日本共産党委員長だった不破氏の労作。全6巻1,910頁の大作。
副題に「巨悪の成立と展開」とある。
今年は、ソビエト革命100年だが、革命を成就させたレーニン亡きあと、覇権主義に毒されたスターリンは、国内外における大粛清(テロル)を行って個人独裁を確立するとともに、近隣諸国の併合や東欧の属国化を推し進めた。
また、欧州に対する米国の圧力を削ぐ狙いから、朝鮮戦争を唆(そそのか)すとともに、我が国に対しては内応者を使って武力闘争をあおるなどの干渉政策を推し進めた。
これらの誤った方針は、長期にわたって内外の革命運動に打撃を与え、ロシアにあってはソビエト連邦の崩壊を招く結果となった。
本書は、コミンテルン(国際共産主義運動)の書記長だったブルガリア出身のディミトロフ氏の日記を縦糸に、ソ連崩壊後明るみに出た各種の秘密文書を横糸に、スターリンが果たした負の遺産を世界史の観点で見つめなおした力作である。
読了まで2年ほどかかったが、そうした点から現代史の100年を外観できたのは幸いであった。
また、敗戦処理の隠された逸話(在満邦人の棄民政策やシベリア抑留など)にも新たな光が当てられており、その点でも興味深かった。