ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マイク・ミルズのうつの話

2013-10-16 23:16:32 | ま行

マイク・ミルズ監督のまなざしって
いつも、優しいよね。

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「マイク・ミルズのうつの話」69点 ★★★☆


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「人生はビギナーズ」マイク・ミルズ監督が、
日本のうつ病の若者5人を取材したドキュメンタリー。

「なぜ、東京で?」の答えは
映画にも少し出てきますが、

日本の友人が抗うつ剤をごく普通に飲んでいたことや、
製薬会社が日本で「うつは心の風邪」という
啓蒙キャンペーンをしていたことへの驚きなどが発端のようです。


いまや身内や友人・知人、職場の同僚や上司に、
うつの人がいないなんてあり得ない時代ですから
誰もにとって、切実で、とても重要なテーマでしょう。

それに
マイク・ミルズ監督の視線というのは
優しくて、穏やかで、軽やかで
映画も決して陰うつだったり、重い感じではないんですね。

でも、当人たちのつらさ、ヘビーさが
決して甘いものではないこともわかる。

5人の若者たちは
それぞれ自宅や通勤先にカメラを許し、
相当に正直に素直に、いまの状況を語っていて

「どん底」からは少し回復しているとは思うけど
しかし、まだまだ辛いただ中にいるわけですからね。

いまの自分の姿をカメラに収めてもらうことで、
何かをブレイクスルーできるのではないか

そして
同じ「うつ」で悩んでいる人々にも
なにかできるのではないかと考えているのかなと、感じました。


でも、なによりこれを観て感じたのは
「どこかストレンジなニッポンの姿」。

もちろん病気が奇妙なのではなく、

映画に登場する若者たちの礼儀正しさや他人への気遣い、
冷静な自己分析や、病を克服しようとする向上心などが
外国人である監督の視線を通して、
とても際だって見えるところ。

それは外国人が
ニッポンの通勤ラッシュの満員電車を「奇妙・・・」と見るのと
同じ「ストレンジ」かもしれない。


日本人が格別「うつ」になりやすいとは
専門家も断言はしないけれど、

「生真面目さ」「几帳面さ」「気遣い」などの日本人の美徳が
いまの時代の風潮との軋轢を生み
それが
うつの大きな要因になっているのでは?と
どうしても感じずにいられませんでした。

あとちょっと残念なのが、撮影時が2006年だということ。
いまの状況、少し変わってきてると思うので
また近況を撮ってほしいですね。


★10/19(土)から渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「マイク・ミルズのうつの話」公式サイト
コメント
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