高瀬ダム近くの登山口から北アルプス三大急登の一つ、ブナ立て尾根を登った稜線上に烏帽子岳の鋭鋒が聳えている。烏帽子岳から槍ヶ岳に至る登山道は、裏銀座コースと呼ばれる北アルプスの人気縦走ルートです。
その烏帽子岳へ最初に登ったのは今から44年前、昭和55年8月でした。職場の同僚だったA君とI君を誘い、三人で裏銀座コースを三泊四日で縦走したのです。
二日目に泊った双六小屋では、「富士山吉田大沢の大規模な落石で、死者12名、負傷者29名の大惨事山岳遭難が発生」というニュースを聞いた事は今でも鮮明に覚えています。
昭和55年8月11日(月) 烏帽子岳~鷲羽岳~笠ヶ岳縦走
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ブナ立て尾根の登山道から高瀬ダム湖
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前烏帽子岳山頂?
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烏帽子岳山頂
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山頂から南沢岳(右手前の山)方面
2回目の烏帽子岳は、平成4年9月に単独で烏帽子岳~七倉岳を縦走し、七倉ダムへ下山した。この翌週には妻と二人で、針ノ木岳~七倉岳を縦走し七倉ダムへ降った。七倉登山口の食堂に私が2週続けて顔を見せたので、お店の女将さんから「地質調査でもやってるんですか?」と不審げ気に尋ねられた思い出があります。
平成4年9月5日(土) 烏帽子岳~七倉岳縦走
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南沢岳山頂
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南沢岳から烏帽子岳(左手前の尖った山)
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南沢岳から立山・剣岳方面
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不動岳から南沢岳
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不動岳から船窪岳方面(左奥の山は針ノ木岳)
3回目の烏帽子岳は、令和元年8月に妻と二人で烏帽子岳から裏銀座コースを三泊四日で縦走しました。この時は2日目以降雨に降られて辛い山行でしたが、それも今では良き思い出です。この時の山行記録が私のブログに書かれていたので、下記に転載してみます。
令和1年8月18日(日) 天気=晴れ後曇り
高瀬ダム~烏帽子岳~烏帽子小屋
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07:57高瀬ダム→ 08:03~101濁沢キャンプ地→ 08:20~26ブナ立て尾根登山口→ 09:28権太落とし→ 11:23~30三角点→ 12:49~13:10烏帽子小屋→ 13:45~14:00烏帽子岳→ 14:38烏帽子小屋
私が最初に裏銀座コースを縦走したのは40年以上昔の話です。あの頃はまだ山を始めたばかりで、職場の仲間のI君とA君を誘って烏帽子岳から笠ヶ岳まで縦走したのだが、初心者ばかりの3人で良くも歩けたもんだと今では懐かしい。
長い前置きになったが、昨夜車中泊した梓川サービスエリアからJR穂高駅へ行き、駅から歩いて5分程の所に在る登山者用無料駐車場に車を停めた。その後列車で信濃大町駅まで行って、 駅前からタクシーで登山口の高瀬ダムへ向かった。
タクシー代は¥8,300円で、道中運転手さんがよもやま話に「先週は天気が良くて、沢山登山者が来てくれましたけど、韓国の人は随分減りましたね。でもあの人達は大声で煩いし、来てくれない方がいいですよ。」何て話もしていた。私も昔、白馬岳のテント場に泊った時、隣に韓国人パーティがテントを張り夜中まで煩かったので、運転手さんの気持ちがチョットは判る。
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登山口の高瀬ダム堰堤上
タクシーは、駅から30分足らずで高瀬ダムの堰堤上へ着いた。堰堤上には若い二人組の男性が先着していたが、サッサと準備を終えアッいう間に居なくなった。我々も準備を終えると彼らの後を追うように出発する。
堰堤を渡ると直ぐに長さ400m程のトンネルを通過する。トンネル内は蛍光灯の灯りでヘッドライトを出す事も無かった。トンネルを抜けると、不動沢に架かる吊橋を渡る。吊橋を渡った所には、濁沢キャンプ場が在る。粗末な簡易トイレがあるだけの侘しいテント場で、こんな所でテントを張る人が居るのだろうか。
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不動沢の吊橋
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濁沢キャンプ場
キャンプ場から5分程で濁沢に架かる丸木橋を渡る。手摺の無い橋は雨の時など滑りそうで渡るのがチョット恐い感じだ。橋を渡った先がブナ立て尾根コースの登山口で、此処から烏帽子小屋まで急登を登る。登山口傍の小沢から水が得られ、ブナ立て尾根コースで唯一の水場だ。
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濁沢の丸木橋
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濁沢の最下部の滝
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ブナ立て尾根登山口
ブナ立て尾根は北アルプス三大急登の一つと言われ最初から階段状の急坂が続く。道はよく整備され歩き難くは無いものの、今朝は風も無く暑さが堪える。暑さに強く無い妻は足取りが少し重い。
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最初から階段が続く登山道
数えきれぬ程ジグザグを繰り返し1時間程登ると「権太落とし」に着いた。昔権太という人物が此処から転落でもして、その名が付いたのだろうか。でも特に危険という場所でも無い。
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権太落し
登山道の要所には数字を書いた標識があり、登るにつれ「8,7,6・・・」とだんだん減って行く。標高が高くなってくると、少しは風も吹いて暑さが凌げるようなってきた。権太落としから2時間程で黄色い標柱が建つ三角点ピークに着いた。此処まででブナ立て尾根コースの三分の二を登った事になるが、まだ先は長い。
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樹林越しに濁沢源頭部が見える。
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三角点ピーク
三角点ピークからしばらく緩やかな道だったが、稜線が近づくにつれ再び急登になった。樹林越しに見えていた南沢岳から不動岳への稜線が同じ目線に見えた頃稜線に達し、程なく烏帽子小屋に到着した。
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登山道から不動岳方面
烏帽子小屋は青いトタン屋根の木造で、昔の山小屋の風情が残る。料金は一泊二食で9千5百円で、他の北アルプスの山小屋と比べると若干安い。受付を済ますと、小屋で休んでると言う妻を残して単独で烏帽子岳へ向かう。
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烏帽子小屋
小屋からも見えるピークは、「ニセ烏帽子」とも呼ばれる前烏帽子岳(2605m)で、その先に日本二百名山の一つ烏帽子岳が聳えている。槍ヶ岳を小粒にしたような、キリリとした山容だ。
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前烏帽子岳への登り
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前烏帽子岳から烏帽子岳
南沢岳へ向かう縦走路から左に曲り、鎖場やトラバースの有る岩稜をよじ登ると烏帽子岳(2628M)の山頂標識が立っていた。実際の最高地点は標識右手の岩塔で、此処へ達するには若干の勇気が要る。
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登山道分岐から烏帽子岳
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鎖場
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トラバース地点
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烏帽子岳の山頂標識
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最高地点の岩塔
山頂からは北アルプスの山々の展望が良く、眼下には高瀬ダムの湖面が意外な近さで望まれた。20分程の滞在で山頂を後にし、来た道を戻る。烏帽子小屋は設備こそ古めかしいものの、従業員の応接が良く食事もソコソコに美味くて居心地の良い宿だった。衛星テレビが明日の天気を報じていたが、「曇り後雨」の予報で一寸気懸りだ。
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山頂から南沢岳(中央の山)、不動岳(右奥の山)方面
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山頂から前烏帽子岳(左手前)、三つ岳方面(右奥)
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烏帽子小屋に戻って来た。(奥のピークが前烏帽子岳)
※烏帽子岳という名のつく山は全国各地に幾つも存在するが、その中でも北アルプスの烏帽子岳が標高・山容共に断トツの名峰といえるでしょう。