犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

部隊鍋とナポリタン

2011-08-09 23:59:07 | 食べる

 先日、新大久保に韓国料理を食べに行きました。

 一緒に行った4人の中には韓国料理初心者もいて、見慣れないメニューを珍しがっていました。

 定番のサムギョプサル、チヂミ以外に鍋系も頼むことに。候補になったのは部隊鍋(プデチゲ)牛タコ鍋(プルラクチョンゴル)。私は部隊鍋を食べたかったのですが、多数決の結果、「牛タコ」を頼むことになりました。辛いのが苦手な人もいたので、相対的に辛くない「牛タコ」に票が集まったようです。

 プルラクチョンゴルというのは、プルコギ(火肉)というすき焼き風牛肉料理の中にナクチ(テナガダコ)を投入して鍋にした料理。名前もチャンポンです。

 そしてプデチゲというのは、キムチチゲの中に缶詰のソーセージやハム、そしてインスタントラーメンの麺をごった煮にした鍋料理。なぜ「部隊」という名前がついているかというと、かつて朝鮮戦争後に米軍が駐留していたソウルのウィジョンブ(議政府)やヨンサン(竜山)の近くで、米軍から横流しされた缶詰のハムやソーセージを在来のキムチチゲにぶちこんで食したのがその起源とされているため。

 どちらも韓国の代表的なB級グルメです。

 私が韓国駐在を始めたころ、当時のオフィスのそばに有名なプデチゲチェーン店(ノルブ)があったため、週一回はプデチゲを食べていました。値段は日本円にして一人前400円ぐらい。とてもおいしかったので、かねがね(これ、日本に専門店出したら当たるだろうな)と思っていました。

 帰国後、新大久保でプデチゲを出す店を何軒か発見しましたが、どうもそれほど人気を集めているようには見えない。理由はいくつか考えられます。

 まず値段が高いこと。3人前ぐらいの分量で3500円。ラーメンは別料金ですから、ラーメンを入れると一人当たり1200円以上になります。

 そして、材料。ソーセージやハムというのは、日本ではちゃんとした料理に入れるべきではないチープな食材というイメージがあるようですね。ソーセージ、ハムが主材料の鍋に3500円は出せないよなあ、と思う人が多いんじゃないでしょうか。

 話は変わりますが、最近、スパゲティーナポリタンというのを見なくなった。

 私が子どものころ、父が酒飲みで休日は一日中寝ていることが多かったので、滅多に家族で行楽という機会はなかったのですが、数少ない行楽に、「多摩川でボートに乗る」というのがありました。そしてボートに乗ったあと、乗り場のそばにあったしょぼいレストランで親子4人でスパゲティーを食べるというのが恒例になっていました。

 スパゲティーは2種類あって、もう一つはミートソース。当時はホワイトソースのスパゲティーなんかなかったし、ボンゴレだとかペペロンチーノだとかおしゃれな「パスタ」はなく、スパゲティーといえばトマト味。それもトマトソースなどではなく、ケチャップ丸出しの味付けでした。

 ミートソースは挽き肉入り、ナポリタンはソーセージ入り。私はナポリタンのほうが好きでした。

 そして飲み物はクリームソーダ。色鮮やかな緑色の合成着色料にバニラアイスの白の対照が「非日常」の雰囲気を醸し出していました。

 そういえば、クリームソーダも最近は見ないなあ。

 ナポリタンの人気がなくなったのも、具の主材料がソーセージであることに原因があるような気がします。

 日本が高度経済成長を経て、味の面でも「本格指向」が強くなった結果、スパゲティーにも「本場」を求めるようになってきたと思われます。調べてみると、「ナポリタン」はイタリアのナポリとは関係のない、日本生まれのスパゲティー。作り置きした、アルデンテとは無縁な麺に、チープなソーセージ、チープなアメリカ式ケチャップで味付けをしたナポリタンは、次第に人気を失っていきました。

 本場のパスタやインド式本格カレーもいいけれど、私はときどきナポリタンとかジャガイモ、ニンジンの入った黄色い日本式カレーが食べたくなります。駐在時代に親しんだ部隊鍋が食べたくなるように。


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