アーバンライフの愉しみ

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凡庸なるゆえに~伊藤潤著「峠越え」

2014年04月30日 | 読書三昧
信長でも秀吉でもなく、家康こそが天下人たりえた理由とは?
新刊展望2011年7月号~13年6月号連載



物語~信長の同盟者として甲斐武田家を滅ぼした家康は、信長の招きに応じて安土城を訪れ、その後堺に遊ぶ。その頃、信長は本能寺において光秀の謀反により命を落とす。家康の逃避行がはじまる・・・。

伊藤氏はいつものことだが、歴史の大きな流れを淡々と描く。
これは、時として淡白な読み心地となってしまうのだが、歴史を概観する場合、むしろこうした描き方が理に適っている。

つまり、あれこれ細かいことまで触れられると、背景としての歴史の流れに目を奪われ、肝心の主人公が生き生きと動き出さないからだ。

こうした物語を読もうという読者は、信長の去就も家康との関係も知ってのことだから、そうした土俵の上で、生き生きと活動する主人公たちの物語を期待しているのだ。その点で、この小説は成功していると思った。
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