金工細工の小皿です。
時代は、明治。
径 12.5㎝
農村風景を表しています。
非常に細かい細工がなされています。
裏面です。
三個の小さな足がついています。
用途は、置き(ペン?)皿でしょう。
表側ほど詳細ではないですが、田舎風景が表されています。
どうやら、表と裏、2枚の金皿を合わせて作られているようです。
徳川の時代が終わり、明治維新となって、刀、鎧、兜など武具の需要がなくなり、鋳物師、彫り師などは、職を失ってしまいました。
そこで彼らは、身に着けた技能を生かし、外国向けの金工細工をつくるようになりました。この産業の起こりは、廃刀令の翌年、明治10(1877)年といわれています。ほとんどの品は輸出されました。本品も、その一つでしょう。
近年、明治時代の工芸品、特にその超絶技法に関心が高まっています。しかし、この手の品は、それほど上等な物ではありません。いわば、B級品。図録にも載っていません。
材質は、アンチモニー合金だと思います。ということは、鋳型です。
馬の尻毛部(拡大)
しかし、馬の細かな毛並み、手綱の交差具合、立体感など、打ち出しや彫金によって作られているように見えてしまうほど、高度な鋳型を用いています。
名もない職人たちが、もてる技能のすべてを注ぎ込んだかのような金工細工。明治という新しい時代の息吹が感じられます。