春知るや サイゴン単車は ガスを噴き
馬糞 Bafun
サイゴンで最初に驚くのは、都心の道路に群れ走る50
ccバイクの洪水である。
三人乗り四人乗りも少なくない。
歩道にも乗り上げて走り去る。
信号も少ないが、効果も少ない。
よく、事故が起こらないものだと思う。
赤信号に固まったバイク群は、仮面ライダーのようなかっ
こよさはないが、鬼気迫る威圧感がある。
これも、フランス植民地建造物とならぶミスマッチな観光名
物である。
屈辱と偽ブランドと公害が観光資源だというのか。
屈辱の都サイゴン、フランス風チャイナ殖民都市サイゴン・・・。
サイゴンホテルの朝食レストランから、すぐ近くにメコン川が
見えた。
そこだけが、昔からのベトナムを感じさせてくれるようであった。
ベトナムを去る前に、メコンの岸にゆこうと思い立ち、残され
たわずかな時間を計って出かけた。
泥水がごみを押し流してゆく。
陰惨な戦争のにおいがするようだった。
戦後60年の日本は世界に冠たる先進国であるが、ベトナム
の戦後は今も飢えている。
遠くから手を振っている赤帽のチャリタクのあんちゃんが見え
たが無視した。
しかし、結局つかまった。
友達だからただで乗せてやるというのだ。
10分しか時間がないと断ったが、「大丈夫、乗れ」というので、
乗ることにした。
バイクの洪水の中に入り込む。
それだけで迫力満点だった。
街の景色も違って見えた。
10分の満足があった。
ベトナムは仏教国だというが、共産国に仏教があるのかと思
いつつ、知らぬが仏の馬糞であった。
一角をぐるっと回って、1万円を要求された。
面倒なので6千円をご祝儀に、徒歩徒歩と引き上げた。
ああ、サイゴン・・・。陥落の都・・・
天晴れ、投げ縄で鴨を捕らえた観光ゲリラ隊長のVサインは、
余裕だった。
馬糞のVはアホだった。
しかしである。
安全、安心、信用は商業の三大栄養素というべきである。
サイゴンにはこれがない。
教育もないであろう。
その未来に発展、繁栄はないと確信した。
空港内の店はもっとひどかった。
バンコクの5倍から10倍、日本の倍ほどの値段である。
店員は、まったく売る気がなく、形だけの店であった。
紙幣に傷があるからだめとも言われた。
どれが紙くずでどれが紙幣かは店員が決める。
インフレ紙幣を集めて飲んだサイゴンビールを最後に、
二度と来ないであろうサイゴンを後にした。
しかしベトナムよ、Web2.0革命という情報ゲリラが主導する
新しい時代を恐れるがよい。
天知る地知る子知る我も知る。
そのことをこそ、チャイナの埋もれた歴史から学ぶがよい。
馬糞 Bafun