五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

紙の衣・お水取り

2007年03月16日 | 第2章 五感と体感
お水取りが終わり、春がやってきました。

奈良の旅は、まだまだ私の心を捉えて放しません。

お水取り(修ニ会・しゅにえ)の練行衆(お坊様)が身につける衣は、紙なのです。
紙衣絞り(かみこしぼり)といって、和紙を棒に巻いて、寒天の汁を絞り、それを40枚ほど張り合わせ、それに木綿の裏地をつけて衣にします。
少々肩がこるそうですが、温かいそうです。

その紙衣を国立博物館で実物を見、幸運なことに、二月堂内で行なわれる昼間の修行でお坊様が着ている姿を拝見する事が出来ました。

紙衣(かみこ)は、清浄な着物とされているそうです。

表装を通して、避けては通れないのは、紙とのお付き合いです。
手漉きの薄い和紙は扱いが手ごわく、水で濡らして裏打をする際に、少しでもバランスの悪い持ち方をすると、すぐに裂けてしまいます。でも、一旦、手なずけてしまうとこんな丈夫なものはありません。

一昔前の掛け軸は、紙は大変貴重なものであったので、細かい紙を重ね、本紙(作品)の裏打をしたそうです。1200年前、紙は今を生きる私達には想像もつかないくらいの貴重な素材だったことでしょう。それを衣にするのですから、そんな神々しいことはありません。

二月堂から東大寺の裏手にある講堂跡は、いつ歩いても懐かしく、心の奥深くから歓びが湧き上がります。東大寺の境内の中で一番好きな場所です。

かつて、鑑真和尚も空海も、ここを歩き、聖武天皇、そして景教を信じていたといわれる光明皇后が東大寺を建立しました。
あらゆる宗教や学問、律法を学ぶ場としてこの東大寺は、日本人のアイデンティティを築きあげてきたように思います
神聖なものを尊び、多様性を受け容れながら、個性を作り上げてきた日本の歴史は素晴らしいものです。

紙衣の知恵を知ることから美しい国が見えてくるように思います。

知ることを恐れない人でありたい。そんなことを思いつつ、春の訪れに感謝。


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コメント
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