち上げが失敗したからこそ,詳しく報道されたのだと思います。
昨年報道され,このブログでも紹介した記事(→リンク)のどこを見ても,「第一段ロケットはロシア製」の言葉はありません。
「国産初の宇宙ロケット」
「この発射体が,「科学技術衛星2号」を搭載して宇宙空間に打ち上げられる瞬間,私たちは世界で13番目の発射基地保有国であると同時に,名実共に世界第9位の宇宙強国としてそびえ立つことになる」
衛星の軌道進入に成功していたら,一段ロケットの成功も含めて,すべてが韓国の手柄となり,希望通り「宇宙強国」としてそびえ立ったことでありましょう。
ところが失敗しちゃったので,今度は責任追及で忙しい。何しろ,羅老号の発射には,3000億ウォンの巨費がかかっているからです。
東亜日報の8月27日の記事にこういうのがありました。
「フェアリングを製造した韓国の責任」VS「ロシアの総括的な責任」
(前略)
今後、衛星の軌道進入の失敗を巡り、韓国とロシア間で責任を巡る攻防も激しくなる見通しだ。まず、フェアリングを制作した韓国に、ある程度の責任があるのは事実だ。しかし、金重賢(キム・ジュンヒョン)教科部・第2次官は、責任の所在を問う質問に対し、「打ち上げと関連した全ての責任は、ロシア側にある」とし、今後、両国による共同調査で、はっきりする問題だと明らかにした。責任の所在により、契約に伴う2回目の羅老号に続き、3回目の羅老号を打ち上げるかどうかが決まる。
(後略)
「成功すれば自分の手柄,失敗すれば他人の責任」というのが,韓国伝統の思考方式です。
一方,8月26日の朝鮮日報は,むしろ韓国の責任を匂わせています。
羅老号はロシアが1段目のロケットを開発・製造し、韓国が2段目のロケットと衛星を製造した。つまり韓国とロシア両国の合作だ。羅老号が本来の任務を果たせなかった現時点で、正確な原因の究明と共に、両国の責任問題を今後は明確にする必要がある。
調査の結果、もしロシアが製造した1段目ロケットが目標高度の196キロで予定通りに分離されていたのであれば、軌道への進入に失敗した原因は韓国側にある可能性が高くなる。
専門家が推測する原因の中で、2段目ロケットの姿勢制御の失敗、衛星を保護するカバーの分離失敗—などは、どちらも韓国側が技術開発を担当したからだ。
一方で1段目ロケットが予定よりも高い位置まで飛んでいた場合には、軌道進入の失敗はロシア側にあることになる。そうなれば、ロシアが開発し羅老号を載せて打ち上げられた1段目ロケットの信頼性に問題が生じることになる。
今回ロシアが提供した1段目ロケットは、2011年に自国で使う予定の新モデルだった。たとえ地上で燃焼試験を終えたものであったとしても、このロケットの打ち上げは今回が初めてだったため、予想外の異常が生じていた可能性もある。
もちろん、これ以外にも問題は考えられる。例えば双方のコミュニケーションに問題があったことなどだ。以前から打ち上げが延期されるたびに、ロシアは詳しい説明を行わず、韓国側が2段目ロケットの推進力を正確に予測できなかった。これが原因となって設計段階で問題が生じた可能性もある。
ここはぜひ,中央日報社説が述べるごとく,「失敗を大事な資産」とみなして,調査の結果,韓国側に責任があるとわかれば謙虚に反省し,未来の「完全国産ロケット」の打ち上げに成功してほしいと思います。
【社説】残念な羅老号の夢…失敗も大事な資産だ
全国民が息をのんで見守った韓国初の宇宙ロケット「羅老(ナロ)号」(KSLV-1)が目標軌道への進入に失敗した。教育科学技術部の安秉万(アン・ビョンマン)長官は、「打ち上げ後衛星は正常に分離されたが、目標軌道に正確に送り込むことができなかったと分析される」と明らかにした。羅老宇宙センターによると、羅老号は打ち上げ9分後に高度306キロメートルで科学技術衛星2号と分離しなくてはならなかったが、これより36キロメートル高い高度342キロメートルで分離したという。航空宇宙研究院の李柱鎮(イ・ジュジン)院長は、「衛星が目標軌道からどれだけはずれたのかは韓国とロシアの調査委員会が現在分析作業を進めている。科学技術衛星は独自の推進体がない」と述べた。
きのう羅老号が宇宙に打ち上げられる場面を見守った国民に突如伝えられた半分の失敗は残念なことこの上ない知らせだ。宇宙に向かう険しい道をいま一度実感した。しかし落胆ばかりしていてはならない。これまで初めてのロケット打ち上げに成功した国は特にない。宇宙先進国も最初の打ち上げの成功率は27%水準だった。なにより今回の半分の失敗が宇宙に向かう研究開発を萎縮させてはならない。李明博(イ・ミョンバク)大統領は「七転八起でだめなら八転九起の覚悟で宇宙大国入りを成し遂げよう」と述べた。安長官も「今回すべての打ち上げ過程を経験し、われわれには貴重な技術として帰ってくることは間違いない」と述べた。国民もみな同じ心情だろう。
羅老号はひとまず未完の夢として宇宙をさまようことになった。昼夜を忘れ羅老号に没頭してきた250人の研究員こそだれよりもつらいのは明らかだ。しかし気を取り直しもう一度力を出してくれることを願う。まず今回の事故の原因から正確に究明し、技術的欠陥を補完しなくてはならないだろう。われわれは9カ月後の来年5月に再挑戦に乗り出す。失敗に備えロシアと追加で2回の打ち上げ実験をできるよう協定を結んでいたためだ。われわれは2度目の打ち上げに向け科学衛星もすでに確保している。きのうの絶望を次の機会の完全な成功のための肥やしにしなくてはならないだろ。失敗も大事な資産だ。
われわれが進むべき道はまだ遠い。政府は2018年に純粋に韓国の技術だけでKSLV-2を打ち上げ、2020年には月探査軌道船を打ち上げることを目標にしている。2025年には月探査船開発まで計画している。こうした遠大な夢を思えばきのうのような部分的失敗が宇宙に向かうわれわれの歩みを止めることはできない。宇宙開発は政府の持続亭な支援と国民の全面的な支持がなければ不可能なことだ。今後も専門家の判断を信じ黙々と前進させるべき課題がわれわれの前に置かれている。
ただ羅老号プロジェクトでわきおこった「技術従属」の問題は乗り越えていくべき大きな問題だ。2006年にロシアと結んだ宇宙技術保護協定により先端技術はまともに移転を受けられず、打ち上げが延期されたり中止されるたびに国内技術陣はロシアだけを見つめる状況が繰り返された。一日も早く独自の技術を構築することが急務だ。ロシアに引きずられる姿をこれ以上見せないよう宇宙ロケットの開発と打ち上げ管理体系も全面的に手を入れる必要がある。
報道によれば,第一段ロケットはロシア製,第二段ロケットが国産だったようですね。こうしたことは,衛星打ち上げが失敗したからこそ,詳しく報道されたのだと思います。
昨年報道され,このブログでも紹介した記事(→リンク)のどこを見ても,「第一段ロケットはロシア製」の言葉はありません。
「国産初の宇宙ロケット」
「この発射体が,「科学技術衛星2号」を搭載して宇宙空間に打ち上げられる瞬間,私たちは世界で13番目の発射基地保有国であると同時に,名実共に世界第9位の宇宙強国としてそびえ立つことになる」
衛星の軌道進入に成功していたら,一段ロケットの成功も含めて,すべてが韓国の手柄となり,希望通り「宇宙強国」としてそびえ立ったことでありましょう。
ところが失敗しちゃったので,今度は責任追及で忙しい。何しろ,羅老号の発射には,3000億ウォンの巨費がかかっているからです。
東亜日報の8月27日の記事にこういうのがありました。
「フェアリングを製造した韓国の責任」VS「ロシアの総括的な責任」
(前略)
今後、衛星の軌道進入の失敗を巡り、韓国とロシア間で責任を巡る攻防も激しくなる見通しだ。まず、フェアリングを制作した韓国に、ある程度の責任があるのは事実だ。しかし、金重賢(キム・ジュンヒョン)教科部・第2次官は、責任の所在を問う質問に対し、「打ち上げと関連した全ての責任は、ロシア側にある」とし、今後、両国による共同調査で、はっきりする問題だと明らかにした。責任の所在により、契約に伴う2回目の羅老号に続き、3回目の羅老号を打ち上げるかどうかが決まる。
(後略)
「成功すれば自分の手柄,失敗すれば他人の責任」というのが,韓国伝統の思考方式です。
一方,8月26日の朝鮮日報は,むしろ韓国の責任を匂わせています。
羅老号はロシアが1段目のロケットを開発・製造し、韓国が2段目のロケットと衛星を製造した。つまり韓国とロシア両国の合作だ。羅老号が本来の任務を果たせなかった現時点で、正確な原因の究明と共に、両国の責任問題を今後は明確にする必要がある。
調査の結果、もしロシアが製造した1段目ロケットが目標高度の196キロで予定通りに分離されていたのであれば、軌道への進入に失敗した原因は韓国側にある可能性が高くなる。
専門家が推測する原因の中で、2段目ロケットの姿勢制御の失敗、衛星を保護するカバーの分離失敗—などは、どちらも韓国側が技術開発を担当したからだ。
一方で1段目ロケットが予定よりも高い位置まで飛んでいた場合には、軌道進入の失敗はロシア側にあることになる。そうなれば、ロシアが開発し羅老号を載せて打ち上げられた1段目ロケットの信頼性に問題が生じることになる。
今回ロシアが提供した1段目ロケットは、2011年に自国で使う予定の新モデルだった。たとえ地上で燃焼試験を終えたものであったとしても、このロケットの打ち上げは今回が初めてだったため、予想外の異常が生じていた可能性もある。
もちろん、これ以外にも問題は考えられる。例えば双方のコミュニケーションに問題があったことなどだ。以前から打ち上げが延期されるたびに、ロシアは詳しい説明を行わず、韓国側が2段目ロケットの推進力を正確に予測できなかった。これが原因となって設計段階で問題が生じた可能性もある。
ここはぜひ,中央日報社説が述べるごとく,「失敗を大事な資産」とみなして,調査の結果,韓国側に責任があるとわかれば謙虚に反省し,未来の「完全国産ロケット」の打ち上げに成功してほしいと思います。
【社説】残念な羅老号の夢…失敗も大事な資産だ
全国民が息をのんで見守った韓国初の宇宙ロケット「羅老(ナロ)号」(KSLV-1)が目標軌道への進入に失敗した。教育科学技術部の安秉万(アン・ビョンマン)長官は、「打ち上げ後衛星は正常に分離されたが、目標軌道に正確に送り込むことができなかったと分析される」と明らかにした。羅老宇宙センターによると、羅老号は打ち上げ9分後に高度306キロメートルで科学技術衛星2号と分離しなくてはならなかったが、これより36キロメートル高い高度342キロメートルで分離したという。航空宇宙研究院の李柱鎮(イ・ジュジン)院長は、「衛星が目標軌道からどれだけはずれたのかは韓国とロシアの調査委員会が現在分析作業を進めている。科学技術衛星は独自の推進体がない」と述べた。
きのう羅老号が宇宙に打ち上げられる場面を見守った国民に突如伝えられた半分の失敗は残念なことこの上ない知らせだ。宇宙に向かう険しい道をいま一度実感した。しかし落胆ばかりしていてはならない。これまで初めてのロケット打ち上げに成功した国は特にない。宇宙先進国も最初の打ち上げの成功率は27%水準だった。なにより今回の半分の失敗が宇宙に向かう研究開発を萎縮させてはならない。李明博(イ・ミョンバク)大統領は「七転八起でだめなら八転九起の覚悟で宇宙大国入りを成し遂げよう」と述べた。安長官も「今回すべての打ち上げ過程を経験し、われわれには貴重な技術として帰ってくることは間違いない」と述べた。国民もみな同じ心情だろう。
羅老号はひとまず未完の夢として宇宙をさまようことになった。昼夜を忘れ羅老号に没頭してきた250人の研究員こそだれよりもつらいのは明らかだ。しかし気を取り直しもう一度力を出してくれることを願う。まず今回の事故の原因から正確に究明し、技術的欠陥を補完しなくてはならないだろう。われわれは9カ月後の来年5月に再挑戦に乗り出す。失敗に備えロシアと追加で2回の打ち上げ実験をできるよう協定を結んでいたためだ。われわれは2度目の打ち上げに向け科学衛星もすでに確保している。きのうの絶望を次の機会の完全な成功のための肥やしにしなくてはならないだろ。失敗も大事な資産だ。
われわれが進むべき道はまだ遠い。政府は2018年に純粋に韓国の技術だけでKSLV-2を打ち上げ、2020年には月探査軌道船を打ち上げることを目標にしている。2025年には月探査船開発まで計画している。こうした遠大な夢を思えばきのうのような部分的失敗が宇宙に向かうわれわれの歩みを止めることはできない。宇宙開発は政府の持続亭な支援と国民の全面的な支持がなければ不可能なことだ。今後も専門家の判断を信じ黙々と前進させるべき課題がわれわれの前に置かれている。
ただ羅老号プロジェクトでわきおこった「技術従属」の問題は乗り越えていくべき大きな問題だ。2006年にロシアと結んだ宇宙技術保護協定により先端技術はまともに移転を受けられず、打ち上げが延期されたり中止されるたびに国内技術陣はロシアだけを見つめる状況が繰り返された。一日も早く独自の技術を構築することが急務だ。ロシアに引きずられる姿をこれ以上見せないよう宇宙ロケットの開発と打ち上げ管理体系も全面的に手を入れる必要がある。
私の職場が技術系の職場のためか、当日は大いに、地デジの端末で会社でリアルタイムに盛り上がってました。
2段目の分離が成功した時点で、こちらのスタッフも「ロシアの技術者はほっとしているでしょうね。」なんていってましたので、一段目がロシア製なのは私の周囲の人間は皆しっていました。
しかし、残念ながら同じ時間帯にイヨンエさん(チャングム)の結婚発表があり、ネイバーの検索ランキングではそちらの方が常に上位でした。
(もし成功していれば途中から逆転してたかもしれませんが、、、)
で、二段目ってキックモーターですよね。あれって二段目って言うの?二つ目だから二段目かもしれんが。さらにキックモーターが固体燃料ってのも解せん。
詳しい人,教えてください。
>あぁさん
二段目,キックモーター,固体燃料…
申し訳ありませんが,専門的なことはまったくわかりません。
私も詳しい人にお願いしたいです。
http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=103200
キックモーターが「不燃材」ってのがよくわからんが、新しい攻撃兵器なのか?沖縄よりもオーストラリアが危ない。
日本の専門家は、匿名でも政治が絡むとあまり喋りません。自分の給料がどこから出ているのか,分かってないんでしょ。
第一報での「失敗」って表現は日本のマスコミの底意地の悪さの表れかと誤解してしまった。
まさか第2段が単なるキックモーターだったとは。
第2段噴射成功→キックモーターによる軌道投入失敗かと思い込んでたので。
フェアリングが外れないと失敗するって実質単段ロケットじゃないすかね、これ。
ペンシルロケットからはじめた日本と違って、いきなり衛星ってのがいかにも韓国らしいですね。
ま、日本もHⅡ系統(液体ロケット)はアメリカからの輸入技術が出発点みたいですけど。
しかし予算3000億ウォンってのはまだまだ小さいですけどねぇ。普通に外国に委託してもそのくらいふんだくられないかしら。
しかし韓国はこのまま極軌道衛星しか打ち上げないつもりですかね。今の射場だと日本本土を越えないと地球の自転速度を利用した打ち上げは不可能そうですが。
人家に墜ちなかったようで,幸いです。
(内容が専門的で,それ以上のコメントはできません。失礼)