遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

幹山伝七作 磁胎七宝目出度尽紋煎茶碗(4客)

2024年11月20日 | 陶磁胎七宝

先回に引き続き、磁胎七宝です。今回は、煎茶碗4客です。

口径 6.5㎝、底径 3.3㎝、高 5.1㎝。重 66g。明治時代。

器の外側には、泥七宝で細かな模様が施されています。

地は、京都粟田系の陶胎七宝で一般的であったハート形模様で埋め尽くされています。器が小さい分、ハート形も小さいです。

主模様は、吉祥紋の巻軸。

そして、鉤型の宝鑰(ほうやく)です。

他の幾何学紋も、丁字(ちょうじ)や七宝紋といったお目出度いものが散りばめられています。

器の表面は、陶胎七宝に較べて滑らかです。

底銘は「大日本幹山製」。「幹山」は、京都の名工、幹山伝七の銘です。幹山伝七は、京都で、初めて磁器を生産した人でもあります。大日本とあるのは、輸出を意識していたのでしょうか。その幹山が、いち早く、磁器のボディに七宝を施した磁胎七宝を製作した事も興味深いです。

手にとると、実直な人柄であったという幹山伝七の心意気が伝わってくるような気がします(かろうじて、左指で持てるようになりました。まだ全体が腫れている(^^;)

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磁胎七宝草花紋大茶壷

2024年11月18日 | 陶磁胎七宝

ここしばらく書画が続きましたので、少し趣向を変えて、骨董に移ります(^.^)

磁胎七宝の大茶壷です。

幅 14.0m、高 17.6㎝、重 1216g。明治時代。

この品は、中国製として売られていました。

それまで集めていた陶胎七宝と少し違うけど、まあいいか。底銘も、何となく中国風だし。中国でも同じような物が作られていたとして、参考にゲットしておこうと考え、そのままになっていました。

ところが、その後、この品をよく見ると、陶器ではなく、磁器に七宝処理が施されているではありませんか。しかも、底銘は、「松岡」と読めなくもない。「松岡」は、明治期に多くあった輸出陶磁器の業者の一つです。

そんなわけで、これまで集めてきた陶胎七宝の兄弟分を発見し、そちらにも目を向けだした次第です。

七宝釉は、陶胎七宝と同じく、泥七宝です。

茶壷の胴には、桔梗と、

芙蓉?の花が、大きく描かれています。

側面は、幾何学模様。

肩や、

下側面も、幾何学模様。

蓋には、レトロモダンな模様が施されています。

明治、大正時代の絵ハガキを見るかのようです。

以前に紹介した「陶胎七宝花鳥図茶壷」と並べてみると、器形や模様の配置はよく似ていますね。

右の品「陶胎七宝花鳥図茶壷」は、その銘「安田造」から、京都粟田系の品と判断されます。

では、今回の品、底銘「松岡」は、どこの産地の物でしょうか。

 

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陶胎七宝小急須

2024年08月09日 | 陶磁胎七宝

今回の品は、陶胎七宝の急須です。

小形ですが、ズシリと重い品です。

 

 

 

 

 

横 (注口、把手含む) 11.3㎝ 、底径 7.2㎝、高 6.5㎝。重 208g。明治初。

 

本体:胴径 6.5㎝、底径 7.2㎝、高 4.9㎝。重 123g。

蓋:径 5.0㎝、高 2.1㎝。重 85g。

古い金直しがあります。

七宝釉は、これまでの品と同じく泥七宝の色釉です。

しかし、地の植線はハート形ではなく、雲?のような不思議な形です。

また、胴には、花のような幾何学模様が大胆に配置されています。

 

この主模様も、これまでの品には見られないパターンです。

そして、今回の品の眼目は、これ。

窯疵を色釉で分厚く塗って覆い、焼成してあるのです。

これは、まるで、古九谷ではありませんか。

分厚く重い銀の蓋には、

作者の銘が、ドーンと入っています。

以前紹介した陶胎七宝四方香炉は、もともとの茶器の蓋が破損したため、唐木で蓋を作り、香炉に仕立てた物でした。

今回の品も、陶器の蓋が壊れ、銀の蓋をしつらえたのでしょうか。

どうも私には、初めから銀の蓋の陶胎七宝急須として作られたように思えてならないのです。

おそらく、趣味人が、自分用に作らせたのでしょう。

これまで紹介してきた19個の陶胎七宝のうち、美術的にもっともすぐれた品は、今年1月に紹介した陶胎七宝蝶紋コンポートです。

しかし、私が一番にしているのは、今回の品。

今度は、この急須で、お茶を淹れてみます(^.^)

 

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陶胎七宝草花蝶紋把手付蓋物

2024年08月07日 | 陶磁胎七宝

陶胎七宝の把手付蓋物です。

 

 

 

胴径 12.9㎝、高台径 7.2㎝、高 10.3㎝。重 438g。明治初。

クリーム色の陶土に泥七宝の典型的な陶胎七宝です。

ハート形植線で地を埋め、草花と蝶紋を煌びやかに配置しています。

京都錦光山系の作品ですね。

把手も含め、蓋の装飾が特に見事です。

桃形の把手は、七宝ではなく、色釉で彩色されています。

蓋に較べると、胴は地味です。

蓋のような草花蝶紋ではなく、幾何学模様が主です。

以前のブログで、陶胎七宝草花蝶紋蓋物を紹介しました。

今回の品と非常によく似ています。

二つを並べてみると、把手を除けばウリ二つ。

本体(胴)を交換しても、わからないほど(^^;

ヨーロッパでは、宝飾品入れにでも使われたのでしょうか。

私なら、お菓子入れ(^.^)

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陶胎七宝沈香壷

2024年08月05日 | 陶磁胎七宝

少し寄り道をしました。陶胎七宝に戻ります。

陶胎七宝の沈香壷です。

陶胎七宝としては、大型の品です。

蓋の上には、沈香壷に定番の獅子が鎮座しています。

大きな窓絵の草花蝶紋が前、後ろに配置され、サイドは幾何学紋になっています。

胴径 16.4㎝、底径 9.0㎝、高 35.4㎝。重 1360g。明治初期。

18世紀、ヨーロッパへの輸出品の花形であった伊万里焼の沈香壷を、明治初期、陶胎七宝でリニューアルした物といえますね。

蓋と本体に分かれます。

クリーム色の素地や地を埋めるハート形の植線などからして、これまで多く紹介してきた京焼系の品であると推定されます。

蓋の把手(獅子以外)は、陶胎七宝です。

獅子は、色釉で彩色されています。

 

蓋の内側にも釉薬がかけられています。

一方、本体と接する部分は、無釉です。

蓋と同じく、本体の内側には上釉がかけられていますが、蓋と接する部分は無釉です。

本体の首と肩は、幾何学模様で装飾されています。

胴の窓絵は二種、いずれも草花に蝶の模様です。

サイドは、花の幾何学模様。

陶胎七宝沈香壷が、かつての伊万里焼にならって、ヨーロッパで再び人気を博したかどうか、定かではありません。ただ、明治初期に輸出された陶胎七宝のうち、沈香壷は珍しい部類に入ります。ということは、それほどの数は作られず、人気の輸出品ではなかったと思われるのです(^^;

 

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