コメント(私見):
当県の地元国立大学の初期臨床研修医が年に40人程度で、大学で後期臨床研修を開始した医師の数は、初期臨床研修医の数と比べて、大幅に減っているのが現状のようです。
後期臨床研修を県内で開始した医師の数が、その年の実質的な新たな戦力となります。大学で後期臨床研修を開始する医師の数が激減している以上、大学からの医師派遣には今後あまり期待できそうにありません。
最近は、さまざまな医師確保対策が提案されていますが、結局のところ、少ない後期臨床研修医の各部署間の奪い合いになっていて、『どこかの部署が頑張って医師確保に成功すれば、他の部署は医師不足に陥る!』というのが、全体の構図です。
県全体の医師の数は急には増やせませんから、緊急避難的な対応として、医師の集約化(再配置)は必要ですが、長期的には、県全体の医師の数(後期臨床研修医の数)が増えてくれないことには、医師不足の問題は永久に解決できないと思います。
****** 信濃毎日新聞、2007年5月20日
医師不足 増やすことも選択肢に
担当科の医師が1人で60日連続勤務した。
医療が高度化して診療時間は増えているのに、医師の数が増えない。
女性医師が働きやすい職場は少なく、このままではさらに医師不足が進む。
いずれも、病院に勤務する医師の生の声だ。日本医労連が全国の病院勤務医の労働実態についてまとめた調査から、負担の重さが浮かび上がってくる。
長野県内では医師79人が回答を寄せた。時間外労働では、過労死認定基準の「月80時間」を超えた医師は24・6%もいた。1カ月に休んだ日は1日もない医師が15・2%。平均は3・7日だった。
県内でも医師がいなくなって診療科目を減らしたり、診療日数を減らす病院が相次いでいる。医師の数が多く1人の負担が軽い都市部の病院に移ったり、開業医に転じる医師が多くなるのも無理はない。
政府与党は18日、医師不足に関する協議会を開いた。6月上旬にも対策をまとめ、参院選公約の「目玉」にする意向でいる。
命に関わる重要な課題を、小手先の論議で終わらせてはいけない。いま、抜本的な対策を打ち出さないと地方の医療崩壊はますます進む。
厚生労働省は中核病院への医師の重点配置、出産時の事故に対する無過失補償制度創設などの対策を打ち出しているものの、思わしい成果は上がっていない。今後の論議の重要なポイントは、医師はどれだけ必要なのか、ということだ。
厚労省は、医師不足は都市部や一定の診療科目に集中する「偏在」が問題だとしている。一部の大学で医学部定員の増員を認めたが、あくまでも暫定措置である。昨年まとめた需給見通しでも、年々医師は増えており長期的には需要と供給のバランスが取れるとしている。
しかし現場からは、医療の高度専門化で患者や家族への説明に時間がかかる、治療以外の事務仕事や研修の負担が大きい、といった声がある。妊娠や子育てで休む女性医師への対応も考えなければならない。医療訴訟が増え、丁寧な診療が求められている時代には、より多くの医師が必要になる。
日本はOECD(経済協力開発機構)の加盟国の中でも、人口当たりの医師数が最低クラスだ。このままではいけない。
厚労省は医療費を抑えるために、医師の増員には慎重だ。医療へのニーズが変わりつつある中、無駄を見直し、医療費の配分をあらためて検討したい。医師の増員も選択肢の1つになる。
(信濃毎日新聞、2007年5月20日)
****** 医療タイムス、長野、2007年4月19日
「5年もすれば外科医はいなくなる」 ~久保信大教授が危機感を表明
18日の県医師会理事会では、深刻化する医師不足に関する意見交換が行われ、久保惠嗣理事(信大医学部内科学教授)は、県内では産科や小児科医師だけでなく、外科医を志す学生も非常に少なく、「5年もすれば外科医がなくなる」との懸念を示した。
久保理事は、信大医学部の現況について、「将来、外科に進もうという学生がほとんどいない」と説明。その上で、現在は産科や小児科医不足だけがクローズアップされているが、「このままでは外科も(産科や小児科と)同じような状況になり、5年もすれば外科医がいなくなるという状況もありうる」との危機感を訴えた。
解決策としては、「一時的な対応として医師の集約化は必要だが、長い目で見ると解決にならない。学生自身が『外科に進みたい』と思ってもらえるようにしなければならない」と述べ、一地方の問題としてではなく、診療報酬や医療訴訟などの面からも国が真剣に考えるべきと強調した。
■後期研修医確保 「県内高校 頑張って」
また、同日は県内における研修医の確保対策にも話が及んだ。信大の前期・後期研修医の状況について久保理事は、前期は40人程度残るが、後期は出身地に戻ったり、都会の有名大学に進む研修医が多く、前期研修医からは大幅に減ると説明。その上で、「長野県出身者が20、30人信大に入学してこないと(後期研修医を確保するのは)厳しい。県内の高校に頑張って(信大に入学させて)もらうしかない」と述べた。
これに対し伊藤隆一理事は、「東京に行った学生は地元に帰ってこない」と述べ、都会に研修医が集中している現状に問題意識を表明。また、信大の「県民入学枠」をさらに増やすべきとの意見もあった。
大西雄太郎会長は、「都会に負けない、魅力ある病院になる必要がある。大学を育てるのは医師会」と述べ、大学の魅力づくりに医師会が積極的に関わっていく方針を示した。
(医療タイムス、長野、2007年4月19日)
****** 毎日新聞、2007年5月11日
9割以上の医師、不足感じ 長野県医労連が労働実態調査
◇4人に1人、月80時間の残業/半数が健康に不安、病気がち/6割が職場を辞めたい
県医療労働組合連合会(長野市)は10日、医師の労働実態調査を発表した。9割以上の医師が医師不足を感じており、4人に1人が過労死ラインとされる月80時間以上の時間外労働(残業)を行っているなど、深刻な状況が明らかになった。
県医労連は今年1月から3月にわたり、県内の医療機関と、そこで勤務する医師に対してアンケート調査を実施。回答を得られた17施設と、医師79人(うち女性16人)の結果をまとめた。
調査結果によると、1日の平均労働時間は10・4時間だが、12時間以上は全体の42%を占めた。月平均休日数は3・7日と少なく、全く休みを取れない医師も15%に上った。最長連続勤務日数の平均は15・3日、勤務時間では36・3時間と長時間労働が常態化。医師の半数が「健康に不安、病気がち」と答え、約6割が「職場を辞めたいと思った」としている。
現在の医療現場について、97%が医師不足を実感。1病院で平均5人程度の医師が不足し、最も深刻なのは患者の多い内科で、精神科や救急部などが続くという。
アンケートでは「60日連続の勤務で、39度の熱を出しても当直勤務をした」「終業時間に帰れず、複数の緊急事態が発生すれば対応できない」などの切実な声も寄せられた。県医労連の鎌倉幸孝書記長は「忙しくてアンケート調査にさえも答えられない医師もいる。労働環境の厳しさが浮き彫りになった」と話した。
医師不足について、村井仁知事は同日の会見で、「県としては予算の倍増や各医療機関の連携を取ることなどが精いっぱいできることだ」とした。【藤原章博】
(毎日新聞、2007年5月11日)
****** 長野日報、2007年5月11日
勤務医4人に1人月80時間以上超勤 県医労連調査
勤務医の4人に1人が「過労死ライン」とされる月80時間以上の超過勤務を強いられ、こうした過酷な勤務実態が高じて、6割近い医師が職場を辞めたいと考えていたことが10日、県医療労働組合連合会(長野市)が公表した「医師の労働実態調査」で分かった。勤務医の実態と課題を明らかにする目的で実施したが「アンケートに答える時間的余裕がない勤務医もいた」(県医労連)とし、医師不足の深刻さと対策の緊急性を訴えた。
調査は県内の医療機関に勤務する医師や病院などを対象に行い、女性16人を含む79人の勤務医と17医療機関から回答が寄せられた。
1日の労働時間では、16時間以上と答えた勤務医も3人いたほか、週の労働時間は65時間以上が31.7%もいた。最長勤務時間では「日勤―当直―日勤」と続き、連続36.3時間勤務したケースもあった。県医労連は「睡眠時間もままならず、休みも取れない勤務医の“超長時間労働”が常態化している」と分析している。
健康状態では、半数が「健康に不安・不健康」と訴え、「翌日まで疲れが残る・いつも疲れている」が半数近くの46.8%にのぼった。職場を辞めたいと思うことは―の問いに対して「いつもあった」12.7%、「しばしばあった」26.6%、「時々」20.3%あり、「なかった」の24.1%を上回った。
医師確保、退職防止対策では「賃金や労働条件の改善」を求める回答が78.5%と最も多い。具体的な医師不足数では、15病院が計71人と回答。内科医20人、精神科・神経科9人、救急医8人の順で、産婦人科・小児科以外の医師不足も深刻になっている実態が浮き彫りになった。
調査結果について、県医労連は「県も医師確保対策に力を入れていることはありがたいが、現実は医師の奪い合いが起きているのが実態だ」と指摘した。
(長野日報、2007年5月11日)