ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

終わりゆく一日

2013-10-20 19:45:56 | あ行

こんな雨のどよーんとした日曜日に、ピッタリな映画というか、
かなり好き。


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「終わりゆく一日」75点★★★★


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スイス・チューリッヒ在住の映像作家トーマス・イムバッハ氏が
自分の仕事部屋から延々と外を映した、
分類すればドキュメンタリー映画になる作品。

ほぼ全て定点観測で
早回しなどを使い、
サササササーッと流れる雲、高速で走り去る電車や、

自分の興味をひく物
――通り向かいに勤めてるらしい
スタイルのいい女の子――などを映してる(苦笑)

それらの映像に、
自分宛にかかってきた留守番電話に吹き込まれた
様々な人からのメッセージがかぶさる、という
それだけの映画なんです。

しかも111分もある(笑)

しかーし!
これが意外なまでにおもしろいんですわ。

実際は80分くらいで一度飽きてきたんですが、
すぐに盛り返した。


まずおもしろいのが
この監督が、本当に「窓から追える範囲」でしかモノを映してないってこと。
気になる女の子も、視界から外れればそれまでだし(笑)

こういう経験って、誰にでもあると思うんです。

ウダウダと外に出たくない休日とか
仕事場の窓からいつも見る風景。
そこから先を追わない、そこだけで閉じた世界。


そして、なんともスゴイのが
監督がこれを15年間!撮影し、記録してきたということ。

ゆえにここには“流れゆく時間”が、映されているんですね。

そして
留守電のメッセージだけで、
「ああ身内の誰かが亡くなったんだな」とか
監督の人生模様が、すべてわかっちゃうという(笑)

しかもメッセージの羅列によって、
あきらかなる「ダメんず」っぷりまで赤裸々に記録されちゃってるんだから(苦笑)

壮大な私小説のようでもあり、
相当にパーソナルな内容。

なのに、こうまでおもしろいのは

「こういう感覚、わかる」という共感とともに
どこか人を“のぞき見”してるような
欲望が満たされるからかもしれない。


普段、なかなか意識できない
“去りゆく時間と人生”が確かに写る興味深い作品です。
ぜひお試しあれ~。


★10/26(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「終わりゆく一日」公式サイト
コメント
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