今から30年前の1993年3月20日、タイで行われた試合結果です。
WBCフライ級戦:
王者ユーリ 海老原 アルバチャコフ(協栄)TKO9回1分44秒 挑戦者/前王者ムアンチャイ キティカセム(タイ)
*北国ロシア出身のユーリが、前王者ムアンチャイの挑戦を受けるためにタイに渡った30年前の初春。ユーリが「これこそ世界王者だ!」という盤石のボクシングを披露する事に成功。常夏の地でライバルを葬り、防衛記録を2に伸ばすと同時に、その強さを日本国外にも強烈に発信しました。
タイで行われる世界戦と言えば、日本人選手をはじめ、海外の選手にとり勝利が非常に難しいとされる鬼門中の鬼門。年がら年中暑く、湿気が高い。しかも屋外での試合が多く、観衆も地元選手贔屓でアウェーの選手にとり障害が「これでもか!?」と山積されています。そんな中ユーリは、試合前から異常なぐらいに落ち着きを保ち、世界王者として模範すべき姿を見せ続けてくれました。
(敵地タイで、終始落ち着いたボクシングを展開したユーリ)/ Photo: goo Blog
6回までの前半戦を偵察戦に費やしたユーリは、7回からギアを一気に上げていきます。あっという間にダウンを奪い、試合を終わらせようとしたユーリ。とどめを刺そうと攻勢に出るも、あろうことかその回が残り32秒/31秒のところで終了してしまいます。協栄ジムの金平会長は猛烈に抗議しますが、そこでもユーリは沈着冷静さを保ち続けます。
(ライバルに攻撃を仕掛けるユーリ)/ Photo: ボクシング名勝負ブログ
8回を再び偵察戦に費やしたユーリは迎えた9回、一気に試合を終わらせてしまいました。ムアンチャイが打たれ脆いとは言え、ライバルからまたたく間に3度のダウンを奪い一気にフィニッシュ。9ヶ月前の1992年6月23日に拳を交えている両雄ですが、その時はダウン応酬の激しいペース争いが続きました。しかしこの再戦では、ユーリが実力者ムアンチャイに、「実力差」を見せつけ快勝。ライバル戦に終止符を打っています。
(敵地で「横綱相撲(ボクシング)」を見せつけたユーリ)/ Photo: 日本ボクシング専門ブログ
この勝利以降、日本や本場アメリカのボクシング専門誌の誌面では、ユーリと、軽量級のマイケル カルバハル(米)やウンベルト ゴンザレス(メキシコ)、そしてリカルド ロペス(メキシコ)等、軽量級のスーパースター/実力者たちとの夢の対戦話がしきりに持ち上がるようになりました。
憎いばかりに落ち着き、そして強かったユーリ。私(Corleone)はこの試合がユーリのベストバウトだと思います。頻繁にリングネームを変更したユーリですが、デビュー当時は「チャコフ ユーリ」と名乗り、その後「ユーリ 海老原」に変更。この試合では「ユーリ 海老原 アルバチャコフ」の名前でリングに上がっています。