銅打出しの水注(薬缶)です。
幅15㎝x奥13.5㎝x高12.8㎝、重 522g
銀象嵌と装飾が、びっしりと施されています。
底は、別の板(黄銅)を付けてあります。
胴部と蓋は銅、取手と底は黄銅です。
いろいろな部位に、装飾板が打ちつけられています。
この水注の一番の特徴は、銀象嵌です。
古い中国画題の「太古石と牡丹」が、ダイナミックに表現されています。
反対側には、漢詩が象嵌されています。
「江山到處播清香」
蓋に「清茶味」とありますから、この水注は、煎茶用でしょうか。
今回のブログの水注は、槌目、装飾、色つやなど、銅蟲の技法に非常によく似ています。
しかし、これが銅蟲だろうか、と決めかねています。
その理由は二つ。
まず、太古石‐牡丹の図柄は、日本の伊万里にもまま見られますが、これだけ本格的に描かれる例は少ないと思います。漢詩もふくめて、中国本家のような気がします。
それから、銀象嵌です。先のブログのように、銅蟲では、鍍銀を巧みに使って、まるで銀象嵌のような効果を出しています。しかし、今回の品は、本物の銀象嵌です。銀板を嵌め込んでいるので、強く磨いても、地肌が透けてくることはありません(^^;)
中国物か日本の伝統工芸品、銅蟲の優品か迷うところではありますが、いずれにしても、コロナで閑になった今、風雅な煎茶文化を、もう一度見直してみたいと思います。