ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

後期研修医募集(内科、外科、麻酔科、産婦人科 etc.)

2011年10月23日 | 飯田下伊那地域の産科問題

飯田市立病院では、内科・外科・麻酔科・産婦人科などで幅広く後期研修医を募集してます。

平成24年度は麻酔科1名・外科1名、平成23年度は麻酔科1名、平成22年度は麻酔科1名、平成21年度は産婦人科1名・内科1名・麻酔科1名、平成20年度は外科2名・内科1名・麻酔科1名、平成19年度は産婦人科1名・麻酔科1名が、飯田市立病院の後期研修医として新規に採用され各科で研修中です。各科とも随時募集しており、数多くの応募をお待ちしてます。

当院の麻酔科の後期研修医は、最近6年連続で毎年1名づつ採用されています。麻酔科では、若い医師達が順番に国内留学をして研鑽を積んでます。麻酔科医の大幅増員で外科系医師は非常に助かってます。

当院産婦人科の医師団は、主に、信州大産婦人科より1~2年間の任期で派遣される医師達で構成されてます。これまでに、当院での初期研修を経て、当科で産婦人科後期研修を開始した者が1名、信州大産婦人科に入局した者が計5名いました。また、県外の病院での初期研修を経て、当科で3年間の産婦人科後期研修を修了し産婦人科専門医資格を取得した者も1名在籍しています。また、これまでに2名のベテラン産婦人科医師(日本医大卒、九州大学卒)が縁あって採用され、長年にわたり一緒に働きました。ここ数年間で近隣のほとんどの産科施設が分娩の取扱いを中止し、当科の分娩件数は年々うなぎ登りに増加し続け、最近の分娩件数は月100~120件程度です。毎年、施設を改修しながら分娩数増加に対応してきましたが、それでは対応しきれなくなったため、2014年、新たに北棟を増築しそこに周産期センターを立ち上げました。交通の便の悪い田舎の病院ですが、いろいろな経緯で集まった有能・勤勉な仲間達が大勢いて、抜群のチームワークで日々楽しく働いてます。

リニア中央新幹線の駅が当地にできることが決定し、今は陸の孤島ですが、将来的には当地の交通の利便性は今と比べると飛躍的によくなる筈です。

飯田市立病院産婦人科 後期研修プログラム

 本プログラムは、2年間の初期臨床研修を修了後に、日本産科婦人科学会の認定する産婦人科専門医および母体保護法指定医の資格取得をめざす3年間のコースである。

 当科における後期研修プログラムは、信州大学産科婦人科学教室(塩沢丹里教授)との緊密な連携のもとに実施される。本人の希望により、信州大学産科婦人科学教室または長野県立こども病院にて研修を行い、より多くの症例を経験することも可能である。当科および信州大学産科婦人科学教室において、産婦人科に関する臨床研究を行い、積極的に研究発表(論文も含む)を行う。

 飯田市立病院・産婦人科は、産婦人科医 6名(出身大学:信州大 3名、名古屋市立大1名、大阪市大 1名、鳥取大1名)、助産師50名の診療体制である。地域周産期母子医療センターに指定され、年間約1200~1400例の分娩を取り扱い、年間約50例の緊急母体搬送を受け入れ、広域医療圏内の異常分娩のほぼ全例を取り扱い、臨床各科と協力して多数例の合併症妊娠にも対応している。また、年間約200例の婦人科手術を行い、新規の婦人科浸潤癌症例が年間約50例ある。婦人科内視鏡手術も年間約50例実施している。当院は地域がん拠点病院に指定され、PET-CT、放射線治療設備などの最新鋭の診断・治療機器が完備し、広域医療圏内の婦人科悪性腫瘍のほぼ全例を取り扱っている。

 本プログラムでは、産婦人科診療のほぼすべての領域において、多数の症例を経験し、産婦人科専門医資格を取得するために必要なすべての技能を修得することが可能である。本プログラムの指導医師達の専門分野は、産婦人科のほぼすべての領域をカバーしており、専門医資格取得のために必要十分な指導を受けることが可能である。

 また、地域周産期母子医療センターとしてNICUもあり、本人の希望により、NICUでの研修ができる。新生児科・小児科での正常新生児の健診や未熟児のフォローアップについても研修できる。さらに、当院麻酔科の指導により、産科麻酔(無痛分娩を含む)の研修もできる。消化器外科、泌尿器科などの研修の希望があれば可能な限り相談に応じる。

 当院は、日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修指導施設、日本周産期新生児学会基幹(母体・胎児)基幹研修施設、母体保護法医師指定研修指導医療機関、日本臨床細胞学会認定施設などとして認定されている。従って、本プログラムを修了して産婦人科専門医の基本資格を取得後に、さらに本人の希望により、周産期(母体・胎児)専門医、母体保護法指定医師、細胞診専門医などの各種のsubspecialityにおける専門医をめざして修練する道も開かれている。

指導担当:

○常勤医師:

 山崎輝行( 副診療部長 兼 副医療情報部長 兼 産科部長 兼 周産期センター長、昭和57年信州大卒、医学博士、信州大医学部臨床教授、産婦人科専門医、周産期母体胎児専門医、日本周産期新生児医学会暫定指導医、新生児蘇生法「専門」コースインストラクター、ALSOインストラクター、母体保護法指定医、婦人科腫瘍専門医、がん治療認定医、細胞診専門医) 

 鈴木昭久(婦人科副部長、平成9年名古屋市立大学卒、根羽村出身、産婦人科専門医、専門領域:婦人科腫瘍学)

 宮本 翼(産婦人科医長、平成18年大阪市大卒、産婦人科専門医)

 藤原静絵(平成20年信州大卒、産婦人科専門医)

 大岡尚実(平成22年鳥取大卒)

 松原直樹(検査科副部長、平成9年信州大卒、産婦人科専門医、周産期母体胎児専門医、新生児蘇生法「専門」コースインストラクター)

○非常勤医師:

 塩沢丹里(信州大医学部産婦人科・主任教授、医学博士、産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医)専門領域:婦人科腫瘍学、婦人科病理学。

 宮本 強(信州大医学部産婦人科・講師、医学博士、産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医)専門領域:婦人科腫瘍学。

関連診療科の常勤指導医

 長沼邦明(副院長、小児科部長、昭和53年弘前大卒、小児科専門医、医学博士、信州大臨床教授)

 中田節子(新生児科部長、平成 5年信州大卒、小児科専門医、周産期新生児専門医)

 原 克実(副診療部長、昭和57年信州大卒、麻酔科指導医、ペインクリニック専門医、医学博士)

 岩澤 健(麻酔科部長、平成5年信州大卒、麻酔科指導医)

待遇:

飯田市立病院規定に従う。身分:常勤医(1年ごとの契約更新)。宿舎あり。
募集人数:若干名

後期研修終了後の進路:

研修終了時に病院側との話し合いで決定する。

問い合わせ先:

〒395-8502 長野県飯田市八幡町438番地
飯田市立病院 庶務課 庶務係
お問合せフォームより、もしくはメールkensyu@imh.jp
Tel0265-21-1255(内線2222) Fax0265-21-1266

当科の最近の主な業績:

山崎輝行,波多野久昭,鈴木章彦,菅生元康,中村正雄,関谷雅博,上田典胤,羽場啓子,塚原嘉治,藤井信吾:Normal-sized ovary carcinoma syndrome,14例の病理組織学的解析.日本産科婦人科学会雑誌 47:27-34,1995

Shimojo H, Itoh N, Shigematsu H, Yamazaki T : Mature teratoma of the placenta. Pathol Int 46 : 372-375, 1996

波多野久昭,山崎輝行,折井文香,八木ひかる,生山敏彦:腸チフス合併妊娠の1例. 産婦人科の実際 45:235-238,1996

野口 浩,横西清次,小谷俊郎,山崎輝行,波多野久昭,塚原嘉治,重松秀一:扁平上皮癌優位の下床癌を伴った外陰Paget病の1例.癌の臨床 43:793-796,1997

堀米直人,山崎輝行,神頭定彦,疋田仁志,金子源吾,千賀 脩,宮川 信,波多野久昭:消化管大量出血により発症した絨毛癌空腸転移の1例.飯田市立病院医誌第3号105-107,1997

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:卵巣原発の悪性中胚葉性混合腫瘍の2例.飯田市立病院医誌第4号91-95,1998

山崎輝行,波多野久昭,大平哲史,長沼邦明,津野隆久,朴 成愛,松下雅博,原田 大:胎盤多発梗塞を呈した原発性抗リン脂質抗体症候群の1例,飯田市立病院医誌 第4号:85-89,1998

大平哲史,山崎輝行,波多野久昭,津野隆久,長沼邦明:胎児母体間輸血症候群の1例.周産期医学 29:241-244,1999

山崎輝行:Normal-sized ovary carcinoma syndrome. 臨床婦人科産科 53,774-775,1999

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:膣壁に発生したAngiomyofibroblastomaの2例.日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報 36:391-394,1999

Ohira S, Yamazaki T, Hatano H, Harada O, Toki T, Konishi I: Epithelioid trophoblastic tumor metastatic to the vagina: an immunohistochemical and ultrastructural study. Int J Gynecol Pathol 19: 381-386, 2000

大平哲史,波多野久昭,山崎輝行:頸部に発生したAngiomyofibroblastomaの1例.日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報 37:41-44,2000

大平哲史,山崎輝行,波多野久昭,土岐利彦:特殊な絨毛性疾患,ETT (epithelioid trophoblastic tumor).半藤 保(編),新女性医学大系第37巻 絨毛性疾患,pp315-319,中山書店,東京,2000

松原直樹,山崎輝行,波多野久昭:原発性卵管癌の1例.飯田市立病院医誌第6号121-124,2002

西尾昌晃,実原正明,園原美恵子,赤羽美智子,荒木竜哉,山崎輝行,福島万奈,伊藤信夫:子宮頚部Glassy cell carcinomaの2例.飯田市立病院医誌第8号43-46,2002

Horiuchi A, Itoh K, Shimizu M, Nakai I, Yamazaki T, Kimura K, Suzuki A, Shiozawa I, Ueda N, Konishi I: Toward understanding the natural history of ovarian carcinoma development: a clinicopathological approach. Gynecol Oncol 88: 309-317, 2003

山崎輝行,波多野久昭,小野恭子,実原正明,西尾昌晃,金井信一郎,伊藤信夫:脈管侵襲を伴う子宮頚癌Ia1期における骨盤内リンパ節転移例.飯田市立病院医誌第10号67-70,2004

山崎輝行,波多野久昭,小野恭子,伊藤信夫,金井信一郎,正木千穂,大平哲史,塩沢丹里,小西郁生:不妊治療中に発見された高カルシウム血症型卵巣小細胞癌(大細胞亜型)の1例.日本婦人科腫瘍学会雑誌第23巻163-170,2005

山崎輝行,小野恭子,正木千穂,松原直樹,波多野久昭:帝王切開後の経腟分娩(VBAC)で発生した子宮破裂の3症例.産婦人科の実際第54巻845-849,2005

松原直樹,小倉寛則,竹内はるか,前田知香,山崎輝行:当院で経験した子宮破裂の5例.日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報第45巻49-53,2008

大野珠美,竹内はるか,松原直樹,西澤春紀,山崎輝行,小林隆夫:高度の軟産道裂傷および子宮破裂によりDICを発症した1例.日本産婦人科・新生児血液学会誌第17巻63-68,2008

小野恭子,菊池昭彦,松原直樹:産婦人科臨床の難題を解く―私はこうしている.産褥1か月の胎盤ポリープの扱いは? 臨床婦人科産科第62巻434-437,2008

小倉寛則,前田知香,竹内はるか,松原直樹,山崎輝行:若年女性における卵管留血腫,茎捻転の1例.臨床婦人科産科第62巻757-759,2008

山崎輝行,芦田 敬,松原直樹,古川哲平,宮本 翼,堀澤 信,竹内穂高:帝王切開既往妊婦に発生した子宮破裂の4例.長野県母子衛生学会誌第13巻2-7,2011

古川哲平,山崎輝行,安藤大史,宮本翼,芦田敬:マラリア合併妊娠の1例.長野県母子衛生学会誌第14巻28-33,2012  

飯田市立病院産婦人科の紹介
(臨床婦人科産科2007年10月号、病院めぐり、一部情報を更新)

 飯田下伊那地方は飯田市と下伊那郡14町村で構成され、人口約18万人、長野県最南端に位置し、西は木曽山脈、東は赤石山脈にはさまれ、中央部を天竜川が流れています。飯田市立病院は、一般病床403床、診療科目23科、医師数95名の総合病院として、臨床研修病院、新型救命救急センター、地域がん拠点病院、地域周産期母子医療センターなどの指定を受け、地域の基幹病院として活動しています。

 当産婦人科は、平成元年4月に信州大より筆者(山崎)が赴任し開設されました。開設時のスタッフは産婦人科医1名、助産師2名で、手術室の1室を改装して分娩室とし、小児科病棟の1室を間借りしての非常にささやかな産婦人科診療のスタートでした。平成3年4月に待望の常勤医2人体制が実現し、平成4年10月に現在地に病院が新築移転した時に念願の産婦人科病棟もできました。その後、年々マンパワーも充実し、現在は常勤産婦人科医6名(出身大学:信州大4名、大阪市大1名、藤田保健衛生大1名)、非常勤産婦人科医2名、助産師37名の体制で産婦人科の診療を行っています。最近の年間分娩件数は1200~1400件、年間手術件数は約500件で、県下でも最大規模の産婦人科施設の一つに成長してきました。

 当医療圏の産婦人科の診療は、当院と地域の開業の先生方とで緊密に連携し、開業の先生方は主に妊婦健診と婦人科の一般外来を担当し、当院では主に異常妊娠管理、分娩取り扱い、婦人科手術、悪性腫瘍の治療などを担当しています。

 正常妊娠・分娩の管理では、助産師外来やフリースタイル分娩などを導入し、助産師の活躍の場が広がっています。新生児科、麻酔科などとも連携を密にし、24時間緊急の事態に即応できる体制を組んでいます。

 当院は、PET-CT、放射線治療設備などの最新医療機器が完備し、新規婦人科浸潤癌症例も年間約50例あり、放射線科、外科、泌尿器科などとも連携して多数例の婦人科悪性腫瘍の治療にあたっています。また、腹腔鏡手術、子宮鏡手術なども積極的に行っています。

 当院は、日本産科婦人科学会卒後研修指導施設、日本周産期新生児学会(母体・胎児)基幹研修施設などに認定され、専門医の育成にも力を入れています。現在、産婦人科専門医をめざして研修中の医師が1名、産婦人科専門医資格を取得後に周産期専門医(母体胎児)をめざして修練中の医師が2名在籍しています。今までの実績は、周産期専門医(母体胎児)試験合格者:2名、婦人科腫瘍専門医試験合格者:1名です。

 最近は、当院の周辺の病院でも、産婦人科の閉鎖や分娩取り扱いの中止が相次いでいます。マンパワーの更なる充実を図り、地域での病診連携を強化し、何とかして、この逆風を乗り切っていきたいと考えています。

(臨床婦人科産科2007年10月号、病院めぐり、一部情報を更新)