能の話が続いたついでに、能関係の工芸品を紹介します。
まず、定番の陶磁器です。
陶磁器の絵付けのなかで、能や謡曲はマイナーです。
骨董市でよく目にするのは、謡曲(特に、高砂)を独特の書体で描いた盃などの九谷焼の陶磁器です。
が、ぞんざいに扱っていたので、行方不明になってしまいました(笑)。
やむなく、手の届く範囲でごそごそ探しまわり、能・道成寺にちなんだ陶磁器の皿を揃えてみました。
その多くは京焼です。
1.吉向焼 謡本・道成寺懐石皿
15.5x20.5cm 明治~昭和
鐘の上に咲いているのは、桜です。
♪春乃夕暮れ来て見れば 入相の鐘に花ぞ散りける♪
左下部に、小さく「吉向」の印があります。
2.河合栄忠画、粟田焼 道成寺稜花皿
径15cm 大正元年
♪~思へばこの鐘恨めしやとて~♪
道成寺の見せ所(前場)。女が鐘に入らんとする、緊迫した様子が良く表現されています。
やはり、プロの絵師による絵は、他の皿とはかなり異なります。
3.清水焼 道成寺小皿
径10.7cm 大正~昭和
皿に能の曲名が書かれているので、わかりやすい皿(道成寺前場)です。が、むしろ、書いてない方が、余韻が感じられます。
清水焼と粟田焼の違いは、はっきりしませんが、やや磁器がかった陶器です。
4.楽焼き 謡曲・道成寺四方皿
12x12cm 大正
道成寺、謡曲の本文の一部(前場)と鐘が描かれた楽焼きの四方皿です。
このパターンの桐製四方菓子皿が古くからあるので、それを模した物かもしれません。
5.粟田焼 能・道成寺吸物碗
高7.2cm 昭和(戦前)
小型の吸物碗です。五客、共箱のうちの一個です。
蓋を取ると、鐘、般若面、打杖が現れ、女が蛇に変身したことがわかります。
6.粟田焼 道成寺湯呑み
高4.3cm、径8.3cm 明治~大正
能絵付けの湯呑み 10客(絵違い)のうちの一個です。
道成寺前場のシテ、鐘だけでなく、曲名も描かれています。