ナショナル シアター ライブ「フランケンシュタイン」
ラストです。
かなり長くなってしまいましたが、最後に感想も書きました。
ベッドの上に仲良く座るふたり。
「もしかして俺も天才なのか?」
「あなたは何が得意なの?」
「俺は、同化が得意だ。見たり聞いたりして学ぶんだ。
最初は何も知らなかったけど徐々に破滅の方法、憎む方法、辱めや屈辱の方法を学んだ。
そしてマスターからとうとう他のいなかる生物にはない最高のスキルを学んだ。
うそをつく方法だ。」
「うそ?」
「今夜、俺はある人物に会った・・完璧だ。理解してくれてありがとう。
だが彼は約束を破った、だから俺も破る。エリザベス、本当にすまない。」
「何を・・」
瞬間、エリザベスはドアに向かって逃げ出しますが、気づくのが遅すぎました。
クリーチャーはエリザベスをベッドの上に投げ出し、そのまま彼女をレイプします。
その時、ヴィクターが部屋に飛び込んできます。
「ヴィクター!」エリザベスが叫びます。
「エリザベス!」
クリーチャーはそのままエリザベスの首を捻り殺してしまいます。
「No!」ヴィクターが叫びます。
クリーチャーは窓に飛び乗ったあとヴィクターに向かって振り返ります。
「彼女はすごく良かったよ!」
ヴィクターはピストルをクリーチャーに向けます。
「俺を撃て!俺を殺せ!」
クリーチャーが叫びます。
JLM博士。
ヴィクターは引き金を引けませんでした。
そしてクリーチャーは窓から立ち去ります。
ヴィクターはエリザベスを抱きしめます。
そこにクラリスと使用人が入ってきました。
「旦那様!」
「彼女を私の部屋に運んでくれ!」ヴィクターが叫びます。
「彼女はもう死んでいますよ。」
「運ぶんだ!」
「だけど、旦那様、彼女は・・・」
「私は彼女を戻せるんだ、クラリス、まだ呼び戻せる!」
ヴィクターは使用人たちに運ぶよう命令をし、同時にクラリスが部屋を出ます。
「早くするんだ!私は生き返らせる設備を持ってる。彼女はまだ温かいし血も失っていない。早く!」
使用人たちがエリザベスを運ぼうとしたその時、お父さんがクラリスと一緒にやってきます。
「ご主人様、彼を止めてください。」
「ヴィクター、何をしようとしているんだ。お前はまだ病気なんだよ。やめなさい。」
「ご主人様、エリザベス様が亡くなったんです。」
「何てことだ、かわいそうなエリザベス。お前が殺したのか?」
「違う!」
「今すぐ彼女をベッドに置いてカバーをかけてあげなさい。」
使用人たちはそのようにします。
「私はエリザベスを戻す事ができるんです。」
「どういう事だ?」
「彼女を生き返らせるんです。私を信じてください。」
「お前は何を言っているんだ。」
「彼は狂っています、旦那様。」
「私は狂ってなんかいない。あなた方の理解を超えた力を持っているんだ。
それでも狂っていると言えるのか?」
「何て不信心な事を、ヴィクター。いいかげんにしなさい!」
ヴィクターはクリーチャーが立ち去った窓に向かい叫びます。
「私はいつでもお前の後ろにいるからな!」
「彼を止めなさい。」お父さんが言います。
ヴィクターは逃げようとしますが使用人たちに制止されます。
「何たる事だ。最初はウィリアムで次がエリザベス、こんなにも死が続くとは。
ヴィクター、お前は心が病んでいる。」
「私は最高の知性を持っているんです!卓越した知性です。」
「彼を連れて行きなさい。もう顔を見たくない。彼は怪物だ。」
使用人たちがヴィクターを連れ出します。
お父さんはその場に跪いて泣き崩れます。
「神よ、御赦しを。」
「落ち着いてください、ご主人様。」
「私はこの世に何をもたらしてしまったのだ?」
「最善を尽くしましたよ。」
「私は失敗してしまった。」
場面が変わります。
クリーチャーが一人で登場します。
スクリプトの説明はこうあります。
「北極圏の氷冠。荒れ狂うブリザード。大きな月を見下ろす場面。
クリーチャーはほとんど何も着ていませんがずだ袋を担いでいます。
寒さに悩まされている様子はありません。彼は私たちに話しかけます。」
「私たち」とは客席です。
「俺の心はまっ黒で最低だ。かつて俺の心は美しい夢でいっぱいだったが今は復讐の溶鉱炉だ。
3年前に生まれたとき、太陽の熱が嬉しくて笑い、鳥の鳴き声に涙した。世界は俺の豊饒の角だった。
(豊饒の角は、その中から豊かな実りが尽きる事なく湧き出でてくると言われる神話です。)
それが今では霜と雪の荒れ地だ。」
クリーチャーはずだ袋から銀のカラトリー、皿、ピューターのゴブレットとナプキンを取り出し
氷の上に広げていきます。そして新鮮な肉を皿の上に置きフラスコからワインを注ぎます。
「息子は父になり、支配者が奴隷になる。俺はタタールとロシアを通り抜け黒海を横断し、
彼をここまで導いてきた。大天使を通り過ぎ氷の上までたどり着いた。
俺たちはこれからもずっと北へ向かうんだ。彼の犬は死に補給品も使い果たされた。
だが俺たちは協定を守らなければいけない。彼は俺を破滅させるために生き、俺は導くために生きる。
来なさい、フランケンシュタイン!
俺は夢を見た。壮大な空の下、俺たちは山を越えてハイキングをしているんだ。
俺たちは一緒に歩きながら俺に生きる方法を教えてくれるんだ。間違いを回避する方法や女性に求婚する方法を。
そのために彼を見つけ出したのに俺を追い払った。なぜそんな事をしたんだ。なぜ俺を追い払ったんだ。」
そこに毛皮に包まれたヴィクターが現れます。彼は凍傷を負っていました。
後ろには犬ぞりがありヴィクターがそれを引いていますがかなり衰弱していました。
「来なさい!どうした?ああ、寒いのか?見捨てられたような気がするか?」
ヴィクターはあまりにも疲れ切っていて答えることができませんでした。
彼はクリーチャーの方によろめきます。
「来なさい、偉大な探検家よ。食い物だよ。アザラシの肉だ。探検家の食い物だ!」
ヴィクターは這いながら皿に顔を近づけて食べ始めます。
クリーチャーは座ってそれを見ていました。
「あなたは才能を欲した。見てごらん、創造主よ、見てごらん。
なぜあなたは俺を犯罪者のように扱ったんだ。」
「お前は俺の妻を殺した。」
「あなたは私のものを殺した。私を追いつめた彼らが犯罪者だ。
それとも、彼らは高潔なクリスチャンで俺は蹴飛ばされて堕胎した?
その倫理はどこにあるんだ。それは愚かさへの侮辱だ。どの馬鹿が偏見は乗り越えられると言ったんだ?」
「お前は自分自身でそれを招いたんだ。」
「俺が?どうやって?俺は作られたいと望んだか?袋の中の汚らしいものから
俺を作るよう頼んだか?俺は異質だ。異質だとわかってるんだ。
俺はみんなと同じであろうとしたんだ。だけど俺は違うんだ!
なぜ俺は誰かではありえないんだ。なぜ人間は俺を嫌うんだ。
俺を憐れんでくれたのはエリザベスだけだ。美しいエリザベス。
まだ彼女の唇の感触が残っている。苺のような唇。彼女の温かい息遣い、彼女の太もも・・・」
ヴィクターはクリーチャーの足元に向かって進もうともがきますが、
衰弱している彼は倒れてしまいます。
「立ち上がれ!極点に行くんだ。磁石の発生源に。発見だ。
どうだ?暗闇に光をもたすんだ。立って、立って!」
ヴィクターはそりを引いたまま雪の中でうつ伏せになります。
「マスター?」
ヴィクターは動かないままです。
「マスター、死んだなんて言わないでくれ。もう体力がないのか?まだ始まったばかりだぞ。」
クリーチャーは「awake」とヴィクターの腕を持ち上げます。
「おいていかないでくれ、俺を独りにしないで。あなたと俺は2人でひとつなんだ。」
クリーチャーは跪き、そっとヴィクターを抱きかかえます。
「あなたが生きてるうちは俺も生きるんだ。あなたが死ぬなら俺も死ぬ。マスター、死とは何だ?
どんな感じがするんだ。俺も死ねるのか?」
「俺の残酷な行為を許してくれ、フランケンシュタイン。お願いだ。
衝動に突き動かされて自分を止めることが出来なかったんだ。
月が俺を引き込んだ、孤独な月が。もう戻ることはできない、このまま進むだけだ。
マスター、ワインだ、飲んで。」
クリーチャーはヴィクターの口元に赤ワインを流しますが、ワインは雪に中に流れていきます。
クリーチャーは嘆き悲しみます。
上段、JLM博士とベネクリーチャー。下段、ベネ博士とJLMクリーチャー。
「俺はあなたに愛されたかっただけなんだ。俺の心すべてであなたを愛していたのに。俺の哀れな創造主。」
すると突然ヴィクターが息を吹き返します。
「マスター!やはりあなたは俺を愛してくれているんですね。」
「愛とはなんだ。私にはわからない。」
「俺が教える!」
「お前は私より愛を理解している。お前にある感情が私にはないのか?」
「わからないからじっくり考えよう!」と嬉しそうなクリーチャー。
「愛をわかちあえるチャンスはいつもあったのに、私はそれを遠ざけていた。
人のぬくもりをバラバラに切裂いてきた。
憎しみなら理解できる。無と絶望だ。私の運は尽きた。だがお前が存在の意義をくれる。
お前と進み続けよう。歩き続けるんだ。お前を破滅させなければ。」
「Good boy. その意気だ!俺の不幸な血統を終わらせるんだ。」
クリーチャーが離れていくとヴィクターはそりを持ち上げてクリーチャーの後を追います。
「来なさい、科学者よ。俺を破滅させるまで。自分の作品を破滅させるんだ。来なさい!」
ゆっくりと進むヴィクターの前で飛び跳ねるクリーチャー。
The End.
舞台はこれで終わります。最後は2人でゆっくりと消えていきます。
余談になりますが、このあとのカーテンコールで出演者がお辞儀をしますが、
この時のベネディクトが輝くような笑顔で(笑)
しかも、博士の時は毛皮のフードがお辞儀するたびにぽふっとかぶさるのがツボでしたね~。
でもこれはみな同じ印象を持っていたみたいなのでちょっと安心(笑)
さて、ここから感想です。
結局、スクリプトのセリフをほとんど訳した形になりましたが、
宗教的なものや詩的な表現が多いのできっとあちこち間違っていると思いますが、
毎度の事なのでもはや言い訳はしません(笑)
そして、どうせなら最初からちゃんと訳せばよかったーとちょっと後悔しています。
日本語字幕になかったセリフがたくさんあって、とても興味深かったですし、
これを踏まえてもう一度観たいと思いました。
ジョニー・リー・ミラーとベネディクトはかなり対照的な印象でした。
おつきあいしてくれた友人たちも両方観たのですが、
「クリーチャーも博士もベネさんだと上品できれいになるね」と言っていました。
そうなんです!
つまり、JLMのファンを敵にまわすような発言ですが正直に言ってしまうと、
JLMは「がさつ」なんですよ。
言いかえれば、人間味あふれたキャラクターなんです。
特にクリーチャーは彼が演じると本当に可愛くて子供のようでした。
対するベネディクトは完全にイッっちゃてるんですね。博士もクリーチャーも。
なのでベネディクトのほうが矯正不可能な怖さを感じました。
私はベネディクト博士のほうがしっくりきましたね。
とにかくこの博士、人を愛せない人間だということがひしひしと伝わってくるんですよ。
どこか壊れている天才、それでいて子供のような仕草もあちこちあって。まさしくサイコパス。
JLMの博士はエリザベスと結婚してちゃんと家庭を持てばかなり更生するんじゃないかと思えますが、
ベネ博士は、もう絶対無理だろうと(笑)しかもこの人そんなことこれっぽっちも望んでいないし。
そんな博士が唯一心を開き対等に会話ができたのがクリーチャーなのかなーと。
クリーチャーも同様にJLMはあどけなさとか無垢な部分を感じるので、
ちゃんと愛情を持って教育すればまっとうな人間になりそうに思いますが、
ベネクリーチャーはこのまま人類から隔離しないとものすごく危険な雰囲気です。
裏がありそうな頭の切れるクリーチャーです。
最初にベネクリーチャーから観た友人も「ベネクリーチャーのほうが怖かった。」と言っていました。
最後は主人と奴隷の立場が逆転したように思わせていましたが、
クリーチャーがヴィクターを先導し、彼を生かしていくという意味では逆転かもしれないです。
博士はこれからクリーチャーを通じて愛を教わっていくでしょうね。
ラストのクリーチャーのセリフ、JLMだと本当にせつなくていじらしくて、
「愛されたかった」との言葉がしっくりきました。
でもベネクリーチャーだと本当にそう思ってるの?と疑わしくなります(ヒドイ)
全ての不幸の始まりはやはりヴィクターがクリーチャーをおいて逃げ出した事でしょう。
あそこでちゃんと対応していればこんな事にはならなかったので、
最後にふたりで旅立っていくのはもしかしたらヴィクターの償いなのかもしれません。
原作では、ヴィクターは救出した船で死んでしまいクリーチャーは行方不明の結末なので、
この舞台はかなりいろいろな事が想像(妄想?)できる希望を持ったラストですね。
下世話な話ですが、
私はJLMクリーチャーから観たのですが、エリザベスをレイプする場面がものすごくリアルで、
これ、ベネクリーチャーもやるの?とちょっと慄いていましたが、
ベネディクトはまったくもって淡泊でした(笑)
だからJLMの博士も、本当は女好きなんじゃないの?とか思っちゃうんでしょうね。
いえ、そこが人間味を醸し出す要因だと思いますよ。
そして!
忘れてはならない博士の衣装。ベネディクトは本当に時代物の衣装がよく似合っていて、
画像がほとんど無いのが心底残念でなりません!
ベネさんにまったく興味のない友人も「似合う。」と呟いたくらいですから。
特に結婚式のあとの衣装が好きですね。
今回そこの場面もYoutubeから無理やりキャプチャーして貼りましたが、小さくて小さくて(涙)
しかし、4回も観たくせにこんな感想しかし書けずに申し訳ないです。
ひとまずここで終わりにしますが、
舞台を観た方もそうでない方も感想を頂けたら嬉しいです。
ツーショットまとめてみました。