これは一品!蝿生け捕り器
おどろおどろしい仮面、かわいい縮緬細工や背紋に続いては、いよいよ面白グッズの登場です。
写真のように、故玩館には、わけのわからない物がワンサとあります。いずれもいわく付きの品。それこそ、故ある玩物です。
好きな人は、このコーナーの前で何時間もねばります。ガラクタだけれどもおもしろい、憎めない、笑える・・・
トップバッターはこれ、蝿生け捕り器。骨董市で、時計を扱う店にありました。
故玩館の面白グッズの中でも一番人気です。とにかく、動きのある物はつよい。
ゼンマイを巻くと、四角い筒がゆっくりと回ります。2回もまけば、15分以上、ジリジリ音をたてながら動きます。
筒の表面に、酢や砂糖入りの酒を塗っておきます。匂いにつられて蝿がとまり、夢中でなめているうちに、気がつくと後ろの網籠の中にトラップされてしまうというわけ。
大正8年、尾張時計製造会社製、専売特許。売価は不明ですが、出荷値が10台で40円弱ですから、1台10円くらいで売られていたのでしょう。
当時の貨幣価値は、今の500-1000倍といわれていますから、結構な贅沢品です。
蝿をとるだけなら、蝿取りリボンやガラス製蝿取り瓶の方がはるかに安価です。
なぜこんな品が作られたのでしょうか?
生きた蝿がミソ
この装置のポイントは、生け捕りです。生きた蝿をつかまえることができる。
明治後期から大正、昭和初期にかけて、日本では、小鳥を飼って、その鳴き声を競う、鳴合(なきあわせ)が流行しました。特に、金持ちの間で熱狂的な競争がなされたそうです。
鰊御殿で有名な北海道のある大金持ちが、愛鳥のカナリアのために専用の列車をしたてて東京へ運んだほどです。ずいぶん以前、ラジオ番組『小沢昭一の小沢昭一的ココロ』で紹介されたお話しです。
美しい鳴き声にするには、良い餌、生き餌が一番・・・・で、この蠅取り器が活躍となったのでしょう。
ネーミング大賞、ハイトリック
この蠅取り器具の日本名は、「蠅獲器」なのですが、商品名は『ハイトリック』。「蠅をとる」と「高度な仕掛け」とをかけています。今なら、ネーミング大賞まちがいなしでしょう。
この器具は輸出もされていたようで、商品名は、「AUTOMATIC FLY TRAP」。
なかなか気の利いた会社ではないでしょうか。
不思議な柱時計
実は、故玩館には、もう一つ、尾張時計会社の品があります。変わり八角柱時計です。
変わり八角柱時計
不良品でもハンパ物でもありません。れっきとした製品です。ゼンマイを巻けば、一週間、時を刻んでくれます。ボンボン時計ですが、時刻と打刻がずれるのが玉にきず。後は文句なし。明治の品が、けなげに動いています。
この時計を見て、八角部分をぐっと動かして、まっすぐな柱時計に戻そうとした人がいました。当然、ビクともしませんでしたが。
何故、こんな時計を作ったのでしょうか?とにかく、遊び心にあふれた会社ですね。
戦後すぐには、金魚時計(幻の品)なども製造しました。
技術力を生かし、今は、精密機器メーカー、尾張精機株式会社となっています。
追記
実は、この蠅取り器を買ったとき、オマケがついてきました。魚釣りをしている老人です。
この老人、蠅取り器の上に鎮座し、ゆっくりと回る筒に釣り糸を垂れていました。店主は、うれしそうにそれを見て、どうだ!と言わんばかりの得意顔でした ・・・・・・・・・・・・ あのヒゲの店主、尾張時計会社と同じくらい、遊び心がある。
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