現時点では、日本国内のほとんどの地域において、新型インフルエンザに感染していると判明した場合、軽症者でも強制的に入院措置がとられています。しかし、この厚生労働省の方針に対して、専門家の間でその意義を疑問視する意見が当初より多くあがっていて、近日中に方針の見直し案が正式決定されるようです。見直し案では「軽症者は原則として自宅療養」となり、重症化防止に対策の重点がシフトされます。また、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直し、「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」ことになるようです。
****** 共同通信、2009年6月17日
全地域で原則、自宅療養へ 重症化防止にシフト
厚労省、国内対応見直し 新型インフルエンザ
新型インフルエンザをめぐる国内対応の見直し案づくりを進めている厚生労働省は16日、軽症の感染者については全地域で原則、自宅療養とし、入院措置をとらない方針を固めた。感染の広がり度合いに応じた現行の地域分類を廃止し、重症患者やぜんそくなど重症化につながる疾患を持つ人への感染防止対策にシフトする。専門家の意見を聞いた上で、週内にも正式決定する。
現行の国内対応は、地域を(1)感染者発生が少数(2)急速に患者数が増加-に2分類。(2)の地域では軽症者のみ自宅療養としているが、(1)の地域では症状にかかわらず入院措置をとるよう都道府県に求めている。
見直し案ではこうした地域分類をやめるとともに、軽症患者は原則、自宅療養に切り替える。入院措置はとらず、感染拡大の恐れがある場合に入院させることが可能とするほか、重症化につながる基礎疾患のある患者は初期症状が軽症でも入院を考慮するよう促すとしている。
また発熱症状がある人の治療について、現行は(1)の地域では発熱外来を設置する医療機関に限定しているが、見直し案では「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」とし、感染者の待合場所や診察時間を一般の患者と分けるよう促す。
このほか、想定される重症患者の発生数に応じた病床を確保するよう都道府県に求めることも検討しているが、正確な予測が可能かどうかが課題となりそうだ。
入院措置は感染症法に基づくもので、同法は新型インフルエンザ感染者について「都道府県知事は、まん延を防止するため必要があると認めるときは、患者に入院を勧告することができ、勧告に従わない場合は入院させることができる」と規定している。
(共同通信、2009年6月17日)
****** TBSニュース、2009年6月17日
新型インフル、軽症者は原則自宅療養
新型インフルエンザの国内対応の見直しを検討している厚生労働省は、軽症の感染者については全ての地域で原則自宅療養とし、入院措置は取らない方針を固めました。感染者が少ない地域で新型インフルエンザの患者が発生した場合、現在、厚労省は症状に関わらず入院措置をとるよう都道府県に求めています。しかし、新型インフルエンザが季節性のインフルエンザと危険度が変わらないことから、厚労省は感染者について重症化の恐れがある人以外は「原則自宅療養とする」など、国内の対応を見直す方針を固めました。また、発熱症状のある人の治療についても「一般の医療機関で診察を行う」とし、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直す方針です。厚労省専門家の意見を聞いた上で、今週中にも見直し案を正式に決定することにしています。
(TBSニュース、2009年6月17日)
****** 南信州新聞、2009年6月16日
飯田市で新型インフル2人が感染
県は13日に飯田市内の事務職の女性(27)、15日に同市内の会社員男性(42)それぞれで、新型インフルエンザの感染を確認したと発表した。男性は13日午後に同市内で市職員労働組合などが開いた保育関連イベントの「2009保育フェア」に、14日朝に同市立三穂小学校の地域学校行事に参加していたため、同市は市内の公立、私立のすべての保育所、幼稚園、認可外保育施設を16日から20日まで、三穂小を16日から21日まで臨時休業することを決めた。
感染者2人の接触は確認されておらず、別ルートの感染と見られる。いずれも感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院しているが、16日正午現在、容態は安定しているという。
県内での発生を受け、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所は24時間体制で電話相談窓口を開設。県は県民に対し、手洗いやうがいの徹底、混み合った場所でのマスクの着用など「個人予防策」の実施を求めている。
飯田保健福祉事務所には16日、正午現在で約300件の電話相談があった。半数ほどが保育フェス参加者からだったというが「深刻と思われる事例はない」(関係者)としている。
15日夕に感染が確認された男性は今月9-12日に東京都と神奈川県内に滞在し、12日中に飯田市の自宅に帰宅。14日夕に38・4度の発熱があり、市内の医療機関で簡易検査を受けた結果、A型ウイルスの陽性が確認された。同日夜に市立病院を受診。再度の簡易検査は陰性だったが、県環境保全研究所の遺伝子検査で、15日午後4時15分に新型インフルの感染が分かった。
男性は市立病院に入院しており、同日夜現在の体温は36・8度。せきの症状はあるが、容態は安定しているという。家族4人はタミフルの予防内服を行っており、発熱などの症状は出ていない。
一方、県内初の感染が確認された女性は1日から9日までハワイに滞在し、10日午後7時ごろに飯田市内の自宅に帰宅。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所の相談窓口に電話で連絡し、診療所を経て飯田市立病院を受診した。簡易検査でA型陽性だったため、県環境保全研究所で遺伝子検査を実施。13日午後10時半に新型インフルの感染が確認された。入院後の容態は安定しており、15日午前までに熱は36・6度に下がっている。
女性の発症24時間前から入院までの濃厚接触者は、家族や親せき計6人と職場の同僚20人。飯田保健福祉事務所の保健師らが健康観察を続けているが、発熱などの症状は出ていない。家族と親せきはタミフルの予防内服をしたという。同所は外出の自粛を求めている。
県内の感染確認により、県は当面の間、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所の電話相談を24時間体制で行う。
(南信州新聞、2009年6月16日)
****** 毎日新聞、長野、2009年6月16日
新型インフルエンザ:県内感染を初確認
2人目も飯田在住
県は14日、米国ハワイから帰国した飯田市在住の事務員の女性(27)が新型インフルエンザに感染したと発表した。県内の感染確認は初めて。熱や頭痛などの症状があり、同市立病院に入院。容体は安定し、家族や同僚に症状は出ていないという。女性は1-9日にハワイへ旅行していた。県は濃厚接触者26人の健康観察を行っている。さらに同じ飯田市で15日、県内2人目の感染者も確認された。同市内の会社員の男性(42)で、同病院に入院し、容体は安定している。女性と明らかな接触があったことは確認されていないという。【竹内良和、福田智沙、小田中大】
県健康づくり支援課によると、女性は9日にハワイから成田空港に到着し、他県を経由してバスと電車で10日に自宅に戻った。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所に電話で相談。県環境保全研究所の遺伝子検査で感染が確認された。女性は11、12両日に市内の職場へマイカーで出勤したが、窓口業務ではないという。感染がハワイか帰国後かは不明。15日朝には熱は36・6度まで下がったという。
15日時点で、濃厚接触者に該当する女性の家族・親族と職場の同僚の計26人には予防的にタミフルが処方され、現時点で感染の疑いはないという。県は26人に外出自粛を要請、健康観察も行う。同課の小林良清課長(医師)は「患者への偏見や住所の割り出しは控えてほしい」と強調した。
一方、同課によると、2人目の感染者の男性は9-12日に東京都と神奈川県に滞在。14日に38・4度の発熱があり、市内の診療所を受診した。簡易検査で陽性とされたため、診察した医師が飯田保健福祉事務所に相談。同日夜の再検査でいったん陰性とされたが、15日に同研究所の遺伝子検査で感染が確認された。
熱はその後、36・8度まで下がった。
県は14日に村井仁知事らが緊急の対策幹事会議を開催し、学校、保育施設の臨時休業やイベントの自粛などはしないことを報告。電話相談を拡充し、県健康づくり支援課と飯田保健福祉事務所は相談を24時間受け付ける。
また日本より罹患(りかん)率が高い38カ国・地域へ渡航歴があり症状が出た人から相談があれば、発熱外来を紹介する。
市長「冷静な対応を」 福祉施設・小中学校、
予防措置の徹底確認--飯田市
27歳の女性ら2人が新型インフルエンザに感染したことが確認された飯田市では、県の発表前の13日夜から、県下伊那地方事務所や市などの関係機関で担当職員が招集され、対応に追われた。県飯田保健福祉事務所では、10人の保健師が濃厚接触者の健康状態を調べるなど、感染拡大の恐れについても確認作業を進めた。
同市は14日朝、対策会議を開催。牧野光朗市長は「市民の皆さんには冷静な対応をお願いしたい」と述べた。市内の福祉施設や小中学校などでのマスクの着用といった予防措置の徹底を確認。ただ女性の親族や勤め先などで接触した人は判明しており、感染拡大の恐れは少ないとして保育園、小中学校の休校措置は取らず、市内で行われるイベントなども予定通りとした。【仲村隆】
(毎日新聞、長野、2009年6月16日)
****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日
飯田市が緊急保育実施へ 新型インフルで休園・休校
県内2人目となる新型インフルエンザ感染者が飯田市で確認されたことを受けて16日、感染拡大防止のため同市内の全保育園、幼稚園計43園と、市立三穂小学校での臨時休園・休校が始まった。市によると、対象となる子どもの数は約3700人。同市に隣接する下伊那郡高森町、喬木村もこの日、全保育園(高森町5園、喬木村3園)の休園を始めた。両町村の園児計約700人が対象になる。
休園・休校は、感染が確認された同市の会社員男性(42)が、13日に市内の飯田文化会館に約1160人が集まった「2009保育フェア」と、14日朝に三穂小で行われた資源回収に参加していたことを受けた措置。県が市などに要請していた。高森町、喬木村は、保育士らが同フェアに参加していたため、自主的に対応を決めた。
休園・休校の時期は、飯田市内の全保育園、幼稚園と喬木村の保育園が20日まで、三穂小が21日まで。高森町の保育園は17日までを予定している。同市の私立保育園、幼稚園のうち、同フェアに参加した園児、保育士らが1人もいないと今後確認された園については、休園の解除も検討していく。
また、両親とも医療従事者や教員のケースなど「保護者がどうしても仕事を休めない場合」に対応するため、同市は17日から、緊急保育を松尾東保育園で始める。対象はほかに、母子、父子家庭で仕事を休むと雇用などに著しい不利益がある場合などを想定。前日午後5時までに、現在在籍する園に申し込む。
牧野光朗市長は16日午前に記者会見し、市民に「重ねて冷静な対応をお願いしたい。新型インフルエンザにおびえることなく、侮らないで冷静な対応を」と呼び掛けた。
県によると、会社員男性の感染が判明した15日夕以降、県飯田保健福祉事務所(保健所)には、16日午前10時半までに約300件の電話相談が寄せられた。このうち半分が、男性が参加していた「保育フェア」に足を運んだ保護者からの相談という。男性の家族4人には予防のため15日から、治療薬タミフルを投与している。
(信濃毎日新聞、2009年6月16日)
****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日
「仕事休めない」一斉休園に共働き家庭困惑
「仕事を休めない」「子どもの預け先は」-。県内2人目の新型インフルエンザ感染者が確認され、16日から保育園、幼稚園などが一斉臨時休園になった飯田市。目立った混乱は見られなかったものの、共働きの家庭などからは、今後の生活への影響を不安がる声も聞かれた。
各園は市の休園措置が決まった15日深夜から、それぞれ家庭に電話やメールで連絡。ただ、上郷西保育園には16日午前8時10分ころ、30代の母親が女児を連れて登園。園長から休園を告げられると、「すぐに職場に連絡しないと」と困惑した表情を浮かべた。園児数200人以上の松尾保育園にも、メールに気付かなかった1組が登園した。
同市白山町の自営業女性(33)は、感染者が参加した13日の「2009保育フェア」に園児の長男(3)を連れていった。事前に用意しておいたマスクを16日から着用し「実家が近くにないので仕事は夫にお願いし、私は息子の相手」。一方、同所の自営業女性(60)は、息子から孫3人を預かった。孫の女児(6)は「おばあちゃんに会えてうれしいけれど、保育園の友達に会えないのが残念」。
同市正永町の共働きの会社員男性(39)は、夫婦で対応を話し合い、園児の長女(5)を2日間ほど実家に預け、後は夫婦で分担して育児に当たることにした。それでも「休むのなら妻に休んでもらう形になるだろう。会社にも迷惑を掛けるし、家計にも響く」と悩みを漏らした。
飯田中央保育園の塩沢鎮子園長(55)は「『首になるので仕事を休めない』と言う母親もいる」と申し訳なさそうに話した。
唯一の臨時休校措置となった同市三穂小学校は、保護者らの問い合わせもなく、落ち着いているという。
(信濃毎日新聞、2009年6月16日)