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海外ドラマや映画の感想いろいろ書いてます。

ホロウ・クラウン ヘンリー5世 2/2

2016-06-15 20:35:40 | The Hollow Crown
「ヘンリー5世」

The Hollow Crown:Henry V
Based on:Henry V by William Shakespeare
Directed by Thea Sharrock

すっかり夜が明け両国の軍隊が戦いに備えます。
自分たちの5倍のフランス軍を目の前に、臣下たちが互いに声をかけています。
ウェストモーランド伯が言った「本国から1万の兵が来てくれれば」対するヘンリー王の言葉が、
一部ウィキにも掲載されている「聖クリスピンの祭日の演説」のくだりになります。
原文を探そうと「St. Crispen's Day Speech」で検索したところ、オリジナルと現代版を掲載されているサイトがありました。
こちらはその演説の部分です。ここに全文載せようと思ったんだけどあまりにも長いので。
http://nfs.sparknotes.com/henryv/page_184.html

なんだけど、これだけは書かせてください!
この中にある一文
「we few, we happy few, we band of brothers—for whoever sheds his blood with me today shall be my brother.
However humble his birth, this day shall grant him nobility.」
少数だけど我ら幸せな少数は強い絆で結ばれた兄弟だ。
今日、私とともに血を流すものは私の兄弟だ。
身分の低いものであろうと今日からは貴族の出だと認めよう。」


これは、ドラマ「Band of Brothers」(以下、BoB)のタイトルの元ネタなんです。
てな事を、以前BoBの記事を書いていたときにちょっとだけ触れたんです。
まさか、自分でそのヘンリー5世の話を書くとはその頃は思いも寄らなかったので人生って本当にわからないです。(大げさ)

私の永遠の上司、ダミアン・ルイスasウィンターズさん。

余談ですが今でもBoBのページを訪れてくれる方が結構多くて驚いています。
もはやBoBのブログなんてここくらいしか無いからかもしれませんけど、
最近、Huluで再配信しているせいもあるかもしれません。

それはさておき、ヘンリー5世の名演説でみんな頑張っちゃうわけですね。
また話が逸れちゃいますが、私は王様が臣下や兵士たちを鼓舞する演説にかなり弱いんです。
弱いというのは、つまりちょっと泣けてきちゃうんです。
LotRのアラゴルンの演説なんて号泣ですよ。あれはかっこよかったですね。

貼っちゃった。

両国の兵士がにらみ合う中、再びフランスの大使がやってきます。
どう見ても敗北が濃厚だから、身代金を払えば?のお誘いでしたが、ヘンリー王はこれを拒否します。

どれだけ自国の兵士を誇りに思っているかが伝わるような、そんな拒否の返答でした。
王が堂々としていれば自ずと兵士もそれにならうんでしょうね。
そんな王の気持ちが伝わり、大使はもう2度と来ないことを約束して立ち去ります。

このアジャンクールの戦いで勝敗を大きく分けたのは英国軍の弓兵でした。
弓兵の前に杭を打ち込むことで敵の騎馬突撃を難しくさせる作戦です。
これはヘンリー5世の指示でしたが、十字軍の対オスマントルコとの戦いに用いられた戦術だそうです。


ヨーク公が前線の指揮を務め、両軍入り乱れて激しい戦いが続きます。
フルーエレン大尉がオルレアン公に致命傷を負わせる頃にはフランス軍の敗色が濃くなっていました。
オルレアン公が息を引き取り皇太子が剣を抜いて戦場に走っていく様子をじっと見ていたフォルスタッフの小姓くん。
後ろからヨーク公がやってきましたが、その瞬間ヨーク公は背後から刺されてしまいます。
小姓が自分の腕章で血を止めますがヨーク公は息を引き取ります。

それを知ったヘンリー王は怒り、フランスの捕虜を全員殺すよう命じます。

ついにフランス軍が敗北宣言をして戦いは終わります。
フランスの戦死者1万に対し英国軍はわずか25名の戦死者でした。


兵士はみな疲れ果て放心状態ですがヘンリー王は手袋を交換した男を見つけ声をかけます。

お前、いい度胸してんじゃん、と王は無礼を働いた男を絞首刑にする代わりに
手袋に金貨を詰めて返すという粋な計らいをします。
こんな話にも弱い私(泣)ステキな王様です。


エクセター公のこの穏やかな表情がすごく好き。


後日、ヘンリー王は再びフランスに渡り和平の話し合いを行います。
イギリス側の条件のひとつがキャサリン王女との婚姻でした。

ヘンリー王がキャサリン王女にプロポーズをするのですが、これがまたかっこよくてですね。
ホント、何なの、この人。可愛すぎ!そりゃー、王女もOKするわ。
紳士に振る舞いつつ結構ストレートに求婚してるのですが
何と言ってもその時ちゃんと王冠を外すのがもうね。
ホントに、何なの、この人(しつこい)


フランス王はイギリス側の条件をすべて承諾し、百年戦争を続けていた両国につかの間の平和が訪れます。
この婚姻により、子どものヘンリー6世はフランスの王位継承権を持つことになりますが、
フランス王が死にジャンヌダルクが登場し百年戦争が終わるとイギリスは再び内乱の時代、薔薇戦争に突入していきます。

場面は冒頭に出てきたヘンリー5世の葬儀に変わります。
キャサリン妃の腕の中には小さなヘンリー6世が眠っていました。
葬儀に参列していた小姓が年老いた姿に変わり、コロスだと明かします。
手にはヨーク公の血を吸った腕章がありました。

コロスは最後にこの言葉で締めくくります。
「With those plays in mind, we hope you’ll receive this one kindly.」
(どうかこの芝居をお気に召していただけますように)


駆け足でしたが大まかなあらすじでした。
このあたりの系図をいろいろと探してみましたが、うーん、どれもわかりづらいんですけど。


こちらは薔薇戦争。


次はいよいよヘンリー6世からリチャード3世に続いていきますが
リチャード3世配信まで先は長そうです。

ホロウ・クラウン ヘンリー5世 1/2

2016-06-11 10:00:35 | The Hollow Crown
ホロウ・クラウンS1の最後、ヘンリー5世です。

今回はコロスというストーリーテラーによって進められていきます。
コロス役はジョン・ハートで、ラストにちょっとだけ出てきます。

キャストは前回とあまり変わっていないと思いますが
フォルスタッフの小姓だった少年が成長していました。
ドラマの中でもかなり出番があるのですが役名は変わらず「Falstaff's boy」なんですよね。

主なキャストです。

ヘンリー5世・・・トム・ヒドルストン
エクセター公・・・アントン・レッサー
ウェストモーランド伯・・・ジェームズ・ローレンソン
ヨーク公・・・パターソン・ジョゼフ
ピストル・・・ポール・リッター
ニム・・・トム・ブルック
バードルフ・・・トム・ジョージソン
フルーエレン大尉・・・オーエン・ティール
キャサリン・・・メラニー・ティエリー
コロス・・・ジョン・ハート

ヘンリー5世は国内の政治的な問題を扱った話ではなく対フランス軍との戦いに終始しているので
今までで一番わかりやすいというか、入りやすいストーリーになっていました。
エドワード3世から始まり、ヘンリー4世時代にお休みしていた百年戦争の再開です。
今まで映画やドラマはもちろん、小説や漫画でも目にしてきたエピソードをパズルのように組み合わせると
百年戦争の歴史になるんじゃないかと思っていますが、組み合わせる根気がなかなかねー。

白馬の王子様。もう王様だけど。

それでは前回同様、ざっくりなあらすじと感想です。

The Hollow Crown:Henry V
Based on:Henry V by William Shakespeare
Directed by Thea Sharrock

Tom Hiddleston as Henry V
Anton Lesser as Duke of Exeter
James Laurenson as Earl of Westmoreland
Paterson Joseph as Duke of York
Paul Ritter as Ancient Pistol
Tom Brooke as Corporal Nym
Tom Georgeson as Bardolph
Owen Teale as Captain Fluellen
Mélanie Thierry as Princess Katherine
John Hurt as the Chorus/Falstaff's boy as a man

ヘンリー5世の葬儀の場面から始まり、コロスによって回想となります。


教会の所領を没収する法案が可決されるのを恐れたカンタベリー大司教たちが王の関心をフランスに向けさせるため、
英国によるフランス王位継承権の要求が正当なものだと進言します。
そこにヘンリー5世のもとにフランスから大使がやってきます。
彼はフランス皇太子からヘンリー5世への贈り物と称してテニスボールを持参してきます。

私のお気に入りのエクセター公。すごくいいのよー。物静かだけど強い意志で王様を支えていました。

遊び人だった王をバカにしているのですが、これには王も激怒。
このボールを砲弾に変えて100倍返しするからな!と宣戦布告しフランス遠征を決意します。


同じ頃、ヘンリー5世に拒絶されたために生きる気力を失ってしまったフォルスタッフが静かに息を引き取ります。
それを見届けたフォルスタッフの小姓と仲間のピストルやニム、バードルフも兵士としてフランスに渡ります。

フォルスタッフの小姓だった少年。


ニム役のトム・ブルック。どこかで見た顔だと思ったらビリーだった。

そうして舞台はフランスに移ります。
キャストではフランス王、シャルルとしか表示されていませんが多分シャルル6世じゃないでしょうか。
と、思ったらウィキに書いてありました。

フランス王と王太子ルイ、そしてオルレアン公らが話し合いをしています。
王はエドワード黒太子の血筋であるヘンリー5世を恐れていましたが、ルイがこれを一喝しています。


ヘンリー王の使者としてエクセター公がフランス王に謁見します。
公はヘンリー5世のフランス王位継承権が正当である事を伝えフランス王に退位を要求しますが、
フランス王の返答は娘のキャサリン王女をヘンリー5世に嫁がせ持参金として少しだけ公爵領を添えるという事でした。
それを知ったヘンリー5世はアルフルールで攻城戦を開始します。


ヘンリー5世は兵士たちを鼓舞しながら進撃していき、町を陥落します。
この時のヘンリー5世の演説は名言になっていました。
「Once more unto the breach, dear friends, once more;
Or close the wall up with our English dead!
In peace there’s nothing so becomes a man,
As modest stillness and humility;
But when the blast of war blows in our ears,
Then imitate the action of the tiger:」
「もう一度突破口から突き進むんだ、友よ。さもなければイギリス人の死体で穴を塞いでしまえ。
平和な時は物静かで謙虚な紳士だが、戦争の爆風を耳にしたときには虎のごとく行動するんだ。」

一方、戦闘中に教会に盗みを働いたバードルフはヨーク公によって処刑されることになります。
それを知ったピストルたちがフルーエレン大尉に助けを求めますが、軍の規律は絶対だと退けます。
実際にはヘンリー5世が指示していました。略奪はもちろんフランス人を侮辱することも禁じています。

その頃、キャサリン王女が次女から英語を教わっていました。
彼女はヘンリー王に嫁ぐことを覚悟していたのかもしれません。


しかし長期に渡る進軍は兵士は弱っていき疫病による被害も広がっていきます。
そんな時、フランスの大使が王の伝言を伝えにきました。
要約すると
「今までは本気じゃなかったけどこれからは本気出すよ。でも身代金を払えば許してあげるけどどうする?」
それに対するヘンリー王の返答は
「疫病で軍隊が弱っちゃったからカレーまで撤退するんだよ。邪魔しないでくれる?
邪魔したらどうなるかわかってるよね?」


フランス軍は大軍で英国軍を迎え撃とうと準備をします。
アジンコートの戦いが始まろうとしていました。

英国軍の惨状を知ったフランス軍は始まる前からお祝いムードを漂わせ、英国軍はお通夜の雰囲気が漂っています。
そんな兵士たちにヘンリー5世自ら野営地をまわり声をかけ励ましていますが、
途中、兵士たちの生の声を聞こうと一兵士に変装します。
変装するためにトマス・アーピンガム卿に上着を借りるのですが、
トマス・アーピンガム卿なる人物がよくわからなくてですね、
調べたらヘンリーの祖父の時代から貢献している人なんですね。歴代の五港長官にも名前がありました。

変装したヘンリー王はふたりの兵士と話をします。
彼らは戦争の責任はすべて王にあると厳しく批判したのでヘンリー王もついキレたりして、
ひとりの兵士と、この戦いが終わったら決闘しようと手袋を交換します。


夜明けが近づくころ、ヘンリー5世はひとり神に祈ります。
原文です。

Oh God of battles, bolster my soldiers' courage. Don’t let them know fear.
Rob them of the ability to count before the numbers against them overwhelm their courage.
And just for today, Oh, Lord, just today don’t think of the crime my father committed in seizing the crown!
I’ve transferred Richard’s body to a new grave and on it poured more tears of remorse than it has shed drops of blood.
I’ve hired five hundred almsmen to hold up their withered hands to heaven,
praying for my pardon twice a day throughout the year.
And I’ve built two chapels where solemn priests sing continually for Richard’s soul.
I will do more, though nothing I can do is any good since this remorse comes after the crime, asking for pardon.

ざっくりですが・・・
「彼らに勇気を与えてください。恐怖を抱かせないでください。
敵の数が彼らを圧倒する前に数える力を奪ってください。
今日だけはどうか父が王冠のために犯した罪を忘れてください。
私はリチャード2世の遺体を新しい墓に移し、父が流した血よりも多くの涙を流しました。
日に2回、許しを請いました。聖職者が絶えずリチャードのために歌を歌うようチャペルを建立しました。
私の思いが徒労に終わろうと償いを続けていきます。」


ヘンリー5世はずっと良心の呵責のようなものを抱いていたんでしょうかね。
実際にヘンリー4世が埋葬したロンドン郊外から、ウェストミンスターに改葬したそうです。

いよいよ夜明けを迎え、戦いが始まります。

続きます。

ホロウ・クラウン ヘンリー4世 2/2

2016-06-08 07:27:39 | The Hollow Crown
The Hollow Crown:Henry IV
Based on Henry IV, Part1 Henry IV, Part 2 by William Shakespeare
Screenplay by Richard Eyre
Directed by Richard Eyre


続きです。


王からの和解の勧告を受けたウスター伯ですが保身からその言葉を握りつぶし、開戦となります。
両軍入り乱れる中、フォルスタッフは器用に避けながらその場から遠ざかっていきます。
ハル王子が戦いの最中に剣をなくしてしまったのでフォルスタッフに剣をよこせと言うので
銃ならかしてやるとフォルダーごと王子に投げますが中身は酒瓶でした。
このあたりって喜劇なの?
私はもうハラハラしっぱなしで、後ろからフォルスタッフをどつきたくなりましたけど。
そんな事をしているうちに敵に囲まれ馬から落ちた王子は傷を負ってしまいます。
父王が離脱しろと言いますが、兵士の士気が下がるからと拒否し、とりあえずテントに行くことになりました。

一方、ホットスパーたちも苦戦を強いられていました。
ウスター伯も馬から引きずり降ろされてやられてしまいます。

激戦地から少し遠ざかったところでハル王子はホットスパーとばったり会い、対峙することになります。
そこにはちょうどフォルスタッフもいて、彼は木の陰からこっそりと見守っています。


ホットスパーが名乗った時のハル王子のセリフがちょっとかっこよかったです。

Why, then I see.
A very valiant rebel of the name.
I am the Prince of Wales; and think not, Percy,
To share with me in glory any more.
Two stars keep not their motion in one sphere.
「ああ、なるほど。それは勇敢な反逆者の名前だ。
私はプリンス オブ ウェールズ。
もはや私と栄誉を分かち合えるとは思うなよ、パーシー。
二つの星が一つの軌道で回ることはできない。」


ハル王子の言葉に陰から「よく言った!」と応援するフォルスタッフ。お前は明子姉さんか。
そしてあまりの激戦にフォルスタッフはその場で死んだふりをしています。

満身創痍のハル王子はかなり苦戦しましが一発逆転でホットスパーを倒し、
倒れているフォルスタッフのもとに。
フォルスタッフが死んだと思っているハル王子は彼の死を悼みつつその場を離れます。

ハル王子が立ち去った後起き上がったフォルスタッフは自分の剣でホットスパーを刺し、
舌先三寸で自分の手柄にしてしようとします。
ハル王子にはフォルスタッフのウソだとわかっていましたが、必死のフォルスタッフに絆されたか、
もしくはただ面白がっていたのかもしれません。
ウソで褒美がもらえるなら自分も取り繕ってやる、とフォルスタッフのうそに乗ることにしました。

ハル王子の弟、ジョンも唖然とした様子です。

王側が勝利し和解の勧告を捻じ曲げたウスター伯は死刑を言い渡されます。
でもちょっと具合が悪そうな王様でした。


ここまでが第一部。
第二部では、ホットスパーは倒れましたが反乱は収まらずヨークの大司教たちが兵をあげます。
ホットスパーの父、ノーサンバランド伯も参戦しようとしますが、
妻やホットスパーの妻に説得され、様子を見ることにします。


イアン・グレン演じるヘンリー4世の側近、ウォリック伯登場。大好きな役者さんです。

ダウントン・アビーではちょっと嫌な成金男を演じていましたが最後は潔く身を引いたりしてかっこよかったです。
そういえばゲーム・オブ・スローンズにも出ていました。

そしてハル王子はといえば、再びロンドンに現れポインズと遊んだりしています。
それを知ったヘンリー4世はかなりショックを受けています。親孝行しないとだよ、ハル王子ー。

サービスショットか?

しかし以前のハル王子とはちょっと違うんです。
書物を前にひそかに学んでいる場面があります。
王となったときに英知を発揮できるよう準備をしているんでしょうね。

ヘンリー4世は眠れぬ夜を過ごしていました。
リチャード2世から奪い取った王冠が同じように奪い去られてしまうかもしれないという恐怖を
ヘンリー4世はずっと抱いていました。
この場面、ジェレミー・アイアンズの長い独白ですが、とても見事でした。


一方フォルスタッフは反乱に備え徴兵を言い渡され、旧友のシャロー判事のもとを訪れます。
また、ハル王子の弟、ランカスター公ジョンの活躍で反乱軍を捕らえ終結します。
反乱側の要求をすべて受け入れるように見せかけて油断させるというだまし討ちな作戦だったのですが
お互いの被害を最小限におさえるにはこれが最良の手段だったように思います。

ジョン王子、立派になりました。

その報告にヘンリー4世は喜びますが、その場で倒れてしまいます。
王冠を枕元に置きベッドの横たわるヘンリー4世を見たハル王子は王が死んでしまったと思い込み
枕元の王冠を取り上げます。


この時のハル王子の有名なセリフです。
This is a deep sleep indeed -
this is a sleep that has removed the golden ring from the heads of many English kings.
底なしの眠りよ。これは数多くのイギリス国王から黄金の冠を奪い去った眠りだ。

王子は王冠をかぶり玉座に座ります。
そして今まで泣くことができなかった王子が父王の死にやっと心から泣くことができたように見えます。


実はヘンリー4世は眠りについただけだったので目を覚ますとハル王子が王冠を奪ったと誤解をしてしまいます。
ハル王子を責める父王でしたが、王子の心からの言葉を聞き和解をします。
「父上の命を奪った王冠と正面から対峙したかった」とハル王子。


父王はハル王子に、王になったら父の味方を自分の味方に引き入れるよう忠告し、
ハル王子が見守る中、永遠の眠りにつきます。


ヘンリー4世が死去しハル王子がヘンリー5世になると知ったフォルスタッフは
自分の時代が来たと盛り上がり、ハル王子のもとに駆け付けます。


一方、ハル王子は父王の教えを守ります。
これからは生まれ変わり国に尽くすことをみんなの前で誓います。
王子はこの誓いを生涯守ることになります。
そして、それはすなわち王子時代と決別するという事でした。


ハル王子(ヘンリー5世)が自分を厚遇してくれる事を疑わないフォルスタッフ。
しかし王子に冷たくあしらわれ、果ては追放を言い渡されてしまいます。


この場面、ものすごく切ないんです。
フォルスタッフが縋るように「My King! My God! I’m talking to you, my heart!」と叫ぶのですが、
「I know you not, old man. 」お前など知らぬ、とハル王子。
だけど何だか感情が消えた表情で、言葉も棒読みな感じで。


この結果を招いたのはもちろんフォルスタッフ自身の増長なのですが、
増長させたのはハル王子で、王子もそれを分かっていたと思うんです。

酒場の寸劇で同じやりとりがありました。
王子はおそらく本心ではないだろうけど、王冠を引き継いだ以上自分の感情で行動することは許されません。
王子とフォルスタッフはとても不思議な関係だと思いました。
王子にとって友人であり人生の師でもあるような気がしますが、そのどれでもないような。
でも王子はかなりフォルスタッフを気に入っていたんでしょうね。
フォルスタッフの世渡り上手なところは認めていたし敬意もはらっていたようにも思います。

「ヘンリー4世」は正当な世継ぎではなくリチャード2世から王位を奪還した事への様々な葛藤と
放蕩息子の成長物語なんだと思います。
そしてハル王子はフォルスタッフとの関係を切ってしまう事で現実に生きる事を選択したように思います。
フォルスタッフたちと過ごした時こそハル王子にとっては夢のような甘い時間だったのかもしれません。


追放を言い渡していますが、生活に困らないようお金を渡すことを約束しています。
王子の態度にかなり衝撃を受け、放心状態なフォルスタッフでドラマは終わり、
ヘンリー5世へと続きます。


ホロウ・クラウン ヘンリー4世 1/2

2016-06-06 07:31:28 | The Hollow Crown
いよいよHuluでホロウクラウンS2「ヘンリー6世」の配信が始まりましたが、
ヘンリー5世すらもうすっかり忘れている私なので誰が誰だかあれ?な状態でした。
これはイカンと思い、そういえば感想もリチャード2世で終わってたなと思い出し、
ちょっとおさらいをすることにしました。


こちらはリチャード2世の感想です。
ホロウ・クラウン リチャード二世

前回はローリーさんが演じていたヘンリー4世は今回ジェレミー・アイアンズが演じています。
エピソードごとに演じる役者さんが変わるのも私が混乱してしまう一因なんですよね。
ただでさえ、名前が覚えられないのに顔も変わるとか難しすぎます。

今回もキャストがとってもゴージャスでした。

ヘンリー4世・・・ジェレミー・アイアンズ
フォルスタッフ・・・サイモン・ラッセル・ビール
ハル王子・・・トム・ヒドルストン
クイックリー夫人・・・ジュリー・ウォルターズ
ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシー・・・アラン・アームストロング
ヘンリー・パーシー(ノーサンバランド伯の息子、通称ホットスパー)・・・ジョー・アームストロング
※このパーシー親子は実の親子なんですね。
パーシー夫人・・・ミシェル・ドッカリー

ほかにもいろいろいろいろです。

舞台のセリフ回しをドラマで演じるってすごく難しそうです。
英国の役者さんはみんな上手いわけですよね。

それにしてもトムヒがね、とにかく王子なんですよ。なんというかVery Princeとでも言うのでしょうか。
みんなが王子様扱いする気持ちがよくわかります。
スマートだし品があるし身のこなしはきれいだし、何か世の中不公平だわ。

それではざっくりとあらすじと感想です。

The Hollow Crown:Henry IV
Based on Henry IV, Part1 Henry IV, Part 2 by William Shakespeare
Screenplay by Richard Eyre
Directed by Richard Eyre

Jeremy Irons as Henry IV
Simon Russell Beale as Falstaff
Tom Hiddleston as Prince Hal
Julie Walters as Mistress Quickly
Alun Armstrong as Earl of Northumberland
Joe Armstrong as Hotspur
Michelle Dockery as Lady Percy

リチャード2世を廃位させて王位についたヘンリー4世ですが、戦乱は絶えませんでした。
さらに世継ぎのハル王子の放蕩っぷりに頭を悩ます毎日。
ヘンリー・パーシーの息子、ホットスパー活躍を聞くたびに彼が息子だったらなあ、とちょっと現実逃避しちゃっています。


スコットランド軍を打ち破ったホットスパーは捕虜を引き渡す代わりにウェールズ軍の人質になっている
義理の弟のモーティマーの身代金を要求しますが、王はこれを拒否。
勇敢でハル王子よりも王にふさわしく見えるホットスパーに王は恐れていました。
リチャード2世から王位を奪った事で自分も同じように奪われるのではないかという疑念でした。

一方、ハル王子はいつも老騎士フォルスタッフたちとつるんで居酒屋に入り浸ったり遊びまくっていますが
彼に言わせると、不良息子が突然立派な王様になれば期待されてなかった分喜ばれるというズルい演出を狙っているんだそうですよ。
劇中でハル王子は「毎日がホリデーだったらありがたみがない、めったにないからうれしいんだ。」と言っています。
だから素行の悪さも計画のうちで、意表をついて挽回するためにやってると。


そんなハル王子に、王はめったに姿を見せないからこそ姿を現した時にありがたみが増すんだと父王が言っていました。
どちらの考え方も間違っていないと思いますがただ、ハル王子は今のところ職務放棄しちゃってるのがね。
みんな国のために頑張ってるのに、王子ったら。

ある日、酒場にいたハル王子のもとにお城の使者がやってきます。
ノーサンバランド伯の兄弟でホットスパーの叔父、ウスター伯が姿を消したと、
それはすなわち、内戦が始まるという知らせでした。
モーティマーがリチャード2世から正当な王位継承者を言われていた事を知ったホットスパーは、
ヘンリー4世を王位につけた恩も忘れたかのように冷遇するヘンリー4世に不満を爆発させ、
ウスター伯たちと共謀し、反旗を翻しました。


ここが潮時だと感じた王子はお城に戻ろうとしますが、
どうせ怒られるならここで予行練習していけということになり寸劇が始まります。

始めはフォルスタッフが父王を演じていましたが、
役を交代してハル王子を父王を、フォルスタッフがハル王子を演じます。
ハル王子を演じるフォルスタッフが申し開きをする中で
「フォルスタッフを追い出さないで、王子の仲間を追放しないで」と言います。
それを聞いた父王演じるハル王子がすごく泣きそうな表情をするんです。
そして「追放するよ」と答えるんです。
この後に起こる事を思うと、とても切なくなる場面です。


さて、お城に戻った王子は父王の怒りに触れますが、王子は何があってもヘンリー・パーシーを倒すと誓い、
その誓いを信じることにした王はハル王子に軍の指揮権を与えます。
何だかんだ言ってもお父さんは長男に甘いんですね。


戦いを前にハル王子はフォルスタッフを始め仲間たちを兵士として雇います。

ところで、ホットスパー、かなり乱暴で単細胞なのですが何となく憎めない男で私は結構好きなんです。
メアリー、違った、パーシー夫人と。


兵士として雇った農民たちを連れて戦場に向かうフォルスタッフ。
名誉を重んじるのが英国の騎士であり、彼も騎士ですが名誉について自問自答します。
「名誉とは何だ。もし刺されたら名誉が傷をなおしてくれるのか。死んでしまったら名誉など無意味だ。」
騎士にあるまじき考えかもしれませんが、すごく現実的ですよね。


フォルスタッフという人物。
大酒飲みで女好きで臆病で狡猾だがウィットに恵まれ時として深遠な警句を吐く憎めない人物として
上演当時から現代にいたるまで人気があるとウィキに書かれていました。


一方、ホットスパーの陣は父のノーサンバランド伯が病で倒れ参戦できず、軍もまとまりを欠いてしまいます。
そんな時、王の使者がやってきて王からの和解の勧告を伝えます。
ホットスパーは今までの不満を捲し立てますが、最終的には検討するから明日まで待って、と返事をします。

こうして書くとただ不満言いたいだけの構ってちゃんみたいですね。

続きます。

Cumberbatch on playing a villain

2016-05-05 11:08:44 | The Hollow Crown
5/3にBBCが公開したリチャード3世についてのベネディクトのインタビューです。


字幕をつけてくれた方がいらっしゃったので訳してみました。
その後にBBC Radio4でもシェイクスピア400年と表して監督の話を含めた動画が配信されましたが、
ベネディクトの部分ほぼ同じ内容だと思うので、リチャード3世のセリフのみ入れました。

もう本当に毎度の事ですが、
難しい部分もあったので限りなく怪しい訳です。

BBC NEWSはこちら。
Cumberbatch on playing a villain

Radio4はこちらです。
The Hollow Crown: Shakespeare's relevance 400 years on


リチャード3世は最も素晴らしい役のひとつで、役者にとって名誉な事だよ。


大切なのは桁外れなパワーの研究なんだ。
強固に権力を欲すればどう道を誤り孤立していくのか。


彼の選んだ生き方はとても明確なんだ。僕はそれをはっきりと示したい。
障害者であることで彼が世間や神に対してどう怒りを持っていたのかだけではなく、
彼が行動を起こそうとする前に特定の人たちが彼のたどる道をどう書き綴ったのかもね。


あからさまな権利や不当な権力、ジェンダーとのバランス、あらゆる問題を抱えている。
その中心にあるとても大きな問題を共有していくんだ。


だから、僕たちは400年たった今でも僕たちはまだシェイクスピアの虜なんだと思うよ。
ハッピーバースディ、そして安らかに。彼はずっと生き続けるよ!




Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this sun of York
我らを覆っていた不満の冬もようやく去り、ヨーク家の太陽エドワードによって栄光の夏が来た。

And all the clouds that lour’d upon our house
In the deep bosom of the ocean buried.
わが一族の上に不機嫌な顔を見せていた暗雲もいまは大海の底深く飲み込まれたか影さえない。


And thus I clothe my naked villainy with odd old ends stol'n out of holy writ,
And seem a saint....when most I play the devil.
こうやってわがむき出しの悪に聖書から盗み出した古い布切れを着せるのだ。
悪魔を演じきっている時こそ、聖人に見えるわけだ。

(via mollydobby.tumblr.com)

以上です。

ここにある解説が系図もあってわかりやすかったです。
すごく長いので私もまだ読み切れていませんけど・・・・
リチャード3世の物語

最近リチャード3世が再評価されているようですけど、
歴史上の人物が実はこうだった、という話が増えてきてるように思います。
技術も進んで新たな資料が出てきたりといった事も要因のひとつなんでしょうね。

忠臣蔵で有名な悪役、吉良上野介も実はすごく良い領主だった、という話もありました。
吉良邸、うちの近所なんですけどね。
だからというわけではありませんが、でも再評価はちょっと嬉しかったです。