ここは天神さん。菅原道真公をお祀りする京都の北野天満宮である。
紅白の梅がこぼれんばかりに咲いている。
美しすぎて、ほろほろと酔ってしまいそうだ。
枕草子で清少納言は、「花の咲く木は紅梅が一番だ。紅色が濃くても
薄くても趣がある」と言っている。
私は、恐れ多いが、それにちょっと付け加えたい。
「紅梅の美しさは白梅があってこそ輝くのである」と。
白梅の中に少し紅梅が混じるくらいが、私的には一番美しいと思える。
梅の花がさまざまに咲くように、それを愛でるにもいくつかの呼び名が
あるようだ。
まだ春浅く寒い頃に、二、三輪の花を探しながら鑑賞することを「探梅」
(たんばい)と。
少し暖かくなり七、八分咲きのちょうど見頃の花を観賞することを「賞梅]
(しょうばい)と。
また、いよいよ暖かさが増し、満開となった花を惜しむように鑑賞する
ことを「送梅」(そうばい)と言うのだそうだ。
この、こぼれんばかりの梅はちょうど「賞梅」の頃であった。
ふっくりとして、玉のような蕾がまだあちこちにある内が一番の見頃だと
言うことだろう。
それにしても、簡単に言い表せないさまを、一語で言い当てる日本語は
本当にすばらしい。