ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

日本の妊産婦死亡について

2007年03月21日 | 地域周産期医療

妊産婦死亡の世界平均は、分娩10万件当たり約400人(分娩250件で1人の割合)です。

それに対して、現在の日本の場合、妊産婦死亡は分娩10万件当たり4~7人程度となって、多くの人が分娩は安全なのが当然と考えるようになりました。

しかし、実際の医療現場では、日本においても、分娩時に母体が生命の危険に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上(分娩250件に1人の割合)に上っていることが、今回の全国調査で判明しました。

すなわち、日本においても、今後、このまま産科医療崩壊が進行し、多くの妊産婦達が産科医療のサポートを受けられなくなってしまうと、妊産婦死亡が世界平均並み(現在の妊産婦死亡の70倍以上!)まで増えてしまう可能性も十分にあり得ます。

現在、日本全国で進行している産科医療の崩壊現象に何としてでも歯止めをかけ、各地域の産婦人科医療供給体制を維持・発展させていく必要があります。

****** 共同通信社、2007年3月20日

重篤は妊産婦死亡の70倍 出産異常で厚労省調査 医療体制充実を専門家訴え

 出産時の大量出血などで、一時でも「生命に危険がある」と判断される重篤な状態に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上、出産約250件に1人の割合に上るとみられることが、厚生労働省研究班(主任研究者・中林正雄(なかばやし・まさお)愛育病院院長)などの全国調査で20日までに分かった。

 2000-05年の国内の妊産婦死亡は出産10万件当たり4-7人程度で、一般には比較的まれな現象と受け止められてきたが、死に至る危険は多くの妊婦にあった実態が明らかになった。

 調査に参加した専門家は「妊娠・出産の本当のリスクは、これまで考えられていたより高い」と指摘。産科医の減少が懸念される中、母親と新生児を守る周産期医療体制の充実を訴えている。

 研究班は日本産科婦人科学会周産期委員会と共同で昨年、全国の産婦人科病院など998施設を対象にアンケートを実施。333施設から、04年の実績で国全体の11%に当たる約12万5000件の出産について回答を得た。

 それによると、大量出血や常位胎盤早期はく離、頭蓋(ずがい)内出血などで死亡したのは計32人。だが、血管内凝固症候群などで一時でも生命に危険があると判断された妊産婦を含めると計2325人で、実際の死亡数の約73倍だった。

 この割合を、全国で62人が死亡した05年に当てはめて推計したところ「生命の危険あり」は約4500人となり、出産約250件に1人の割合であることが明らかになった。

(以下略)

(共同通信社、2007年3月20日)