遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

金工9 古銅寿老人鹿のったり香炉

2020年04月25日 | 金工

古銅の寿老人香炉です。

     幅 23.6㎝x奥 11.8㎝、高 20.5㎝、重853g。

 

寿老人は、中国宋の時代の伝説に由来し、七福人の一人といわれ、長寿をもたらしてくれると言われています。

 

寿老人は、南極星の化身で、寿命は1500年。雄鹿を従え、手には、杖、扇子、桃などをもっている姿が一般的です。老子の化身ともいわれます。

 

この鹿は、玄鹿とよばれ、長寿の象徴とされ、その肉を食べると2000年の寿命を得るとか。

 

香炉ですから、煙が出る穴があります。

ん、右肩のこれはハート?

寿老人は、男女の間にも福をもたらす粋な老人?(^^;)

 

この品物には、もともと漆を塗ってあったようです。ほとんどはげ落ちていますが、このような品は、非常に珍しいと思います。

 

もう一つ、古銅寿老人鹿騎香炉がありました。

  幅 24.7㎝x奥 9.8㎝、高 23.3㎝、重 840g。

 

先の寿老人香炉と非常によく似ています。

 

鹿の表情も写実的。

 

煙出しの穴は、大胆にあけられています。見方によっては、寿老人がもう一人(^^;)

 

同じような香炉を、二つもそろえてしまいました。

いかにも抹香臭い(実際、相当匂います)古ぼけた品が、骨董のようなオヤジが座っている後ろの棚にポツンと置いてある。

これは既視感ではなく、その昔、高校生の私が、どういうわけか、一軒の古道具屋にまよいこんだ時の光景です。

今や、オヤジのかわりに店番をしていてもおかしくない(^^;)

この寿老人、左手に何かをもってそれを見つめています。持ち物と言えば、杖か桃ですが、桃にしては小さい。カットされた桃でしょうか(^^;)

 

もう一つは、賢者の風貌、老子でしょう。

この二つ、非常によく似ていますが、手で持った感触が違います。上の方は、たなごころに優しいのです。微妙なこの感覚は、銅器を評価する場合、必須です。陶磁器でも同じようなことが言えますが、銅器の方が違いがはっきりとわかります。風化、手ずれなどで、古い物はまろやかになっているのです。

老子寿老人香炉はおそらく、明治の品でしょう。一方、布袋頭の寿老人香炉は、それよりずっと古く、唐物の可能性もあります。

 

広い見識と仁徳を備えた寿老人。長寿だけでなく、円満、壮健、厄除けの神でもあるそうです。

故玩館でも、ずーと日陰者扱いだった寿老人。遅まきながら、玄関と床の間に、一体ずつ鎮座していただきました。

コロナ禍の今、この世に福をもたらして欲しいものです。

 

 

コメント (2)
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