クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

桜ふる小説・2(太宰治『桜桃』感想)

2022-03-26 | 本と雑誌

 戦前の教よう(養)人にとって、ロシア文学は

「一種のバイブル」だったようですが・・、

中でも、

チェーホフに ドはまりして

『桜の園』を下じきにした小説まで書いたのが、

だざいおさむ(太宰治)です。

(※太宰治は、『斜陽』の中で、
没落華族の女性に自分と思われる主人公に宛てたラブレターを書かせ、「マイ・チェホフって言わせるかぶせよう・・)

 そして、今回とりあげる太宰作品『桜桃(おうとう)』
にも

やはり、

チェーホフは、オーバーラップしています。🌈

 



~『桜桃』出だし~

「私は家庭に在っては、いつも冗談を言っている。

それこそ『心には悩みわずらう』ことの多いゆえに、『おもてには快楽』をよそわざるを得ない、

・・いや、家庭に在る時ばかりでなく、私は人に接する時でも、心がどんなにつらくても、からだがどんなに苦しくても、

ほとんど必死で、楽しい雰囲気を創ることに努力する。」

 いつも後ろ向きで、ぜつぼう(絶望)的な太宰にしては、

がんばっているかんじです。

 

・・・・・

太宰治があこがれた・チェーホフ

は、

びんぼう(貧乏)家庭に育ち、苦労したそうですが、

 ネクラ(根暗)にな
らず、いつも 家ぞくをはげまし

未来を信じて前に進もうとするつよさを 失わなかった

って ききました。

(そういえば、小説の中にも、前向きな青年が出て来ます

『桜桃』の出だしで「自分、努めて明るくしてます

と宣言した、太宰治・・。

(走れメロスに通じる陽の部分が出たのかな?)

こっちも元気に 読みすすめたのですが・・

 そこから5行くらいで、いつもの暗い「太宰節」が、

シャッて出て来て だまされました。。

 (以下要約)


明るい態度は「あえて」なのに、
人々はそれに気がつかない。
それどころか「軽薄だ」とさげすむ。
いや、それより、
人々が気づかないどころか、
妻ですら、
気がつかない。

オレがこんなに苦しんでいるのに、、

 彼のごとき、めんどくさい「破滅型男」に

かかわりたくない

クリンたちには、

この私小説について

的をいたかんそうは、述べられないでしょう・・。

 でも、この『桜桃』には、この作家の心の真ん中の部分が

したためられており、

 

読者は、そこから血が流れるさまを、はっきりと見ることが できます

 彼の命日に「桜桃忌(おうとうき)」の名がついた理由が

この本を読んで、

とてもよく わかりました。

 

 

【おすすめ度:

 

 

(🐻おうとう(桜桃)って、サクランボのことでした~桜小説じゃなかったですね今さらだけど・・

※次回は、同じく太宰治より、『葉桜と魔笛』という、奇跡のステキ小説をとりあげます

 

 

コメント (10)
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