アーバンライフの愉しみ

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過酷な現実~山崎豊子著「運命の人」

2015年01月02日 | この一冊
昨年9月、惜しまれながら他界された山崎豊子さんの「運命の人(1-4)」をご紹介します。
沖縄返還交渉にまつわる「外務省機密漏洩事件」を圧倒的なスケールで描ききった労作に深い感動を覚えます。



著者は、この小説の執筆に9年間を要したといいます。
また、巻末にリストアップされた資料は160余点に及びます。これらの資料を読みこなしつつ、幾多の人々へのインタビューを通して、事件の真実に迫る作業は、書くこと以上に、地道で困難なものだったに違いありません。

また、例えそれが国民の利益に合致するものであっても、外交交渉における密約を暴露したからとして、それを告発した新聞記者を貶め、彼とその家族の人生を破壊した権力犯罪のすごさを見せ付けられました。

特に、特定秘密保護法が施行され、「何が秘密なのか秘密です」という笑うに笑えない事態が現実化した今日、この本の持つ値打ちは一層、輝きを増しています。

加えて、米軍基地の7割が置かれている沖縄で、今また、辺野古に巨大基地が建設されてようとしている厳しい現実を直視する意味でも貴重な一冊となるでしょう。ご一読をお勧めします。
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