どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

麦秋、Blu-rayを鑑賞して...あらためて溜め息...(´д`)

2016年09月11日 17時10分00秒 | 映画
どのシーンも美しく鮮明、コントラストも良く効いてシャッキリとして気持ちイイです(^_^)

その中で、今回改めて感じ入ったシーンをご紹介!

末娘である紀子(原節子)の結婚相手を巡って、兄・康一(笠智衆)が、母親・志げ(東山千栄子)、妻・史子(三宅邦子)と鋭く対立する場面です。

兄は母と妻を呼び寄せ、結婚相手をスッカリ気に入った旨を告げると、母が相手の年齢はと問い...。

42歳(話しとは関係ないけど、この時の40代は明治生まれだったのか〜(^_^;)と聞き、母は一回りも年が違うのかと表情を曇らせると...。

贅沢なんか言えないという兄に、母は可哀想と...。

欲張り過ぎじゃないかと問い詰めていく兄...。


笠智衆さんの表情の推移が凄い!

上の4枚の画像を見比べれば判る通り、顔つきはほとんど変わらないように見えるほど微妙なんですが、機嫌が次第に曇って悪くなっていく...空気振動ほどの違いでしかないが、これが実によく伝わってくる。

もちろん身体も微動だにせず、手振り身振りもありません。

こういうシーンを見る度に思い出すのは...それまで大部屋俳優で脇役専門だった笠智衆さんが、「父ありき」で主役とも言える父親・周平役に抜擢されたとき、小津さんから言われた有名な言葉です。
ぼくの作品には表情はいらないよ。表情はなしだ。能面で行ってくれ

それをストレートに思い起こさせてくれる凄いシーンです。

能面の表情を演出する手法に「テラス」(面をやや上に向ける)と「クモラス」(面をやや下に向ける)というのがあるらしいです。

微妙な傾きによる陰影の差で表情変化を表現する...笠智衆さんは只管に実直愚直に小津さんの指導のまま演技したとの事ですが、この幽玄さに舌を巻くばかりです...。

ちょっと無理繰りかもしれないですけど、「シン・ゴジラ」でのゴジラにも同じ要素を感じます。モーションキャプチャに野村萬斎さんを起用したと聞いたとき、上記の演技手法を思い起こしました。

野村さんは本来モーションキャプチャに必要ないゴジラの面を被って演技しています。

恐らく能面の「テラス」「クモラス」も念頭に入れて演技されているのかと...。

シン・ゴジラでのゴジラは本当にアクション性が少ない。街を蹂躙し侵攻する姿なんかウッカリすると山車でも引いてるように見えます。

大きく動くのは米軍機による破壊的な爆撃に対するものと、終盤でのヤシオリ作戦によるリアクション程度です。

従来よく見られたジャイアンの如くガキ大将のように手を大きく振り回し大股で歩くようなアクションは皆無です(^_^;

まさに幽玄性を帯びた神のような佇まいの呉爾羅です。


話しは「麦秋」に戻りますが、もう一つ今回発見した「ハッ」とさせられた構図。

前述の三人の対立のあと、しばらく沈黙してしまうのですが、笠智衆さんの奥に見えている板塀の丸い節が三つキレイに並んでいます。

これって丸で無言を表現する三点リーダーじゃないですか???(^_^;

偶然とは思えない...小津さんの仕掛けには、毎度驚かされるばかりです(*^o^*)