今、地域の産婦人科が次々と閉鎖に追い込まれています。朝日新聞の全国調査では、最近1年間だけで105施設が分娩取り扱いを中止したとのことです。
このまま放置すれば、さらに多くの産婦人科が閉鎖に追い込まれていくことが予想されます。
この全国規模のなだれ現象的な産科医療崩壊に対して、一つの医療機関の努力だけで対応することは、到底、不可能です。
地域の産科医療を絶滅の危機から守るためには、地域住民、行政、地域の医療機関などが一体となって、地域の限られた医療資源を有効に活用して、一致団結して対応していく必要があります。
****** 医療タイムス、長野、2007年3月26日
医療資源の有効活用に地域一体で対応を
~国の産婦人科検討委で信大・金井講師
信大医学部産科婦人科の金井誠講師は、21日に東京都内で開いた拡大産婦人科医療提供体制検討委員会で本県の集約化の状況について報告した。相次ぐ産婦人科閉鎖によるお産の危機を医療機関や行政が協力して乗り切った飯田下伊那地区の事例を紹介し、「限られた医療資源を有効に活用するために医療機関と行政、住民が一体となって対応する必要がある」と指摘した。
本県の産婦人科医はこの6年間で30人近く減少し、4分の1は分娩を取り扱っていない。県内の病院での出産は2004年の68%から05年に73%に増え、高次病院が53%を占めており、多くの施設が分娩を中止することで自然淘汰的に集約化が進んでいる状況だ。
年間1800件のお産を6施設で取り扱っていた南部の飯田下伊那地区では、05年1施設が取り扱いを中止し、2施設が翌年に中止の意向であることが明らかとなり、800件以上の分娩が宙に浮く医療崩壊の危機に瀕していた。このため、飯田市長や広域連合、医師会などで構成する「産科問題懇談会」を設置。初診から34週までの再診を地域の医療機関、34週から分娩までを地域の2次医療機関である飯田市立病院が担う態勢を整えた。飯田市立病院には広域連合が5億円を支援し、医師と助産師を増員した。
その結果、月40件代だった飯田市立病院での分娩は06年、98件に急増したものの、外来は逆に1400件から1100件に減少。正常分娩は増えたが帝王切開や多胎分娩はそれほど増えなかったことから、医師の過重労働感はむしろ減少したという。集約化に対する住民の評価について実施直後と半年後の2回尋ねると、「よくできた」18%に対し、「やむを得ない」62%だったが、制度が定着するにつれ満足度が高くなった。医師の集約化には79%が肯定したが、妊産婦の医療機関の振り分けは61%に下がり、「集約化は必要だが、受診制限は反対」という意見が強かった。一方、当直明けの医師が翌日休みがないということについて知らない住民が半数あったことから、金井氏は「こういった面を周知することが必要だ」と強調した。
(以下略)
(医療タイムス、長野、2007年3月26日)