ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

佐久市長が産科対策で広域連携構想 (信濃毎日新聞)

2007年03月11日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

群馬県や山梨県の病院に、他県からの産科救急患者を受け入れるような余力が残っていれば、佐久市長の「構想」も実現の可能性があるのかもしれません。

しかし、現実には、群馬県や山梨県も、産科医不足で周産期医療はかなり危機的な状況に陥っていて、自県内の救急車の受け入れだけでも精一杯の状況にあり、他県からの産科救急患者を受け入れるような余地はほとんどないのではと考えられます。

まずは、広域医療圏の中である程度は医療を完結できるように、地域内での連携を強化してゆく必要があると考えられます。

さらに、広域医療圏内で対応できない重症例については、県内の3次医療機関(信大、こども病院)にできるだけ早く搬送できる態勢(ヘリコプター搬送など)を整え、可能な限り、県レベルで医療を完結できるような体制を目指してゆく必要があると思います。

****** 信濃毎日新聞、2007年3月10日

「高速道を病院の廊下に」 医師不足・・・群馬側と広域連携 佐久市長が「構想」

 佐久市の三浦市長は9日、「高速道を病院の廊下に」とのキャッチフレーズで、医師不足の産科や小児科の救急・重篤患者を上信越道で群馬県の病院に運ぶ広域連携構想を明らかにした。「一病院ですべて対応できる時代ではない」として機能分担も図りたい考えだ。

 構想に重要な救急車の速度制限引き上げを求めて、14日に冬柴国土交通大臣と面談する予定。「山梨県の病院との連携に向け、中部横断道の早期全線建設も求める」としている。

 三浦市長によると、救急車の制限速度上限で上信越道を時速100キロ、一般道を時速80キロで走行したと単純計算。佐久インターから前橋市の群馬大病院までは57分、公立藤岡総合病院(藤岡市)までは44分、公立富岡総合病院(富岡市)までは36分で到着できるとした。同じ計算で、松本市の信大病院へは65分かかると試算。三浦市長は「信大に運ぶより群馬に運ぶ方が早い」と述べ、県の枠組みにこだわらない姿勢を強調した。構想実現に向け、今後群馬側の病院に呼び掛けるという。

 市長の構想について富岡病院は、取材に対し「医師不足の現状からすれば、互いのバックアップも考えられる話だ」。一方、藤岡病院は「小児科の夜間救急は現在、地域の開業医の応援も得てやっており、新たな受け入れは難しい」としている。

 医師不足問題などで、十広域圏ごとの連携を基本方針としている長野県は「佐久地方には中核となる県厚生連佐久総合病院もある。構想は一つの考え方だと思う」としている。

(信濃毎日新聞、2007年3月10日)

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群馬県の産科医不足の状況
 【朝日新聞(2006年7月30日)より引用】
 産前産後の医療も、医師、施設の双方が不足している。群馬大院の峯岸敬・生殖再生分化学教授によると、群馬県の産科医は約4人に1人が70歳以上で高齢化が著しい。勤務医は月平均9~10回当直するなど、他県に比べて過度な負担がかかっている。また、昨年5月から、周産期医療にかかわる病院がネットワークで情報を共有するが、依然としてNICUベッド不足に悩んでいる。
 県内では55~60床必要とされるが、実際稼働しているのは40床前後。県立小児医療センターの高木剛・産科部長は「いつも埼玉、東京など県外の病院十数カ所に空きベッド状況を問い合わせている。それでも確保が難しい」と改善を求めた。

山梨県の産科医不足の状況
 【毎日新聞(2006年6月1日)より引用】
 出産できる医療機関のある市町村が減り、地域格差が拡大している。8月以降は、県内で出産できる病院や診療所は22から19に減少し、峡北、峡南、東部に加え峡西地域にも全くない状況になる。このため県は1日、甲府市内で県医師会や県産婦人科医会などによる協議会を開き、産科医療の拠点となる大型病院と出産できない診療所が連携するシステムの構築に向け協議し、地域格差の是正を目指す。