ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

HPVワクチンが登場しても子宮頸がん検診は重要

2009年06月28日 | 婦人科腫瘍

参考:子宮がんについて

****** 産経新聞、2009年6月27日

子宮頸がん 

若い世代に無料クーポン券配布 

100%予防可能、検診受けて

 検診でほぼ100%予防できる子宮頸(けい)がん。米国では検診受診率が80%を超え発症や死亡が減っているが、日本では24%にとどまり、年間2500人が亡くなっている。特に若い世代の受診率が低く、厚生労働省は受診率アップを目指し、対象年齢の女性に検診の無料クーポン券を配布する。専門医は「検診が自分の命を守るのに有効なことを知ってほしい」と呼びかけている。【平沢裕子】

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検診で必ず発見

 子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)にできるがんで、性交渉によってHPV(ヒト・パピローマウイルス)に感染することが原因で起こる。HPVはありふれたウイルスで性交渉があれば誰でも感染の可能性がある。感染しても多くの人は自分の免疫力でウイルスを排除できるが、約1割がウイルスを排除できずに感染が持続し、さらにその中からがんに進行する人がいる。

 ただ、感染からがんに進行するまでには5~10年以上かかり、がんになる前に細胞が変形する「異形成」という状態になるため、定期的な検診でがんになる前に必ず発見・治療できる。

 自治医大附属さいたま医療センター産婦人科の今野良教授は「子宮頸がん検診は世界で最も普及し、効果が評価されている。先進国のほとんどで検診受診率が60~80%と高いのに対し、日本は30%以下で、それが若い世代の発症や死亡の増加につながっている」と指摘する。

 欧米に比べて検診受診率が低いとはいえ、50歳以上の世代はそれ以下に比べれば高く、子宮頸がんの発生と死亡は減少。一方で、20~40代では発生・死亡ともに増加、中には妊娠で初めて婦人科を受診し、悪化した子宮頸がんが発見されるケースもある。

将来の出産のために

 子宮頸がんの発症のピークは30代半ば。結婚・出産年齢が上がり、“アラフォー世代”の出産が増加していることを考えれば、20、30代での検診は将来の出産の備えにもなる。今野教授は「検診を定期的に受けていれば『子宮をとらずにすんだのに』と思うケースは少なくない」と警鐘を鳴らす。

 こうしたことから、厚労省は女性のがん検診受診率を上げようと、今年度補正予算で約216億円を投じ、子宮頸がんと乳がんについて検診の無料クーポン券を配布する。子宮頸がんの対象は前年度に20、25、30、35、40歳になった女性400万人で、早ければ各市町村から7月初めに送付される。

 検診は子宮の入り口を肉眼や拡大鏡で見る内診と、表面をブラシや綿棒でこすって採取した細胞を顕微鏡で見る細胞診。個人差はあるが基本的に痛みもなく、1分程度で済む。簡単な検査だが、日本では内診を嫌がる女性が多く、それが受診率の低さにつながっているという声もある。

 今野教授は「予防に検診が必要なことを理解していない人も多い。検診は女性の当然の権利と理解してほしい。将来子供を産むため、自分の命を守るため、ぜひ検診を受けてもらいたい」と呼びかけている。

検診の受診率、どうすれば上がる?

 がん検診の受診率を上げるにはどうすればいいのか-。東京都杉並区は乳がん検診を呼びかける案内文書の内容を、(1)従来通り(2)「補助が出る」とお得感を強調(3)「早期発見が命を救う」と安心感を強調(4)「発見が遅れると命にかかわる」と恐怖感を強調-の4種類用意し、どれが最も受診につながるかを調べている。

 文書は今年1月に40、50代の女性6000人に送付。返信があった2248人のうち、(1)が379人で受診希望が最も少なく、ほかは約430人でほぼ同じだった。受診期間は来年2月末まで。同区は実際に受診するかどうかをみた上で、今後のがん検診の通知内容を検討したいとしている。

(産経新聞、2009年6月27日)