どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

馬、鑑賞

2019年03月17日 20時30分00秒 | 映画
「黒澤明DVDコレクション」30巻で一旦完結、先日コンプリートしましたが、延長して10巻が追加(^_^;

追加分までフルコンプは考えていません(まぁ珍しい作品ばかりなので何だかんだ買っちゃうかも(^_^;)が、山本嘉次郎監督作「馬」だけは観たい思いを募らせていた作品だけにすぐ購入しました(^_^)


この作品、一応は山本監督作ということになってるけど、数作掛け持ち状態であまりタッチしてなくて、制作主任(助監督)だった黒澤明さんにかなりの割合を撮影も編集も任せたらしく、実質的に監督作と言っても良いくらいなものなんだそうです。

もしかしたら「黒澤明 DVDコレクション」の中で一番価値の高い一作かもしれません。

ストーリーは詩情豊かに一年四季を通し、少女・いね(高峰秀子さん)とその家族、そして飼育を依託された馬との交流を描くというもの。

タイトル通り、とにかく馬の描写が素晴らしい!


馬の群れの躍動感たるや...後々の戦国を舞台にする時代劇を彷彿とさせます(*^o^*)

舞台は馬の産地・岩手なんですが、その景観と風習や祭もキッチリと織り込まれ、個人的に出身地でもある私にとって嬉しいものでした。

雄大な岩手山...。

住居部分と馬小屋がL字状に一体となっている、この地方独特の「曲り屋」。

私の親戚の家(祖母の実家)も同じ構造の家屋でした...本当に懐かしい(*´艸`*)

ナマハゲそのものなんですが、岩手では「スネカ様」という同様な風習が...これは知りませんでした。

そして今や盛岡を中心に大々的なイベントと化している「さんさ踊り」も!

バッチリお囃子にのって踊る姿が収録されていて、これは資料的価値も大きいんじゃないかと。

いや〜思った以上に岩手の描写が丁寧で驚きました(*゜ロ゜)

そして本作のハイライトとも言える、主演・高峰秀子さんの乗馬シーン!

大釜停車場(現JR大釜駅)からバスマット(この時代に...しかもこんな田舎で...ってのも凄いんですが(^_^;)製造のため旅立つ弟・豊一を...。

汽車と併走しつつ見送るというダイナミックなシーン!

自分の知る映画・ドラマ・アニメのシーンだけでも「ALWAYS 三丁目の夕日」「いだてん」「ちはやふる」と何作も思い浮かぶほど、見送りシーンの定番ですが...ひょっとして本作が原点?

走り出しアップのシーン以外はスタントマンがやってるらしいですが、その時の撮影秘話を高峰さんが著書「わたしの渡世日記」に書き記されています。
脚本には、いとも簡単に「いねが、裸馬をカッ飛ばして云々...」とあるけれど、私ははじめてお馬サマに乗るのである。

乗馬経験も無く、事前に練習したワケでも無い、そんな覚束ない中での一発勝負だったらしい...今じゃ無謀すぎてちょっと考えられません(^_^;案の定、大変なことになってしまったらしく...
「ハイッ」と、また山本嘉次郎の声が掛かった。助監督の銀ちゃんがいきなり馬のお尻に石を投げたからたまらない。ビックラした馬はビョン!とはね上がって疾風の如く走り出した。<中略>私はどうやったら馬がとまるのかも教わっていない。私は馬の首にしがみついていたが、身体は徐々に横倒しになってゆくばかり...。

全速力で疾走する馬から落馬なんて...想像しただけでも恐ろしいのですが、危機一髪の直前、奇跡的に馬は自ら走るのをやめて事なきを得たそうです...(´д`)
黒澤明は私を抱きしめてしゃがんだまま、私の背中を、まるで赤ン坊をあやすように撫でたり、叩いたりして、荒い息を吐いていた。
 黒澤明の強い、しっかりとした両腕に抱かれた私は、彼の首すじにしがみつきたい気持ちを抑えながら、なんともいえない安心感に、身体の力がフニャフニャと抜けてゆくのを感じていた。


黒澤さんと高峰さんは本作を契機として恋愛関係となるのですが...両者にとって早すぎた出会いは哀しい結末となってしまいます...(´д`)

そんな要素もあって、本作にはいろんな想いが含まれているのが感じ取れ、ファンとしても嬉しい一作なのです(*^m^*)

惜しむらくは...作品内容ではなく、音質の悪さですね。とにかくボリュームも不安定だし、全体的にとても聞き辛い...所々なにを話しているのか判らない。

せめてそこをカバーするため字幕があれば良いんですけどねぇ...。