たんぽぽのわがまま映画批評No.5
『シモーヌ』アメリカ/2002
監督 アンドリュー・ニコル
脚本 アンドリュー・ニコル
音楽 カーター・バーウェル
キャスト:アル・パチーノ(ヴィクター)、レイチェル・ロバーツ(シモーヌ)、 キャサリン・キーナー(エレイン)、 ウィノナ・ライダー (ニコラ)、エヴァン・レイチェル・ウッド(娘)
意外にもSF要素の強いコメディ映画だった。
非現実的な発想とストーリー展開。
いや発想はむしろ現実的なのかも知れない。
作品へのこだわりが強いしがない映画監督ヴィクターは、ハリウッドの売れっ子女優となかなかそりが合わない。
映画は、売れなきゃ意味がないという商業主義的業界が受け入れられない。
制作会社ともうまくいかず解雇されたヴィクターの元へ、ハンクと名乗るプログラマーがいきなり現れる。
彼はヴィクターの創造性に共感する唯一の理解者。
彼はヴィクターに一緒に映画を作らないかと持ちかける。
しかし、彼の提案はあまりにも奇想天外だった。
それは、ヴィクターの映画にハンクが創ったCG女優を出演させるというものだった。
年代は明記されていないが、セットやヴクターの作った映画を見るにCGなどまだ普及していない時代と予想する。
CG技術が発展した現代であれば、そこまであり得ない話ではないし。
ヴィクターは「偽物」を映画に出してしまったと罪悪感を抱くわけだが、CG女優シモーヌは瞬く間に世界のトップ女優に成り上がる。
その後ヴィクターの女優ねつ造工作はエスカレートしていく。
元妻で制作会社のトップであるエレインに「あなたが彼女を創ったのではない。彼女があなたを創ったのよ。」と言われ、次第にヴィクターは一人歩きをはじめるシモーヌの存在に振り回されつつある自分に気が付く。
シモーヌは彼の言葉を代弁する、誠実でまじめな理解者であった。
「君といると安心する。」
しかし、センサーを通してヴィクターの動きを反映するそのプログラムはまるで鏡のよう。
きっとシモーヌはヴィクター自身だったのだ。
最初アンドリュー・ニコル監督は二重人格が創られて行く様を描きたいのではと思ったほどだ。
テーマは精神の暗い部分に迫ったものだが、映画全体がユーモラスな雰囲気で囲まれている。
しかし、もう少し危機迫るような場面や展開が欲しかった。
最初から最後まで、安全圏から出ない平和な映画であった。
まぁコメディと言われるくらいだからいいのか。
で、絶世の美女を演じるのが、有名モデル、レイチェル・ロバーツ。
なんでも監督の奥さんなんだとか。
確かに綺麗。
それにしても、アル・パチーノと『シモーヌ』というタイトルだけで渋い映画を期待してしまった。
んん、やっぱり思い込みは良くないな。