「子どもの取り違え」って
このくらいドラマ入っててもいいと、確かに思いました。
「もうひとりの息子」75点★★★★
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テルアビブに暮らす18歳のヨセフ(ジュール・シュトリュク)は
イスラエル国防軍の大佐と、医師を母に持つ裕福な家庭に育った。
兵役のために血液検査を受けたヨセフは
なぜか「再検査」と言われる。
一方、パレスチナ人の18歳ヤシン(マハディ・ザハビ)は
車の修理工の父と母を持ち、小さな村に生まれたが
村に病院を建てたいと、医師になる勉強をする青年だ。
そんな二人に、ある驚愕の事実が知らされる。
二人は、18年前、病院で取り違えられた子どもだったのだ――!
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「子どもの取り違え」という
奇しくも是枝監督「そして、父になる」と同じテーマ。
が、こちらの状況はより複雑かつドラマチック。
だって
パレスチナ人とイスラエル人(ユダヤ人)の間での取り違えなんですからねえ。
家族のパーソナルなドラマ要素も持ちつつ、
対立する宗教と民族の、いつまでも解決しない悲しみに
一石を投じたい、という意味合いが大きく、
映画としてのひだの深さを感じる良作でした。
「そして~」とは当然、いろいろ違うんですが
おもしろかったのが、
取り違えの事態が発覚したとき、まずダンナが妻に言うセリフが同じなこと(苦笑)
どんな国でもどんな状況でも
“人間“の共通点は多いんだなあと感じました。
あと、こちらの作品では取り違えられた息子たちが
18歳とほぼ成人しているのもポイントで、
親の苦しみというよりも、
血か環境か、己のアイデンティティーを探す息子たちの話が中心軸になってますね。
ふたつの家族の職業、環境の違いは
「そして~」と同じドラマ要素ですが
加えて息子たちの個性の違いも魅せる要素なんですわ。
特にパレスチナ人として育てられたヤシン君が、
えらく勉強ができてハンサムなのだ(笑)
片方のヨセフ君は、比べてちょっともっさりしてるんだけど
実父から音楽の血を受け継いでいて
そのことがとてもうまく活かされるシーンには
本当に胸の奥が「じん」としました。
テーマが同じだからって比べるのは無粋っちゃ無粋だけど、
繊細さと細部では「そして、父になる」がより上回り、
ひだの深さとドラマでは、本作がよりよい。
だから、点数は難しいけど同点(笑)。
まあもう一度見たいのはどっちかと言われると
こっちです。
ちなみに背景となるイスラエル/パレスチナ問題については
「基礎知識」的で、説明などはないので
ドキュメンタリー
「いのちの子ども」(11年)を観ると
助けになると思います。
★10/19(土)からシネスイッチ銀座で公開。ほか全国順次公開。
「もうひとりの息子」公式サイト