ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新生児一過性多呼吸(TTN)

2011年10月16日 | 周産期医学

transient tachypnea of the newborn

【概念】 出生後の肺胞内の肺水の排出・吸収遅延によって発症する、比較的予後良好な新生児呼吸器疾患である。新生児にみられる呼吸障害の中では最も頻度が高い。

【症状】 出生直後から認める多呼吸をを主とした呼吸器症状で発症する。重症になると陥没呼吸、呻吟、チアノーゼが出現する。通常は生後1~3日で臨床症状、X線所見ともに改善する。ただし、気胸、新生児遷延性肺高血圧症といった合併症の発症には注意をしておく必要がある。

【診断】
・ 出生直後の多呼吸を主とした症状と胸部X線とで診断されるが、他の呼吸器疾患の可能性を否定した後の除外診断となる。
・ 胸部X線所見: 肺野全体の透亮像の低下に膨張部分を伴うことが特徴的である。

Ttn_2

【治療】 
・ 特別な治療を要さない児も多いが、呼吸障害が強い、あるいは酸素化が維持できない場合は、SpO2モニター下に酸素投与(通常はFIO2 40%以下で十分)を行う。

・ 重症例では、人工換気やサーファクテン投与を行う。。


空気漏出症候群

2011年10月16日 | 周産期医学

air leak syndrome

【概念】 肺胞および気管外への空気漏出によって起こる。

気体の漏出した部位により、
① 気胸(pneumothorax)、
② 気縦隔(pneumomediastrium)、
③ 心嚢気腫(pneumopericardium)、
④ 間質性肺気腫(pulmonary interstitional emphysema)
と区別して呼ばれる。

【症状】 蘇生後あるいは人工換気中の児の呼吸状態が突然悪くなった場合には、まず気胸をはじめとした空気漏出症候群を疑う。無治療の場合には、通常、呼吸障害が進行し、短期間で循環不全が加わりショック状態となる。

気胸: 約1%の頻度で自然に気胸が発生し、不穏状態、多呼吸、チアノーゼなどの症状を呈することがある。胎便吸引症候群、呼吸窮迫症候群、新生児一過性多呼吸などの呼吸器疾患を有する児ではより高率に気胸を合併することがある。人工呼吸管理や蘇生操作も気胸の原因となりうる。

緊張性気胸(tension pneumothorax): 緊張性気胸では肺がしぼみ、縦隔が反対側へおされ、反対の正常の肺も圧迫される。呼吸障害、循環障害によりチアノーゼ、頻脈、血圧低下などの症状を呈し、放置すれば生命の危険な状態となる。

気縦隔: 気縦隔では一般にほとんど呼吸器症状を示さない。

心嚢気腫: 心嚢気腫では心臓の圧迫が起こるため急激に循環不全が進行する。

間質性肺気腫; 間質性肺気腫では肺胞換気が障害されて重篤な呼吸器障害を呈する。

【診断】 胸部X線像で確定診断される。

Tensionpneumothorax_2

緊張性気胸(右)

------

Pneumopericardium

心嚢気腫

------

Pie

間質性肺気腫

【治療】 
・ 呼吸障害が重度でない場合には、高濃度の酸素投与を実施する。

・ 緊張性気胸では胸腔穿刺と持続ドレナージを実施する。

・ 心嚢気腫では救命のため緊急に心嚢穿刺を実施する。

・ 間質性肺気腫では人工換気圧を下げるかHFOを使用する。