いつの頃からか、体中を突き抜けるような、衝撃的な物に出会わなくなった。
それなりに、「きれいだ」「美しい」「びっくり」という物には出会うのだが、
衝撃が走るほどではない。
今までに生きて来た中で、いろいろな物を見聞きして、感動する心が摩耗して
しまったのだろうか….
ところがある日、とあるジュエリ-工場のショップを覗いた時だ。
私の体に衝撃が走ったのである。
松田聖子の言う「ビビっときた」って、そんなものじゃない。
それは、王冠を頭上に戴いたピンクの鳩だった。
白い胸、ピンクの羽、翼にピンクのダイヤ、目は黒ダイヤ、口ばしと王冠は
ゴ-ルドだ。(もちろん、イミテ-ションだが)
身の丈5cmの、この小さな鳩によくこれだけの装飾を施したものだと感心する。
しかも、このポッポ、最高にそれが似合っている。
本当に鳩王国が存在するなら、そこの立派なプリンセスだ。
そういえば、5、6才の頃か、母の鏡台で金のネックレスを発見した時と同じような
衝撃だ。
その煌(きら)めきは、私の脳裏を離れることはなく、今でもあの時出会った母の
ネックレスの美しさにかなう物には出会わないのである。
しかし、このピンククラウンポッポは、「小さい」「きれい」「かわいい」の三冠だ。
母のネックレスの煌めきとは違った魅力をもって、私の心の奥底で忘れかけていた
“夢見る少女心”を見事に引っ張りだしたのであった。