閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「でんしゃがくるよ!」重版

2013-03-21 16:04:37 | お知らせ(いろいろ)

 

この絵本のことは以前にも書いたことがありますが(ここ)、
イギリスの絵本の翻訳で、1998年に出版されたもの。
長いこと版元品切れ状態がつづいていたのですが、
このほど久々の重版で、ご購入いただけるようになりましたので、
あらためてご紹介を。

土曜日に、お父さんと自転車に乗って、あの橋まで。
なんといっても、この「楽しみ方」が素敵。
澄んだ空気。期待感。臨場感。スピードと静けさ。
さらっとしたきれいな色調の絵は、電車の好きな男の子だけでなく、
女の子やおとなの方にも受け入れられるのではないかと思います。
扉の献辞に「でんしゃのすきなこどもたちに」とあるのは、
原文では
"To Little Trainspotters"
となっており、これは、ただの「すき」というのより、
もうちょっとだけ「マニア」な雰囲気ですね。
(訳せてないです。スミマセン)


歩道橋の上に立って、下を通る電車を待つ。
わたしにも経験があるので、この感じ、すごくよくわかる。
ただし電車ではなく・・ダンプトラックで。

小学生のとき、家から歩いて数十分のところに
画家さんご夫婦が開いているお絵かき教室があって、
毎週土曜日の午後に通っていました。
最初はひとりだったのですが、やがて近所に住む
S君、Nちゃん、Aちゃんの3兄妹が加わり、
一緒に遊びながら行くようになりました。

途中に大きな川があり、橋を渡らねばなりません。
橋の下の河川敷はダンプ専用道路になっていて、
巨大なダンプトラックが、砂埃をまきあげながら、
朝から晩まで行ったり来たりしていました。
川をはさんで、こっちが下り線、あっちが上り線。
下りは土を満載したダンプ。上りはからっぽのダンプ。
山を削って海を埋め立てる長期工事がおこなわれていたのです。

「ダンプとび」という遊びを最初に思いついたのは誰だったかな。
みんなで横一列に、橋のてすりにつかまって、
ダンプがやってくるのを待ち構えるのです。
そして、足の下をぶおっと通過する瞬間に、ジャンプ!
突進してくる猛牛をひらりと飛び越えてかわす気分。
待っているあいだのわくわくと、ぐんぐん迫ってくるダンプの重量感と、
タイミングが合って「うまく跳べた」ときの気持ちよさは
他のどんな場所でも味わえないもので、
もう1回! あと1回だけ! 次に青いダンプが来るまで!
などといっているうちに時間はどんどん過ぎていき、
帰りがうんと遅くなって叱られたこともありました。

埋め立て工事が完了したのは、その町を離れてずっと後、
わたしがおとなになってからでした。
埋め立ててできた人口の陸地は立派な町になり、
削って平らになった山のほうにもびっしりと家が建ち並び・・
どこかにいまもあるかしら、「ダンプとび」のできる橋が。

 

でんしゃがくるよ!
シャーロット・ヴォーク/作・絵
竹下文子/訳
偕成社 1998年 

 

コメント
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