押川春浪(おしかわしゅんろう)
と 同じく、
戦前モダニズムの流れをくむ
ミステリー作家・よこみぞせいし(横溝正史)の短ぺん(編)に、
『空蟬処女』
というのがあります。
よこみぞ(横溝正史)なのに、ミステリーじゃない
しかも、セミが出てきて
のですが、
かの大作家の、記念すべき金田一シリーズ・一作目『本陣殺人事件』の
言ってみれば、着想の原点にある・旧家のお話
なので
けいい(敬意)を表して
取り上げたく 存じます
場所は、岡山県、時は、終戦直後・・
という、
「横溝定番」のセットの中に 広がる、
世にも美しい女性の素性をめぐる物語
は、
これといった・ストーリーてんかい(展開)もない、
淡々とした
口伝のごとき・短文なのですが、
作者(横溝正史)があいした、
岡山県の景色の美しさ、
品のよ
ぼうとう(冒頭)数ページに きらめいていて
ステキです
「 今宵は中秋の名月である。
そして新聞のつたうるところによると、今日はあたかも二百二十日
しかし、天われら日本人をあわれみ給うた
まったくお誂え向きのおだやかな中秋名月
から始まって、
宝井其角の「名月や畳のうへに松の影」という
句につながっていく
日本語のたしかさ
さすが昭和の作家・・。
そよう(素養)のちがいを
かんじます
小説の核にいる「謎の美女」は、くうしゅう(神戸大空襲)で
たいへんな目にあい
ぬけがら(頭が少し脱け殻)に なってしまった。
だから、
「空蝉処女(おとめ)」と いうのですが、、
「 戦争の時は、日本全国にこんな哀れな女たちがいたことを一筆のこしておきたかった。」
・・そんな、大作家の気持ちが 伝わって来ました
【おすすめ度: ストーリーがあまりにシンプルすぎるので、】
(※次回「蝉の鳴く小説特集」は、『源氏物語』に出てくる、あの女人(空蝉)を、とりあげます「うつせみ」って言ったら、あの人ですよね)