ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

放射能汚染に関する基礎知識

2011年10月05日 | 周産期医学

● 放射線

高いエネルギーを持った電磁波や粒子線を放射線といい、以下の2 種類に分類される。

電離放射線(波長の短い電磁波): X線、γ線
粒子放射線(高速で動く粒子):α線、β線、中性子線、宇宙線

これらの各種放射線の共通した特徴の一つは物を通り抜ける能力(透過力)を持っていることで、その能力は放射線の種類により異なる。

放射能: 物質が放射線を放出する能力
※ 放射能の強さは1秒当りの原子核の崩壊数で表し、単位としてベクレル(Bq)を用いる。

放射性物質: 放射線を放出する物質(ウラン、プルトニウム、放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウムなど)

Fig1_2

α線
 ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドンなどの放射性原子の自然崩壊によって発生するヘリウム原子核から成る粒子線。健康に対する影響が現れるのは、α線を放出する物質が体内に摂取された時(体内被ばく)のみ。

β線
 トリチウム、炭素14、リン32、ストロンチウム90などの放射性物質の自然崩壊によって発生する高速度の電子からなる粒子線。健康に対する影響が現れるのは体内被ばくのみ。

γ線
 波長の短い電磁波。コバルト60やセシウム137などの放射性物質の自然崩壊により発生する。

X線
 電磁波のうち、波長が1pm~10nm程度の範囲のもので、軌道電子の遷移に起源をもつ。波長のとりうる領域がγ線と一部重なる。これは、X線とγ線との区別が波長ではなく発生機構によるためで、軌道電子の遷移を起源とするものをX線、原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをγ線と呼ぶ。

中性子線
 ウランやプルトニウムなどの核分裂により発生し、原子核崩壊の連鎖反応を引き起こす。

● 主な放射性物質

ウラン、プルトニウムは原子力発電に用いられる主な燃料であり、これらの燃料が核分裂反応を起こした際に生成される放射性物質が、放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウムなどである。

放射性ヨウ素131 I):原子番号53
・半減期 8.04日、実効半減期 8日

・性質: 天然にはほとんど存在しないが、人工的な核分裂で大量に生成される。β線を放出して、キセノン131(131Xe)となる。γ線も放出されるがその線量は小さい。

・生体に対する影響: 体内に取り込まれると、ほとんどすべてが甲状腺に集まる。β線による甲状腺被ばくが大きな問題となる。10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.22ミリシーベルトになる。

・原子炉事故の際の放出: 原子炉事故が起これば、大量の放射性ヨウ素が放出されると予想される。チェルノブイリ原発事故では、30京ベクレルが放出され、その影響で甲状腺がんが多発したと考えられている。

・放射能の測定: 体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。

放射性セシウム137Cs):原子番号55
・半減期 30.1年、実効半減期 約100日

・性質: 天然に生成されるものは少なく、人工的な核分裂により大量生成される。揮発性で大気中に分散しやすい。γ線を放出する。β線も少量放出する。

・体内に入ると全身に分布し、約10%はすみやかに排泄され、残りは100日以上滞留する。体内に蓄積された場合は、代謝による排泄などで70~80日で半減すると考えられている。

・原発事故後25年以上経たチェルノブイリでは、放射性セシウムはいまなお原発周辺地域の土壌などに残っており、地域住民は現在でも放射性セシウムに汚染されたキノコや野菜を摂取している。

・生体に対する影響: 10,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は0.13ミリシーベルトになる。チェルノブイリ事故では、広い地域が1m2あたり50万ベクレル以上のセシウム137で汚染され、放射性セシウムのみで1年間に1ミリシーベルト以上の外部被ばくを受けたことになる。事故直後は年間10ミリシーベルト以上の被ばくを受けていた。

・放射能の測定: 体内にあるものは、全身カウンターで測定できる。

放射性ストロンチウム90Sr):原子番号38
・半減期 29.1年、実効半減期 15年

・性質: 天然ではウランの自発核分裂などによって生じるが、生成量は少ない。人工的な核分裂により大量生成される。β線を放出する。

・体内摂取されると、一部はすみやかに排泄されるが、かなりの部分は骨の無機質部分に取り込まれ長く残留する。

・生体に対する影響: β線を放出する放射能としては高エネルギーであるため、健康への影響や外部被ばくが大きくなる恐れがあるともいわれている。

・原子炉事故の際の放出: 放射性ストロンチウムは放射性セシウムより放出されにくい。

・放射能の測定: γ線を出さずβ線のみを放出するため、検出や定量が困難。体内にある量を知るには、排泄物中の放射能を測るバイオアッセイを用いる。

● 放射線量の単位

・ ベクレル(Bq):
放射性物質が放射線を出す量を表す単位
(Bq = 1秒当りの原子核の崩壊数)

・ グレイ(Gy):
ある物質が放射線に照射されたとき、その物質の吸収線量を示す単位。1Gyとは、物質1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収 があることを示している。(Gy=J/kg)

1Gy = 100 rad (rad:古い吸収線量の単位)

・ シーベルト(Sv):
人体が放射線を受けた時その影響の度合いを測る尺度として使われる単位。

Sv = Gy x 放射線荷重係数 x 組織荷重係数

放射線荷重係数(WR)は、放射線種によって値が異なり、X線・γ線・β線ではWR = 1、陽子線ではWR = 5、α線ではWR = 20、中性子線ではWR = 5~20の値をとる。

組織荷重係数:臓器などの組織別の影響の受けやすさを表す。
・ 肺、胃、骨髄などが0.12
・ 食道、甲状腺、肝臓、乳房などが0.05
・ 皮膚、骨の表面が0.01

● 外部被曝、内部被曝

人体が放射線を受けることを「被曝」という。被曝には、体の外側から放射線を受ける「外部被曝」と、呼吸や飲食などを通して放射性物質を体内に取り込み、体の内側から放射線を受ける「内部被曝」がある。

外部被曝の場合は、空気中の到達距離が短いα線やβ線はそれほど影響がなく、主にγ線が問題となる。内部被曝の場合は、至近距離から体内の組織に影響を与えるので、透過力が弱いα線やβ線が大きな問題となる。

放射性物質の出す放射線の種類
 
放射性ヨウ素(ヨウ素131): β線とγ線
 放射性セシウム(セシウム137): β線とγ線
 放射性ストロンチウム(ストロンチウム90): β線
 プルトニウム(プルトニウム239): α線

******

確率的影響(stochastic effect)

発癌と遺伝的障害には、しきい線量がなく、発症の確率と被曝線量が比例し、被曝線量が非常に小さくても影響が発生する。(仮定)

Stochastic
(直線しきい値無し仮説)

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確定的影響(deterministic effect)

しきい線量を超えて初めて症状が起こり、線量が高いほど症状が重くなるような影響。確定的影響には、確率的影響(発癌と遺伝的障害)を除いたすべての影響が分類される。

Fig4

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確率的影響と確定的影響

Fig5

・ 小児癌、遺伝的影響が、胎児被曝の確率的影響として生じることが知られている。

・ 奇形発生、精神発達遅延などが胎児被曝の確定的影響として生じることが知られている。

・ しきい値は専門家の間でもあるのかないのか、あるとすればどこなのかについて長年論争の的になっており、現在も確定してない。

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放射線被曝の胎芽・胎児への影響

・ 流産(胎芽・胎児死亡)は着床前期に最も多く、器官形成期の被曝でも起こり得る。そのしきい値は100mGy以上である。

・ 外表・内臓奇形は器官形成期にのみ起こり、各器官でその細胞増殖が最も盛んな時期の照射に特徴的に発生する。100~200mGyがそのしきい値である。

・ 発育遅延は2週~出生までの時期で認められ、そのしきい値は動物実験より100mGy以上と推測される。

・ 精神遅滞は8~15週に最も発生し、16~25週にも起こる。しきい値は120mGyと考えられている。100mGy以下ではIQの低下は臨床的に認められていない。ICRP(国際放射線防護委員会、1991)では、8~15週に1000mGyを照射するとIQは30ポイント下がり、重篤な精神遅滞は40%発生するとしている。

・ 悪性新生物(癌)は15週~出生までに起こり、しきい値はICRPでは50mGy以上としている。白血病、甲状線癌、乳癌、肺癌、骨腫瘍、皮膚癌が主なものである。・遺伝的影響は高線量照射による動物実験では認められるが、ヒトの疫学調査では統計的有意差が見られていない。しきい値はUNSCEAR(原子力放射線影響に関する国際科学委員会、2000)では1000~1500mGyと推測している。

Fig6

****** 産婦人科診療ガイドライン・産科編2011

CQ103 妊娠中の放射線被曝の胎児への影響についての説明は?

1. 被曝時期と胎児被曝線量の確認が重要であり、被曝時期は、最終月経のみでなく、超音波計測値や妊娠反応陽性時期などから慎重に決定し、説明する。(A)

2. 受精後10日までの被曝では奇形発生率の上昇はないと説明する。(B)

3. 受精後11日~妊娠10週での胎児被曝は奇形を発生する可能性があるが、50mGy未満では奇形発生率を増加させないと説明する。(B)

4. 妊娠10~27週では中枢神経障害を起こす可能性があるが、100mGy未満では影響しないと説明する。(B)

5. 10mGyの放射線被曝は、小児癌の発生頻度をわずかに上昇させるが、個人レベルでの発がんリスクは低いと説明する。(B)

Fig7

? 解説

・ 通常の放射線診断で起こる被曝線量は50mGy以下である。

・ ACOGのガイドライン(2004): 50mGy以下の被曝は胎児奇形や胎児死亡などの有害事象を引き起こさない。

・ Osei EK et al. (1999): 妊娠2~24週に10~117mGyの被曝を受けた妊婦の前方視野的検討で、奇形や子宮内胎児死亡の発症頻度は、一般妊婦の発症頻度と同等であった。

・ 米国放射線防御委員会のレポート(1977): 50mGy以下の被曝による胎児奇形のリスクは無視できる範囲であるが、150mGy以上の被曝では胎児奇形のリスクが実際に増加する。

・ 受精後10日目までの胎児被曝の影響: 流産を起こす可能性があるが、流産せず生き残った胎芽は完全に修復されて奇形を残すことはない。(all or none)

・ 受精後11日~妊娠10週の胎児被曝の影響: 奇形発生の可能性がある。(50mGy未満の被曝では奇形発生率の上昇はない)

・ 妊娠10~27週の胎児被曝の影響: 中枢神経障害(IQ低下)を起こす可能性がある。(100mGy未満の被曝では確認されてない)

● 胎児被曝と小児癌発症のリスク

・ 被曝なしの胎児が20歳までに癌にならない確率は99.7%であるが、10mGy、100mGyの胎内被曝により、それぞれ99.6%、99.1%となり、その個人が癌になる確率はごくわずかな上昇にとどまる。確率的影響(stochastic effect)

・ 社会全体では胎児被曝により小児癌の発症率が上昇するのは事実であり、不要な妊婦被曝を抑制する努力は必要である。

● 胎児被曝の遺伝的な影響

・ 放射線が生殖細胞のDNAを損傷し、生殖細胞に遺伝子異変が起こり、その影響が次世代に及ぶ可能性がある。

・ DNA損傷リスクは、線量が増えると高まるが、損傷が起こる線量のしきい値は確認されていない。

・ 放射線被曝によるヒト遺伝子異変が不都合を起こした事例は確認されていない。

● 授乳中女性の被ばくによる児への影響

・ 母乳中に分泌される放射性ヨウ素は母体が摂取した量の4分の1程度と推測されるが、確定的なことは不明である。

・ 母体血中の放射性ヨウ素の濃度に比べ、授乳中では低いといわれている。

・ 放射性物質を含む水道水(軽度汚染水道水と表現)を長期にわたって飲んだ場合の健康への影響:

http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf

おおよその母体被ばく量は以下のように算出される。
総被ばく量(マイクロシーベルト)=(摂取ベクレル総量)×2.2÷100 

500Bq/kg の水を1 日1 リットルずつ365 日飲むと500×365×2.2÷100=4,015マイクロシーベルト(約4.0ミリシーベルト)となる。

胎児に悪影響が出るのは、児の被ばく量が50,000マイクロシーベルト(50ミリシーベルト)以上の場合であり、乳幼児において悪影響が出るのは同等以上の被ばくが起こった場合と推定される。

以上より、授乳中女性が軽度の汚染水道水を連日飲んで授乳を持続しても乳幼児に健康被害は起こらないと推定される。また、妊娠中女性が連日飲んでも母体ならびに胎児に健康被害は起こらないと推定される。

しかし、被ばくは少ないほど安心であり、軽度汚染水道水以外の飲み水を利用できる場合には、それらを飲用することを勧める。

今後も水道水の放射性物質汚染(ベクレル値)には注意が必要である。上記の式を使用して、野菜などからの被ばく量も計算できる(発表や報道が、野菜何グラム当たりのBq値に注意が必要)。

【注意】 妊娠中の女性は脱水に注意する必要がある。したがって、喉がかわいた場合は決してがまんせず水分を取る必要がある。スポーツドリンク、ミネラルウォーター、ジュース、牛乳などを摂取する。

・ 授乳中の女性が安定ヨウ素剤を予防服用した場合:

http://jspe.umin.jp/pdf/youso.kanrishishin_20110331.pdf

授乳中女性の被ばく線量が計50,000μSv以上の場合に、安定ヨウ素剤の服用が考慮される。

安定ヨウ素剤の服用が必要な状況では、放射性ヨウ素の母乳を介した児への移行を防ぐため、原則的に直ちに母乳哺育を休止とする。

やむを得ぬ理由で母乳哺育がなされた新生児~乳児に対しては、安定ヨウ素剤投与の時期・回数を確認し、投与後2~4週で児の甲状腺機能(TSH、FT4)を評価する。甲状腺機能低下を認めた際には、直ちに甲状腺ホルモンの補充療法を開始する。

TSH が基準値内でFT4 が1.2ng/dl 以上(生後1~6 か月)、1.0ng/dl 以上(生後6か月以降)であれば甲状腺機能に異常なしと判断する。これ以外の場合、2~4 週間隔で検査を継続する。

TSH が10μU/ml 以上かつFT4 が年齢の基準値未満の際には、直ちに甲状腺ホルモンの補充療法を開始する。

母乳哺育の休止が必要とされる期間については、個々の状況により異なると考えられるので一般的な期間を示すことができない。

****** 問題

胎児の放射線被曝で確率的影響(stochastic effect)はどれか。1つ選べ。

a 小児癌
b 精神遅滞
c 自然流産
d 胎児発育遅延

------

正解:a

・ 確率的影響: 発癌と遺伝的障害には、しきい線量がなく、発症の確率と被曝線量が比例し、被曝線量が非常に小さくても影響が発生する。
・ 被曝なしの胎児が20歳までに癌にならない確率は99.7%であるが、10mGy、100mGyの胎内被曝により、それぞれ99.6%、99.1%となり、その個人が癌になる確率はごくわずかな上昇にとどまり、個人レベルでの発癌リスクは低い。

****** 問題

電離放射線に含まれるのは次のうちどれか。1つ選べ。

a ジアテルミー(高周波電気治療)
b マイクロ波
c ラジオ波
d ガンマ線

------

正解:d

電離則による電離放射線の定義:
電離放射線とは次の粒子線又は電磁波をいう。
1. アルファ線、重陽子線及び陽子線
2. ベータ線及び電子線
3. 中性子線
4. ガンマ線及びエックス線

****** 問題

妊娠と気がついてなかった妊娠7週の患者が、排泄性尿路造影(3方向)を受けた。子宮の電離放射線の被曝線量はどれか。

a 1-2 mGy
b 0.8-1.6 mGy
c <0.001 mGy
d 上記のいずれでもない

------

正解:d

排泄性尿路造影における胎児の平均被曝線量は1.7mGy、最大被曝線量は10mGyである。従って、3方向で検査した場合、平均被曝線量は5.1mGy、最大被曝線量は30mGyとなる。

****** 問題

胎児の放射線被曝で精神遅滞のリスクが最も増す妊娠週数の範囲はどれか。1つ選べ。

a 4~6週
b 8~15週
c 18~24週
d 28~36週

------

正解:b

精神遅滞は8~15週に最も発生し、16~25週にも起こる。しきい値は120mGyと考えられている。100mGy以下ではIQの低下は臨床的に認められていない。ICRP(国際放射線防護委員会、1991)では、8~15週に1000mGyを照射するとIQは30ポイント下がり、重篤な精神遅滞は40%発生するとしている。

****** 問題

500mGy(50rad)の放射線被曝について、正しい記述はどれか。1つ選べ。

a 通常の放射線診断で到達する被曝量である。
b 神経管閉鎖不全のリスク増大と関連する。
c 第1トリメスターのどの妊娠期間においても精神遅滞の原因となる。
d 胎児被曝の時期が妊娠25週以降であれば、精神遅滞と関連しない。

------

正解:d

・ 通常の放射線診断で起こる被曝線量は50mGy以下である。

・ 近年葉酸の摂取が神経管閉鎖不全のリスクを低下させることが知られている。

・ 精神遅滞は8~15週に最も発生し、16~25週にも起こる。しきい値は120mGyと考えられている。100mGy以下ではIQの低下は臨床的に認められていない。

****** 問題

放射線の線量はグレイ(Gy)で表わされる。1Gyに相当するのはどれか。

a 1 rad
b 10 rad
c 100 rad
d 1000 rad

------

正解:c

グレイ(Gy):吸収線量 の単位。 放射線の作用により物質がどれくらいのエネルギーを吸収したかを表すもので、 1Gyとは、物質1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収 があることを示している。

ラド(rad) :古い吸収線量の単位。

1 rad=0.01 Gy  または 1 Gy=100 rad

****** 問題

評価の過程で実施されるCT検査の胎児被曝量が最も大きい疾患はどれか。1つ選べ。

a 子癇
b 尿路結石症
c 虫垂炎
d 肺塞栓症

------

正解:c

Fig7

****** 問題

胎児への放射線の影響で正しいのはどれか。1つ選べ。

a しきい線量未満であっても奇形発生のリスクはある。
b 胎児の発癌に関する放射線の感受性は成人と同じである。
c 妊娠10週以降のしきい線量以上の被曝では精神発達遅滞のリスクがある。
d しきい線量以上の被曝では妊娠4週未満よりも妊娠4~10週の方が胎児死亡のリスクが高い。

------

正解:c.

・ 50mGy以下の被曝は胎児奇形や胎児死亡などの有害事象を引き起こさない。ACOGのガイドライン(2004)

・ 10mGyの放射線被曝は、小児癌の発生頻度をわずかに上昇させるが、個人レベルでの発がんリスクは低いと説明する。胎児の発がんの放射線閾線量は50mGy以上で、成人よりも感受性が高い。

・  妊娠10~27週では中枢神経障害を起こす可能性があるが、100mGy未満では影響しないと説明する。精神遅滞は8~15週に最も発生し、16~25週にも起こる。しきい値は120mGyと考えられている。100mGy以下ではIQの低下は臨床的に認められていない。ICRP(国際放射線防護委員会、1991)では、8~15週に1000mGyを照射するとIQは30ポイント下がり、重篤な精神遅滞は40%発生するとしている。

・ 受精後10日目までの胎児被曝の影響: 流産を起こす可能性があるが、流産せず生き残った胎芽は完全に修復されて奇形を残すことはない。 閾線量以上の被ばくでは、妊娠4週未満の方が胎児死亡のリスクが高い。