遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

陶胎盛上色絵幾何学紋小花瓶(一対)

2024年08月03日 | 陶磁胎七宝

今回の品は七宝ではありません。七宝風色絵陶器とでも呼ぶべき品でしょうか。

裏と表は同じ模様です。

サイドの模様が、二つでわずかに違います(右には赤〇がない)。

 

 

口径 1.8㎝、胴径 4.4㎝、底径 3.0㎝、高 12.2㎝。重 105g(1個)。明治ー大正。

小さな一対の花瓶です。

陶胎七宝のものと同じ、クリーム色の陶土が使われています。

全面に分厚く色釉が塗られています。

このような色釉は、先回の陶胎七宝鶴首花瓶はもとより、錦光山系の色絵陶器や万古焼など、明治期の輸出向陶器に多く使われました。

 

 

しかし、その使われ方は、草花の絵付けなど、ポイントを強調するためのものです。それに対して今回の品は、地も含め、同じような色釉が、全面に使われています。しかも、模様の輪郭を彫り込んでいます。七宝で金属植線による縁取りの代わりでしょうか。これらの事を勘案すると、この品は、陶胎七宝を意識して作られたと思われるのです。

実のところ私は、ネットオークションの写真をチョッと見しただけで、陶胎七宝と思い込み、落札しました(^^;

手に収まるほどの可愛らしい花瓶です。

先日のブログ、陶胎七宝鶴首花瓶に対して、みことさんからコメントをいただきました。「以前NZ人の高齢女性から、violet vaseなる、スミレ用花瓶の話を聞きました。」「花瓶の口の狭さで花を盛るように活ける小さな花瓶のことを指すようです。」「この大きさは過去のものらしく、「なかなか見つからない」ということでした。そして、陶胎七宝鶴首花瓶がviolet vaseに相当するのではないかとのコメントでした。

鶴首花瓶もいいですが、あまりに口が狭く、水の出し入れなどが大変です。むしろ、今回の品の方が、violet vaseにふさわしいのではないかと思いました。

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陶胎七宝花蝶紋中皿

2024年08月01日 | 陶磁胎七宝

今回は、陶胎七宝の中皿です。

これまで見てきたように、陶胎七宝のほとんどは、袋物のような器です。平面的な皿は稀です。その理由ははっきりしません。推測するに、明治初期に輸出する際、諸外国で室内に飾れる器を優先させたからだろうと思われます。立体ものであれば、そのまま置いて様になります。ところが、皿だと立てなければなりません。しかも、そこそこの大きさでないと、飾り映えがしません。そんなわけで、皿の類が少ないのだろうと考えています。

今回の品は、その少ない皿の一つです。

 

 

口径 19.7㎝、高台径 10.1㎝、高 2.6㎝。重 432g。明治初期。

以前に紹介した陶胎七宝小皿と同じく、半陶半磁の胎土です。今回の品の方が、もう少し磁器がかっています。

釉薬は、通常の磁器の釉薬とほぼ同じです。

ズシリと重い皿です。

高台の内側に、微細な砂が付いています。

全面に、細かいジカンがびっしりと出ています。まるでひび焼きのようです。

表面は大きく3つに分割され、それぞれに、花々と二匹の蝶が泥七宝で表されています。

地は、ハート形の植線でびっしりと埋められています。これは、京都錦光山の陶胎七宝の特徴です。ただ、土はかなり異なります。このような品も、京都で作られたのでしょうか。

外周は鍔状になっていて、ここには七宝が施されていません。かわりに、色釉で分厚く、花が描かれています。

右側の白い花の真ん中は、白く凸凹になっています。

これは疵か?

と思い、他の花を見てみたところ・・

貝のような模様になっているではありませんか。

これは、花芯を表しているのですね。

なかなかに芸が細かいです(^.^)

色目もはなやかだし、これなら、ヨーロッパの小部屋を飾るのに良い品だったのかもしれません。

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陶胎七宝草花紋四方香炉(茶心壷)

2024年07月30日 | 陶磁胎七宝

今回の品も少し変わった陶胎七宝です。

 

 

 

幅 9.3㎝、奥行 9.3㎝、高 11.0㎝(四角部, 7.6㎝)、重 461g。明治初期。

クリーム色の薩摩系陶土で、四方形の壷が成形され、表面に泥七宝が施されています。

側面が絵違いの草花紋になっています。

 

 

菊:

桔梗:

菖蒲:

不明花(^^;

地を、ハート形の植線で埋めているので、錦光山系の陶胎七宝でしょう。

特筆すべきは、器形です。ボディは、轆轤を使わずに立方箱を作り、轆轤成型した口を付けています。

内側は施釉されていますが、口の外側はには釉薬が掛かっていません。

これは、蓋の受けですね。元々は、陶磁器の蓋(おそらく泥七宝)をするようになっていたと思います。

その蓋が破損したか、失われたのでしょう。

そこで、紫檀で蓋をしつらえて、香炉にしたのだと思われます。

じゃあ、もともとは何だったのか?

これは、蓋つきの茶壷として生まれてきたのではないでしょうか。

ずっと以前に紹介した陶胎七宝花鳥図茶壷と並べてみました。

ちょっと蓋を拝借すれば、

何とか様になりました(^.^)

やはり、煎茶用の茶心壷(茶壷)でしょう。

丸筒形が一番多いですが、なかには、六角筒形、そして、まれではありますが、今回のような四方形の茶心壷があります。

その意味では、今回の品はマニアック(^.^)

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陶胎七宝草花鳥紋鶴首花瓶(1対)

2024年07月28日 | 陶磁胎七宝

今回の品は、鶴首花瓶(瓶子?)1対です。

先回の小皿と同じく、類例の少ない物です。

同じ模様(逆向き)の鶴首花瓶、2本です。

口径 1.3㎝、胴径 5.8㎝、高台径 3.3㎝、高 11.6㎝。重 110g(1個)。明治初期。

軟陶で、胎土はクリーム色の陶土、やはり薩摩系でしょうか。

草花と鳥が泥七宝で描かれています。これまで多く紹介してきた錦光山系の七宝模様とは、少し異なるようです。

鶴首は、2パターンの幾何学模様が施されています。

一方、胴には、鳥、

鳳凰、

草花、

そして、草花(?)が描かれています。

底には、色釉で謎のドット。しかも、二個ともに。まさか、疵を隠すためではないでしょう(^^;

ん!?、もしかして・・・

ドットを合わせてみると・・・・

二羽の鳥が向き合っています。

反対側は、

鳳凰も向き合い。

どうやら、二個の花瓶を置く時の目印のようです。

これは、明らかに、西洋人を念頭にしていますね。

この鶴首花瓶も、輸出向けの品だったのでしょう。

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陶胎七宝波千鳥紋小皿(5枚)

2024年07月26日 | 陶磁胎七宝

陶胎七宝の小皿、5枚です。

模様にわずかの違いがありますが、すべて波千鳥紋です。

 

口径 10.7㎝、高台径 5.5㎝、高 2.3㎝。重 111g。明治初期。

胎土は、これまで紹介してきた薩摩系の土とはことなり、くすんだクリーム色の半陶半磁の陶土です。

裏面には、非常に細かいジカンがびっしり見られます。

高台は付け高台、内側には所々に細かい砂が付着しています。

外縁に2本、高台付近に2本の圏線が、くすんだ色の呉須で描かれています。このように染付けを併用した陶胎七宝は、初見です。

どこで生産された品か、全く見当がつきません。

七宝部を見てみます。

やはり、これまでの京薩摩、錦光山系の陶胎七宝とは異なるようです。

外周を、幾何学模様でぐるりと囲み、中央に波千鳥紋を描いています。白で千鳥、岩、波しぶき(白〇)を、青で海、波しぶき(青〇)を表しています。

中央右下には、ぐるっと囲んだ黄〇が途切れて、波が押し寄せている様子が表されています。芸が細かいですね(^.^)

七宝釉の入ったヒビと金属植線の模様が呼応しあって、面白い効果を出しています。

顕微拡大してみます。

岩(白)に丸いしぶき(青)。

千鳥の下の部分。

植線は、青の海にまで伸びています。

氷裂模様のようです。海は、このような模様で埋まっています。何でもないようにみえる模様ですが、植線で、きちんとした形ではなく、不定形模様を表すのは非常に難しいです。

大変毛色の変わった陶胎七宝です。

小さなわりに手が込んでいる・・・・輸出品ではなく、国内向けの品でしょう。

コメント (4)
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